「周囲のレベルが低い」という人がヤバい理由

「5人の法則」という有名な話がある。

自分がよく連絡を取り合う上位5人の平均年収が自分の年収とほぼ一致するという話である。これは本当にその通りで、究極的には人間は同じレベルとしか絶対に付き合いは長続きしないという真理がある。すなわち、「周りの人間ってバカばっかりでさー」みたいな人は堂々と自分のレベルの低さを宣伝しているのに等しいと言える。

これが正しい場合、自分のレベルを引き上げることで周囲の付き合うレベルも引き上げることができるということになる。持論を展開したい。

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違うレイヤーの人とは付き合えない

よく聞く話が「自分より格上の人と付き合うとレベルを引き上げてもらえる」というものだ。しかし、あくまで自分の経験値からいえば、これを実現させることはかなり難しい。不可能ではないが、人心掌握における技術などが必要になる。

なぜなら人付き合いというのは、自分が選ぶ側であると同時に、相手も選ぶ側であるためだ。自分が近づきたいと思っても、相手にも同じことを思ってもらう必要がある。レイヤーが異なるとそう簡単にマッチングは叶わない。

たとえば会社組織をみれば、この話が正しいことは状況証拠から明らかにできる。筆者は会社員をしていた時期もあるのでいくつもの会社で働いてきたのだが、平社員は平社員同士で付き合う。課長は別の部署の課長と、部長は部長。そして社長は同じ業界の社長と付き合うことがほとんどだった。社長と平社員が懇意にするケースはほぼ見られないし、あったとしても極めて例外的なものなのである。

違うレイヤーと付き合えない理由はシンプル、片方にメリットがなくそれ故に持続可能性がないのである。「人間関係にメリットを持ち出すとは冷酷な人間だ」という反論があるかもしれないが、経済的にせよ心理的にせよ人は必ず付き合う上でお互いにメリットを享受している。

課長が課長と付き合うのは、いざ別の部署を横断するようなプロジェクトが始まった時、普段からコミュニケーションを取っているとスムーズに進行させられるという信頼関係のメリットが生まれる。それだけでなく、他の部署の動向を人づてに情報収集もできるだろう。

社長が社長と付き合うことで、業界内の技術アップデートや顧客、商品の融通などビジネスメリットが生まれる。場合によってはコラボなどシナジー効果を期待できる局面もあるかもしれない。また、会話をして共感してもらえる、話をわかってもらえるというのも、強烈な心理的メリットの一つである。

以上の点を踏まえるとレイヤーが違うことで、経済的にも、心理的にもメリットの授受が難しくなる。結果、持続可能性が損なわれるという考えだ。

社長の妻の専業主婦はどうか?

ビジネスがうまくいっている男性経営者の妻は専業主婦をしているケースがある(全てではない。ちなみに筆者はお互い別のビジネスの経営者同士である)。こういう話が出ると「経営者側はよく稼いで社会貢献をしているのに、妻は家事しかしていない。家事なんて代替可能な付加価値が低い仕事だ」といった女性の立場を貶める意見を出す人がいる。しかし、自分はやはり妻も夫も同じレベルだと感じるケースが多いと思っている。

まず経営者という立場は、大企業社員や公務員に比べれば相対的に婚活やマッチングの市場で一般的にそれほど強力なニーズがある職業とはいえない。どれだけ優秀な経営者でもビジネスが永続的に安定しているなどあり得ず、自営業という立場に理解のある女性とのマッチングが前提となる。

そして専業主婦といっても、できるビジネスマンの妻は共同経営者のような立ちふるまいであるシーンは少なくない。料理でフライパンを振るいながら夫のビジネス戦略の話を聞き、「あなたの性格を考えると自分一人でやらず、必ず補佐的な人を立てた方がいいと思うわ」といったアドバイスをして、それを経営者も真剣に傾聴して意思決定に考慮する、といったイメージだ。

一見すると経営者と専業主婦の妻は全然違う属性に思えるが、実際には経営者の相手を理解したり、傾聴する姿勢を示したり、時に性格や価値観を加味した上での助言まですることになる。これは共同経営者か、アドバイザリーに近い立場を務めているといえる。これは男女共に、同じくらいのレベルではないだろうか。

周囲の人間は自分を映し出す鏡のようなものだ。愚痴不満ばかり言う人には同じく、愚痴不満ばかりいう人間が集まるし、向上意欲にあふれる人の周囲には向上意欲にあふれる人間が集まる。この原則から逃れることは難しいため、周囲の人間に不満がある人ほど自分の実力を高めるしかない、という結論にたどり着くことができるだろう。間違っても「周囲は馬鹿ばかりだ」などと吹聴するべきではないのは明らかだ。

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