パリ国立オペラ座バレエ「ザ・ダンテ・プロジェクト」

パリ国立オペラ座バレエ「ザ・ダンテ・プロジェクト」ウェイン・マクレガー。パリ初演、初日。

オペラ座バレエに通ってはいるものの、初日はほぼ来ない(来られない)、ましてやクリエーションの初日なんてまず縁がない。今夜は、AROP(オペラ座後援会)のお友達が誘ってくれて、貴重な体験♪

ロイヤル・バレエとの共同クリエーションで、ロイヤルで21年に初演された(本当は20年の予定だったとか)。共同制作と言っても、振付はロイヤルのマクレガー、作曲も英国のトマス・アデスで、ロイヤル色が強い。なので、ロイヤルの初演を務めた、エドワード・ワトソンが完璧!なのだと思う。

とはいえ、悪くはないパリ初演。

まず、アデスの音楽。昨秋ミラノに行った時、ラ・スカラで彼の指揮で「ザ・テンペスト」観て、現代作曲家でこれだけクラシック的魅力をしっかり備えた人がいるんだなぁ、と、気に入ってた。

ロイヤル&マクレガーに頼まれて作ったこの作品の音楽も、なかなか素敵。しっかり“神曲”語ってるし、オケも作曲家本人を前に、緊張感持って頑張ってる。

マクレガーの振付けは、基本抽象だけど、そこに神曲のストーリーが見え隠れする。神曲知ってらよりわかりやすいかもしれないけど、抽象作品として観ても、それはそれでそれなり。1幕ラスト直前、男子の群舞ピルエット、音楽の迫力と合わせて見応えあり。

ライティング&舞台、1幕、モヤが凄すぎて、この席からでもジェルマンの表情演技がよく見えない~。地獄とはいえ、もう少しクリアにしてほしい。3幕、背景のヴィジュアルがきれい。色のプリズムが、マクレガー的。ただ、スクリーンが小さく&上すぎて、ダンサーを見ようと思うとヴィジュアルが視界に入ってこない。「トゥリー・オヴ・コーズ」みたいに舞台後ろ全面にこのヴィジュアルを投影したら、ダンスがヴィジュアルに負けちゃうかしら?

ダンサーは、ジェルマンは素敵だけど、表情が見えづらいのが残念。ワトソンだと、表情見えなくても体だけで求心するのでしょうね。

ギヨーム、パブロのソロもなかなか。ブルーエン、お上手。コンテンポラリーで初めて観るクララも、シュッとしてて素敵。ユゴ(・ヴィットリオ)も、こういう振付、合う。昔から、演技できてキャラクターダンサーとしてよいのに、上がってこられず残念。

パ・ド・ドゥは、どの組も、う~ん。硬すぎるし、コンタクトができてない。初演の初日だし、仕方ないかな。

ヴァランティヌ、パブロ、ギヨーム。

両脇の黒い服、左がアデス、右がマクレガー。

幕間、AROP友に連れられて、地下ロトンドでカクテル。ヴァカンスだからか、クリエーション作品の初日なのに、AROP会員もあまり来ていないようで、ガラガラ。

同じテーブル囲んだご夫婦と、感想会。音楽のよさで、意見一致(あまり大きい声じゃ言えないけど、”ここ数年のオペラ座のクレアの中では、珍しく、ちゃんと評価できますね”とも、意見一致(笑))。

カーテンコール、作曲家も振付家チームも全員集合。アデス&マクレガー&ダンサーたちに大きな拍手とブラヴォ!

ガルニエを出ると、きれいな月。明日か明後日くらいに満月かな。下弦の月になる頃に、第二配役を観られるといいな。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年5月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。