”オ・ボン・サン=プルサン”は、だーいすきビストロだった。
フランソワ親父と犬のリリーがやっていて、ポワローヴィネグレットやカスレ、ポトフやブランダードが絶品の、古きよきビストロ。ダニエル・オートゥイユとかイネス・ド・ラ・フレサンジュらショービズ界の常連も多く、フランソワがいつも、”あれはあの監督!そっちはあの女優!”って、教えてくれたけど、ショービズ界に疎すぎる私はいつも、ふんふん頷くばかりで、興味はただただ美味しさが詰まったお皿の中だった。
フランソワが引退するとお店売ったのは、もう10年近く前。誰か知らんか?と相談され、ピエール・ジャンクを紹介し、彼から話を聞いたやり手経営者ダヴィッド・ラーエーが買い、“ル・ボン・サン=プルサン”として生まれ変わった。
シェフのマチューは、食材力抜群で、シンプルかつしゃれた料理を作ってくれる。今や、値段はフランソワ時代の倍以上になったけれど、昔同様、ちゃんとしたおいしい料理を食べられてありがたい(近くにあったもう一軒の大好きビストロは、クレープリーになってしまった・・)。
チャールズ国王の戴冠式の途中で、ランチへ。ヴァカンスシーズンだからか(みんな戴冠式見てるからか)、珍しく、1テーブル空いてる。
イラクサのスープ、マグロのミキュイ、ミルフイユ。お供は、南仏産ヴェルメンティーノ。
イラクサは、春らしい苦味が心地よく、甘いピーナッツちゅいると相性よし。マグロは、塩代わりのコックの存在が小気味よく、付け合わせの緑アスパラガスやグリーンピース、行者ニンニクなど春野菜もとっても美味。ミルフイユは、凛としてクラシック。キャラメルやナッツなどで飾らぬ、昔ながらのフイタージュとクレームパティシエールで、よいね~。
バレエ&オペラ&演奏会話を楽しみながら、おいしいランチ。
フランソワも天国で、今のお店の様子を喜んでいることでしょう。
2015年5月、ル・ボン・サン=プルサン初訪問時の様子。フランソワ時代の料理写真、少しあります。
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。