Nature誌6月9日のNews欄に「Taurine supplement makes animals live longer-what it means for people is unclear」というタイトルの記事が出ている。これは6月8日のScience誌に公表された「Taurine deficiency as a driver of aging(タウリンが欠乏すると老化が進む)」を受けた記事だ。
タウリンは日本でも「元気一発!」というキャッチコピーで有名なドリンクに含まれている成分だが、科学的な説明が十分でなかった。サルの血液中のタウリンは、15歳のサルは5歳のサルに比べて85%減少していたという報告があったようだが、それが老化の原因なのか、老化した結果なのかはよくわかっていなかった。
今回の研究結果では、タウリンが欠乏すると老化が進むというタイトルだが、十分量のタウリンを投与したマウスでは、メスが12%、オスでも10%生存期間が延びたという。人間で例えると、寿命が80歳から90歳に延びることになる。人生100年時代が、人生110年時代になってしまう?
マウスやサルの例から、免疫力を高める、筋力を高める、骨密度を高めるなどまるでテレビのコマーシャルだ。うつや不安感を和らげるなどとなると、根拠不明な健康食品並みになってくる。マウスに投与したデータを人に換算すると、1日5グラム前後になってしまう。多くのエネルギー飲料では一本に1グラム程度含まれているので、5本飲むといいのかというと、それはそれで問題が起きないとは言い切れないので難しい。
何かひとつを変えると寿命が延びるというほど単純な話ではないので、決してエネルギードリンクを飲みすごないように!
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。