40代で枯れる人、花開く人

黒坂岳央です。

人間の人生とは前半にあまり差はなくとも、中盤以降で取り返しがつかない差になってしまう。老人医学の専門家も「40代以降は元気な人と枯れてしまう人に明確にわかれる」と主張する人もいる。個人的な感覚値からもこれはそう思う。夢をまったく諦めず、人生の本番はここからだと言わんばかりに水を得た魚のように前向きであれこれ頑張る人と、シニカルな笑いを浮かべてどこか諦めモードで生きている人にわかれる気がしている。

40代で枯れる人、花開く人の差はどこにあるのか?

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人を枯れ木に変えてしまう4つの原因

例外ケースを取り上げ始めると話ができなくなるので、あくまで一般論、全体論的な傾向として下記の原因を考えた。

まずは生物学的要因である。簡単に言えば、年齢で体力やホルモンの衰えによるものだ。誰しも加齢には抗えないから、ある程度の減退は受け入れる必要はあるだろう。そしてここで注目すべきは「体力の低下と意欲、気力の減退は密接に繋がっている」ということである。

つまりやる気が起きない、前向きになれないといった気力は体力の低下が引き起こしているという考え方だ。これは病気にかかれば、誰しも弱気になる状況証拠からも断言できる。逆を言えば、適切なトレーニングなどで体力を取り戻せば、気力も回復するということだ。つまり、体力の低下が枯れにつながる。

さらに状況変化も40代を襲う。40代になれば家庭やキャリアなど、様々責任が増える場面が出てくる。この周囲の環境の影響を受けて枯れを促進するということだ。実際、様々な医学データによって「男性が父親になり、積極的に育児に参画するほどテストステロン値は低下し、積極性やリスクテイクにネガティブに作用する」とされる。これは仕事や自分の人生より、子供や家庭を優先することで種の保存の確度を高めるという本能に作用するためだろう。

もちろん、全員がそうなるとはいえないが、たとえば会社員の男性が父親になれば脱サラして起業したり、思い切って異業種への転職などは独身時代と比べてかなりの勇気の必要性を感じるはずだ。こうした状況変化が総合的な意欲減退へとつながる可能性は否定できない。

最後に「慣れ」である。40代になれば人生のあらゆる活動に慣れてくる。仕事、家事、人間関係などで手続きが熟練することでミスが減り、同じ環境に身を置く心地よさ、コンフォートゾーンを確立する。仕事の上では慣れはポジティブに働くが、厄介なことに別の問題が起きる可能性がある。それはよほど意識しなければ、人によってはコンフォートゾーンから抜け出すことに異常な恐怖を感じるようになってしまい、「いつもの職場でいつものメンバーといつも同じ仕事と会話をして、いつも同じものを食べて同じ娯楽を楽しむ」となってしまうことだ。

心理的には安定してもビビッドな体験を経ないために、挑戦的な人も牙を削がれたように柔和になる可能性もあるのではないだろうか。

挑戦が人に牙を与える

上記では、40代以降で枯れてしまう理由を取り上げた。一方、40代以降にむしろ野性的、意欲的に人生本番だとエネルギーを爆発させる人もいる。両者の差は「挑戦する環境」にあるのではないかと思う。

たとえば大企業の看板を捨てて、起業して生計を立てるとなると牙をもがれている場合ではなくなる。仕事は信用を失うと一発アウトになるので、一挙手一投足に慎重になりかつ積極的にリスクテイクが求められる状況になる。

筆者は脱サラしてこの感覚がある。たとえばビジネス記事の執筆や、YouTube動画は毎回真剣勝負だ。手を抜いて付加価値のないものを出したり、自己満足的なものを出して視聴者を呆れさせれば次からはもう二度と見てもらえなくなる。だから必死に時間と労力をかけて作ったものでも、時間をおいて公開前に何度も見直しこれはダメだと思ったら容赦なく削除することは何度もやってきた。

自分に対して非常に厳しくなければ、厳しい評価眼に耐える作品など絶対に作れない。良い作品を作るために必死に勉強せざるを得ないし、必死に経験値を稼ぐことになる。だが、この一連のプロセスが枯れるヒマを与えない、という結果的にポジティブな状況を作ってくれると思っている。

会社員時代、外国人役員の前でプレゼンをすることがあった。もちろん、当時はできるだけ一生懸命やっていたが、今ほどのフルコミットはしていなかったと思う。なぜならあらかじめプロットを上司に見せて承認を取ったなら、そのあとの責任は上司が取るからだ。

どこか自分ごとではなく、他人事のような感覚が残っていたのかも知れない。これが続けば慣れてきて手を抜き始める瞬間が増えただろう。結果、枯れていたかも知れない。40代で枯れないためには、枯れているヒマなどない状況を自主的に作り、自分にプレッシャーをかけることも必要だと思うのだ。

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