公明党は自衛隊を憲法に書くことに反対はしていない

ダイヤモンドオンラインに自民・公明・維新の三者のややこしいトライアングルについて書いた。詳しくは元の記事をご覧頂きたいが、趣旨は以下のようなことだ。

「自民・維新」連立政権が得策ではない理由、“自公対立”解消のカギは?

「自民・維新」連立政権が得策ではない理由、“自公対立”解消のカギは?
「どうする家康」では、長篠の戦いで織田信長の鉄砲隊を使った革新的な作戦で大勝利した家康だが、武田勝頼もその領国も粘り強く、徳川家中にも武田の調略の手が伸びてくる様子が描かれている。これを現代に当てはめて見ていると、当時の徳川の立場は、織田軍団のように巨大な自民党と連立を組みながらも、選挙協力でギクシャクする公明党の立場...

① 野党第一党を窺うまでに成長した維新にとっては、政権を取ることが現実性をもってきており、自民との連立は意味がないから、自民が公明の代わりに維新と連立を組むというのは現実性がない。

② 自民は公明を切り捨てて、政策を右傾化させ、純粋に保守政党として生きる道もないわけではないが、その場合には、与党になったり野党に落ちたりが関の山で(野党暮らしの方が長くなる可能性大)、憲法改正など夢のまた夢になること。

③ 自民党の保守派が、公明党に政策面で譲歩しすぎという人がいるが、それは、選挙で公明党から自民党への貢献の方が、その逆より大きいからである。もし、もっと集票で公明党に保守派が協力すれば、政策面では譲歩を引き出せるだろう。たとえば、自民党の保守派の政治家の小選挙で、政策面で公明党支持者に好かれない面があったとしても、比例区で数字として公明党を押し上げるのに協力したら問題はないはずだ。

なお、自民党支持者は、公明党が自衛隊を憲法に明記することを嫌っていると誤解している人がいるが、間違いだ。その点について、ちょっと説明しておこう。

公明党・自民党 両党HPより

「自民党の保守派は、公明党との連立などしているから憲法改正ができない」とか「維新と連立を組めばいい」などの声もある。

だが、公明党は、憲法改正には積極的でないが、拒否しているわけではない。ただ、第9条の改正には慎重である。太田昭宏代表の時代、安倍晋三首相(当時)に現在の第9条に手を加えないなら受け入れる可能性があるという耳打ちがあり、安倍氏はそれまで自民党が掲げてきた過激な改正案を諦めて、「第9条の2」を加える現在の自民党案に転換したといったことが、『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)に書いてある。

しかし、その後、安保法制論議があり、山口那津男代表は憲法改正なしに集団的自衛権の発動を認めるという大胆な転換を、公明党や創価学会に受け入れてもらうのに苦労した。もし、安保法制論議より先に憲法改正の取り組んだなら、この線でまとまったかもしれない。ところが、公明党は、ある意味で、安保法制について党内や創価学会支持者をまとめるのに精力を使い果たしてしまったのである。

そこで、現在はより慎重に「内閣」の章で自衛隊について言及することで、自衛隊が合憲であることを間接的に明確にするという提案をしている。

北側一雄副代表は4月20日の衆院憲法審で、「国防規定とその担い手である自衛隊を明記し、文民統制も明確化するために、憲法の『第5章内閣』の72条、73条の首相や内閣の職務権限規定に、いまの自衛隊法7条にある『首相は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する』という規定を書き加えるといった案が良いのでないか」と言及している。

つまり、(1)公明党案に自民党がそのまま乗ること、ないし、それに近い形を受け入れること、(2)公明党にとって、自分たちが改正賛成で動いたら、国民投票で必ず勝てると確信が持てること、この2つを満たせば、公明党は改正の発議を受け入れるはずである。

(2)については、自民党内でもほとんどの議員は、国民投票で負けるかもしれない状況では、憲法改正を発議して一か八かの勝負などする気はないから、公明党が支障になっているとはいえない。

なお、次はウクライナ情勢について、『民族と国家の5000年史~文明の盛衰と戦略的思考がわかる』(扶桑社)を元に論じる予定である。