ウクライナ戦争で結束するNATO諸国と変化しつつあるインド(屋山 太郎)

DNY59/iStock

会長・政治評論家 屋山 太郎

5月のG7サミットが終わった直後、ベテラン外交官で時事解説で売っている人間が、「これでロシア・ウクライナの戦争は秋までない。そのあと戦争をやればロシアが勝つ」と明言した。サミットが終わった後、私が感じたのは「これで開戦だな」という実感である。

両軍共に約30万人。ウクライナの懸念は軍需品の供給だった。この懸念は5月のG7サミットで解消された。有力国は渋々だったという解説もあったが、公式の場で「供給する」と言い、兵器の名も挙げた。それまで団結を言うにはほど遠い関係を続けてきたNATO諸国は、初めて目覚めたのである。ウクライナ国民も団結し、やる気に満ちている。

一方のロシアは内紛を抱え、公然と動員令もかけられず、言論統制を強化して、プーチン露大統領の私的戦争の如くである。

両軍がこうした出発点に立てば、勢いのある方が先制攻撃するチャンスだ。この攻撃に驚いてロシア軍はダム破壊という“禁じ手”を使った。そもそもロシアが言っている「放射線を使う」ということ自体、武士道ではあってはならないことである。この線上で考えれば、第2、第3のダム破壊、放射線の使用もあるかもしれない。戦後、国連は断固としてプーチン氏を逮捕して責任を追及すべきだ。

世界は東西冷戦時の様相を呈してきた。経済活動や技術交流はすっかり西側が損をしたが、中国の技術の泥棒方式は絞られつつある。先日も日本に潜り込んでいた千人計画の1人が摘発された。

中国が発展したのは、何十ヵ所にも張り巡らされた千人計画のお陰で、これがなくなれば技術力は西側より劣ることになるのは必定だ。30年前を振り返ってもらいたい。

グローバル・サウスという“中立的”地域が誕生してきたが、ベトナム、インドネシア、フィリピンという周辺国は軍事的には反中国であり、今後も中国に寄ることはないだろう。一帯一路計画などを通じて、ひたすら経済的に中国に利用された被害意識があるからだ。

中国はロシアの悪評が中国に被らぬよう用心しつつある。軍事支援は続けるだろうが、表向きロシアを助けるのは憚られる状況となっている。その象徴はインドのモディ首相の動きだろう。

安倍晋三元首相が「二つの海」構想によって、日米豪印によるインド太平洋構想を提唱して以来、インドの姿勢は変化しつつあるように見える。5月のG7サミットに出席したのは予想外だった。ヒマラヤの高地では米軍とインド軍が共同訓練をしている。

米軍頼みに足らずと独自立国を目指した欧州各国は、米軍に協力する姿勢を明らかにしている。その筆頭はドイツだろう。同国は液化ガスの50%をロシアに頼っていたが、これがゼロになった。原発の開発を決定し、炭素燃料の開発を始めるという。軍事費も2倍以上にするという。ドイツの変身は自由主義と資本主義の強さを示している。

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生まれ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、解説委員兼編集委員などを歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。著書に『安倍外交で日本は強くなる』など多数


編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。