官僚の人事異動の季節にやっておくべきこと:官僚人事の特徴と変化も

人事異動の季節が始まった

6月末に中央省庁の幹部人事が一斉に報道されました。霞が関では年功序列が通常で、後輩が先輩を差し置いて出世することはあまりないのですが、今回は経産省の事務次官(役所におけるトップ。社長みたいなものです)と序列2位の経済産業審議官の年次が逆転したことも日経などで報道され、大きな話題となりました。

中央省庁の幹部人事一覧(2023年) 経済産業省事務次官は年次逆転 - 日本経済新聞
霞が関の中央官庁の幹部人事が27日、ほぼ出そろった。経済産業省は多田明弘事務次官と平井裕秀経済産業審議官が退任し、後任にそれぞれ飯田祐二経済産業政策局長(1988年入省=以下同じ)と保坂伸資源エネルギー庁長官(87年)を充てる。発令は7月4日付。経産次官は入省年次がナンバー2の経産審より1年若く「年次逆転」となる異例の...

また、2001年に行われた中央省庁再編では、複数の省庁が一つの省庁に合併しました。この影響で複数の省庁が合併した省庁では、合併前の省庁の出身者を交代で次官につける慣例を踏襲している省庁もあります。例えば国交省は旧運輸、旧建設、旧建設省の技官が順番に事務次官に就任するのが通例です。

毎年6月末~7月にかけては官僚の幹部人事異動のシーズンとして知られています。

通常国会は、毎年1月中旬から6月中旬頃まで150日間開かれることになっており、この会期中は、政府が提出している法案の国会での審議が続いています。また、法案審議に加えて、6月までは骨太の方針や新しい資本主義実行計画の作成に向けた作業など、政府内も大きな方針を決定する時期で大忙しです。

したがって、1月~6月までの国会会期中に、人事異動をしてしまうと、特定の分野に詳しい官僚を担当から外してしまうことになり、政策を効率的に実現することができなくなってしまいます。

だから、国会が閉会し、大きな仕事がひと段落した6月末から7月が異動に最適な時期として選ばれているのです。人事は幹部から決まり、そして6月末から9月までに年次が若い職員も含めて、それ以降の人事が確定します。もちろん、通常国会は延長することもあります。その場合は官僚の異動の時期も遅れることになります。

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なぜ、官僚は頻繁に人事異動があるのか

民間企業の中には、広報、営業、法務、人事などと部署ごとにある程度専門分野が決まっていて、それに応じた配置を行っているところも一定程度あります。また、一度配属されたら、長い間同じ部署で働くことになるケースも多いのではないでしょうか。

中央省庁の場合は、それまでの担当と全く分野の異なる畑違いの部署に配属になることがよくあります。子育て政策の部署で政策立案を担当していた職員が、異動で人事や広報を担当することもありますし、社会保障を担当する厚生労働省ではたらいていたのに、外交を担当する外務省や住宅政策を担当する国土交通省で働くこともあります。

また長く一つの部署で働く人もいる民間企業とちがい、長くても3年で異動することが通常です。短くて1年、長くて3年。同じポストにいるのは、概ね2年程度です。2年間で課の職員がすべて入れ替わるとすると、一回の異動では、職員の半分が異動する計算になります。

幹部になるまでに、なるべく多くの経験をさせようという配慮もあるのでしょう。近年では、スペシャリストを養成しようとか、本人の希望を重視して人事配置をしようという試みも徐々に増えてきていますが、一般的には頻繁に人事異動があると言ってよいと思います。

政策提案に関わるあなたにとっては、比較的短期間で異動があるという中央省庁の人事の特徴が特に影響がありそうです。もしあなたが現職の担当者と進めるべき政策のビジョンを共有していたとしても、次の担当者が同じようにあなたに共感してくれるとは限りません。異動があったとしても政策を停滞させないためには、中央省庁の人事を理解しておくことが重要なのです。

また、人事異動したばかりの時期は、新任者よりもむしろあなたの方が政策に詳しいことも多いはずです。異動の時期に有意義なコミュニケーションを担当者と取ることで、より良い政策づくりのきっかけを作ることができます。人事異動時の対応如何で担当者にとってもあなたにとってもいい結果を導くことが可能になるのです。

(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。