骨太の方針と成長戦略の違いって知ってる?

国会議事堂 参議院HPより

成長戦略とは何か

6月16日に成長戦略が策定されました。成長戦略とは「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」のこと。歴代政権ごとに名前が変わるものではありますが、日本の産業発展や経済成長に関する国の大方針を示す文書で、閣議決定後にはメディアでも内容が大きく報道されるので、目にした、耳にした方も多いのではないでしょうか。

成長戦略は、毎年、通常国会が終わる6月中旬に取りまとめられるものですが、この超一級の政策文書をあなたは理解していますか?

政策に関わる人なら例えば、

・成長戦略がなぜ大事なのか
・成長戦略に掲載されることと政策の実現との関連
・成長戦略策定後のその後の動き
・成長戦略が策定されるまでの流れ
・成長戦略に影響を与える人々

などといった要素については、最低限理解しておくことが必要です。

実際、企業や力のあるNPOの担当者は、自分たちが実現したい政策が成長戦略に掲載されるよう、積極的に働きかけを行っています。成長戦略に掲載されることは、その後の予算や法律案など具体的な政策を進めることを政府として意思決定することなので、重要な意味があるためです。

政策渉外のような政策を専門としていない人にとっても、成長戦略を知っておくことは重要です。成長戦略の内容からある程度今後行われるであろう政策や、新たに作られる予算が見えてきます。

まずは骨太の方針と成長戦略の違いを理解する

成長戦略を理解するために、骨太の方針との違いを理解しましょう。

ざっくりいうと、骨太の方針は財政政策と経済政策を合わせたもので、成長戦略は経済政策に特化したものといえます。

例えば、2023年の骨太の方針と成長戦略の目次を比べてみると、かなり一致するものがあります。

(骨太)三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い中間層の形成
(成長戦略)人への投資・構造的賃上げと「三位一体の労働市場改革の指針」

(骨太)グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速
(成長戦略)GX・DX等への投資

(骨太)官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進
(成長戦略)官民連携による科学技術・イノベーションの推進

(骨太)スタートアップの推進と新たな産業構造への転換、インパクト投資の促進
(成長戦略)産業構造の転換と企業の参入・退出の円滑化の必要性/スタートアップ育成5か年計画の推進/インパクトスタートアップに対する総合的な支援策

などなど…

このように骨太の方針の成長戦略に関する部分と、成長戦略は一致するところが多いのです。ただし、経済政策については成長戦略の方がより、細かく幅広に記載をしているという印象がある一方で、骨太の方針に記載が集中している政策分野(こども政策など)もあるため、どちらか片方だけ読めばいいというものではありません。

骨太の方針も成長戦略も今後の政策の方向性を知るための、一級の政策文書であることには変わりがないので、両方読み込むことが必要ではありますが「そもそも両者の違いは何?」というところで、立ち止まっている人は、今ご説明したような内容を理解してもらえればよいかと思います。

骨太の方針の方が幅広い分野をカバーしているので、格上のように見えるかと思いますが、どちらも閣議決定文書なので、政策実現という観点では基本的に優劣はないと考えてもらってよいでしょう(骨太の方針を議論する経済財政諮問会議は内閣府設置法という法律に根拠がある恒常的な組織なので、位置づけとしては格上と言われることがあります)。それぞれの文書で矛盾した記載があるわけではないので、それぞれ大事な文書として横並びで読み込んでもらえればと思います。

(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)
講演、コンサルティング、研修のご依頼などはこちら


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年6月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。