薪ストーブによる煙害被害者の声から

Yaraslau Mikheyeu/iStock

本稿では、薪ストーブによる被害について、筆者に寄せられた手記のうち2つを紹介する。

薪ストーブが隣人の生活を一方的に問答無用で破壊している事実は極めて重い。

日本では消防法による設置基準以外に、薪ストーブへの規制(設置方法や地域、排煙そのものへの基準等)は一切皆無であり、薪ストーブであると申告すれば、例え廃材であっても何をどんなに燃やして煤煙悪臭を排出しても何の咎めも無く、特に事業所設置の「薪ストーブという名の焼却炉」は実際に廃棄物処理の隠れ蓑になっている事例さえ有る。

カーボンニュートラルやエコ、エシカル、SDGsだと言いながら住宅地で木材(に加え廃棄物)を燃やして暖を取ることは、多くの隣人にとっては何のメリットも無い上にデメリットばかりを押し付けるものであり、世界中、就中、先進国の住宅地では日増しに問題が顕在化し、批判と排斥の要求が強まっている。

今の季節では南半球、豪州では首都キャンベラ郊外の住宅地で約数パーセントの住民の娯楽目的での木材燃焼暖房が、酷い大気汚染を起こしている様子を筆者も日々確認している。

豪州でも、木材燃焼暖房を廃止すべく、特に喘息患者団体が主軸となり活動が活発化している事実も付け加えておこう。

エシカル=倫理的・道徳的

この言葉に照らせば、薪ストーブは多くの隣人を苦しめ健康被害まで与え、それが果たしてエシカルであるかどうかは議論を待たない。

さて、以下に手記を紹介しよう。

手記1. 6年続く悪夢

私が薪ストーブの被害にあったのは6年前。初めは何の臭いか分からず「クサイなー」と思っていました。その時も朝から悪臭がしたので、窓を開けて見ると、隣の煙突から煙が出ていました。これか?と思い外に出て確認をした所、やはり隣の薪ストーブの臭いでした。

その時に薪ストーブ被害と検索しましたが、今よりヒット件数は少なく、やっと見つけたのが役所に相談したら苦情を伝えてくれると言う書き込みでした。

すぐ役所に連絡したところ、職員は対象家屋に来訪し「通常の薪に混じって枝や葉が多く湿っている。不完全燃焼の原因となり、排煙から悪臭が発生する場合があるので、このような不適物は使用せず、適正な燃焼管理をして下さい」と注意してくれました。

それでも事態は変わる事なく、その辺で拾った細い枝、切り株、パレット、建築廃材、色々な物をその時に切ってすぐ燃やし、焚き付けに使う杉の葉が物凄い悪臭です。完全にルールは無視で、その後2、3回注意に来てもらいましたが、変わる事も無く黒煙悪臭に耐える日々です。

しまいに役所からは「もうこれ以上は何もできないので、法律相談をして下さい」と言われ注意もしてくれなくなり、そこで警察、自治会、消防、議員に相談しました。返答は全て同じ「規制がないので何もできない」でした。

仕方なく直接隣家に黒煙が出ている事、火の粉や煤が飛んで火災の危険を感じる事、悪臭がすごい事、乾燥や煙突掃除の事を伝えました。

返答は「乾燥させるのは知らなかった。まだ火の粉飛んでます?この煙突は特殊で煤は付かない」との事。苦しい言い訳を並べて言い逃れを続けています。

自己防衛しなければ悪臭を防げないので、義務化されている24時間換気を切り、吸排気口はビニールで覆い、換気扇は蓋をし、窓は隙間テープと養生テープをはりました。

それでも臭いはどこからか入ってきます。それにより窓は結露し部屋は匂いがこもり、換気したくても窓は開けられず、結露によるカビも発生し実害が出ています。ごく普通の生活が出来なくなりました。この生活が半年以上続くのです。

煤の付かない煙突なんてあり得ないし、適切に燃やしても煙は出るし臭いもします。業者の売り文句をそのままに受けとらないでほしい。苦情が無いのではなく、条例や法規制が無いので周りが我慢しているだけです。

薪ストーブの煙は大気汚染を起こし、環境や人にも悪影響と分かり、悪臭がしたらPM値を測って記録をしています。測定は必須です。WHOの基準を超える大気汚染が起きていることは確認しています。

日本は薪ストーブに一切の規制が無い為、今現在も煤煙や悪臭に悩まされている人が全国に多くいます。これ以上の被害を出さない為にも、住宅街での薪ストーブに規制や、排気浄化装置の義務化を早急にしていただきたい。

手記2. 新居が煤煙地獄に

購入した土地に半注文住宅を建てて住んでおります。住んで1年以下ですが、薪ストーブの被害を受けて転居を検討しています。土地探しの段階で薪ストーブの存在に気づかなかったのかという疑問をお持ちになるかと思いますが、まさかとは思いもよらず事前に気づくことは出来ませんでした。

子持ちの夫婦共働きで中々見に行くことが出来ない中で見つけた良いロケーションだったこと、薪ストーブのオフシーズンだったこともあり、煙害が有るとは夢にも思わずにハウスメーカーとの契約を進めてしまいました。

入居して被害に気づいた時以降、こちらでやったことは、役所の環境課への相談→当該薪ストーブ使用者への苦情の通知と自治体HPへのメールでの陳情です。

環境課の担当から使用者へ話をしてもらった際には、煙が出る事は認識しているが迷惑はお互い様といわれたそうです。

そうこうしている間にも、健康被害は拡大し、家族は空咳や痰に悩まされる様になりました。医学的に因果関係が証明できるかは分かりませんが、以前別の自治体に住んでた頃にはない症状でした。その他にも車の上や庭の備品の上に煤と思われるものも積もっています。

具体的には、被害に気付いたのは昨年の9月か10月で、自宅の2階に上がった時に異様なきな臭さが立ち込めていました。

その為、2階の24時間換気を止め、1階は弱に絞るようにしました。キッチンの換気扇を使用すると換気扇の吸気からフィルターを通していない外気を入れてしまう為、吸気の動力の結線を外して対応しています。

PM測定器を購入したのは昨年12月頃です。薪ストーブの煙について調べていた所、環境省のHPに行き当たり、煤煙にはPM2.5が含まれ健康被害を及ぼす事を知りました。機器を購入し測定してみようとなりました。

測定の結果は恐ろしいものでした。半年以上の長期間、このような煤煙の中での生活は耐えられるものではありません。

健康被害を受けて、未来ある我が子たちの可能性が閉ざされてしまうような事があってはいけないと思い、家を売却すれば多額の損失が出る事も承知済みですが、転居を検討しています。
持ち家を民泊にして賃貸に住み替えるか、私だけが持ち家に残って家族たちを賃貸に住ませるといった事も検討しています。

隣家の薪ストーブは、私たちの幸せな生活を理不尽に破壊しました。


編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2023年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。