自民党所属の衆議院議員で、拉致問題担当大臣も務めた古屋圭司氏が、2023年5月16日に「LGBT理解増進法案について」との一文を自身のブログで公表された。
古屋氏は、同法案を成立させたい立場であるが、私は同氏のブログを読んでも、なぜ、LGBT理解増進法案を成立させなければいけないのか、残念ながら、理解ができなかった。
なぜか。先ず、古屋氏は「歴史的経緯」として「日本は中世より性的指向の多様な在り方については寛容であった歴史的事実がある」と書いている。また「日本国内は歴史的に性差に対し鷹揚な文化を形成してきた」とも後段で述べておられる。つまり、日本において、同性愛者に対する凄まじい差別や迫害はなく「寛容」だったと主張されているのだ。
ゲイであることを公表されている参議院議員・松浦大悟氏は安倍晋三元首相と、LGBT問題について対話されたようだが、その際、安倍元首相は「キリスト教文化圏のような激しい同性愛差別は日本になく、急進的な運動を日本で展開しても分断を生むだけじゃないか」と仰ったという。至言というべきだろう(「LGBT法整備、小手先にやれば逆に差別助長 ゲイ公表の元参議院議員、松浦大悟氏」産経新聞 2023年3月9日)。
話が少し逸れたが、歴史的に見ても、激しい差別がない日本において、なぜ、同法案を成立させる必要があるのか?
古屋氏は「G7の中でLGBTに特化した法案を持つ国はない中、日本はややもすると人権に後ろ向きと謂れのない風評被害(批判)に対して、議長国として主体的に岸田首相は『我が国政府・議会は理解増進法案を取り纏めた。日本国内は歴史的に性差に対し鷹揚な文化を形成してきた。しかし、世界の流れを捉え、日本は先駆けて今般このような法案を取り纏めた。文句あるか!』と堂々と主張してほしい」と書いている。
古屋氏のなかには「現状では(筆者註=LGBTの人々に対する)社会の理解が進んでいるとは言えない」との認識もあるのだろうが、前掲の文章を読むと、欧米からの「謂れのない風評被害」があるので、率先して、同法案を成立させようとしているかに取れてしまう。
「謂れのない風評被害」(人権に後ろ向きとの批判)があるならば、それは嘘だと堂々と主張すれば良いのであって、わざわざ「LGBT理解増進法」などを成立させてしまえば、かえって、日本はLGBTの人々に理解がないとの誤解を生んでしまうのではないか。私はそのことを心配している。