かつてスペインの中央広場には銀行支店とバル・カフェテリアが必ず存在していた
スペインで2008年の銀行員数は27万8000人だったのが、2022年までに13万人まで削減された。そして支店数となると2010年に全国で4万3000支店あったのが、2022年には1万9000支店が残存しているだけになっている。2万4000店が閉鎖されたことになる。
筆者が記憶しているのは、1980年代はどの都市でも中央広場には銀行の支店が多くあるのが目立ったのを記憶している。当時はスペインのどの都市でも中央広場で必ず見かけるのはバル・カフェテリアと銀行の支店の二つであった。
銀行に勤務することはエリートであった
嘗て銀行で勤務することはエリート社員であった。失業率の高いスペインで、銀行に勤務することは長期に亘って安定した職場だということであった。
バブル景気の真っ最中に人口僅か6万人の都市ソリア市に米国のシティーバンクが支店を構えたほどであった。当時、10万人の都市で平均して96の支店が開設されていた。バレンシア州の人口6万人のアルコイ市でも銀行の支店数が69支店あった。当時のイタリアだと同規模の都市で52支店、ドイツだと50支店あったという。
住宅バブルのあと銀行の行員と支店の削減が本格化した
ところが、バブル景気が終わった2010年頃から銀行は次第に従業員と支店の削減に向かうのであった。例えば、スペインのメインバンクである4行カイシャ、BBVA、サンタンデール、ウニカッハだけでも昨年2022年だけで1300支店を閉鎖した。(5月17日付「カピタル・マドリード」から引用)。
支店の削減は止まったわけではない。筆者が在住している3800人の町では、この5月からBBVAの支店は月曜、水曜、木曜の3日だけ営業することになった。支店の入口にATMが1台設置されているだけである。だから、その前に列が良くできるようになった。最低でも2台の設置が必要であるが、支出の削減に一生懸命の銀行は顧客へのサービス改善は二の次となっている。そして、営業している時も窓口に女性がひとりいるだけである。それに不満であれば、「他の銀行に行ってくれ」といっているようなものである。
これからさらに従業員の削減は続くことになっている。特に、デジタル銀行の成長は著しく、市中銀行と比較してデジタル銀行は60%から70%のコストが安いとされている。スペインでも特に若者は市中銀行から離れデジタル銀行との取引に向かっている。