円安貧乏? 日本人観光客の少なさに失望するタイ政府

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大好きな日本へリベンジ旅行をするタイ人観光客

大手旅行エージェントであるトラベロカによれば、タイ人顧客の間で人気のある旅行先は、日本、シンガポール、香港、台湾、韓国であるが、中でも日本は最も人気があるとのこと。
また、TTAA(タイトラベルエージェント・アソシエーション)によると、今年、日本を訪れるタイ人観光客は100万人に達すると予測。

これは1か月ほど前、タイの経済新聞、グルンテープ・トゥーラギットに載っていた記事であるが、パンデミックが終わり、今年は100万人ものタイ人観光客がリベンジ旅行で日本にやって来るそうだ。

ちなみに、筆者は既にタイに12年間住んでいるが、タイ人は最初とにかく富士山と北海道の雪に憧れる。しかし、最初はそういうところにパッケージ旅行で来ていても、もっと日本に興味を持つようになり、次第に隠れた観光名所をプライベートで回るリピーターに変わっていく。

従って、今回のリベンジ旅行も大半がリピーター需要ではないかと筆者は考えている。

ところで、今年日本にやってくるタイ人旅行者の数が100万人だとすれば、あっという間に2019年の132万人に近いところまで回復しつつあることになる。

しかも、1バーツの価値が4円にもなった強いタイバーツを持ってやってくるわけだから、日本に落としてくれるお金はもっと増えて、早くも2019年の1,734億円を超えてくるかもしれない。

たった30万人しか来なかった日本人観光客

 

一方、日本からタイにやってきた観光客は、タイ政府の積極的なキャンペーン活動にもかかわらず、2019年の年間170万人から程遠い結果となり、上半期が終わった時点での日本人観光客はわずか30万人ほどと期待外れの数字であった。

タイが入国規制を全廃して間もない昨年の11月、拙稿「激増する外国人観光客:日本とタイでの大きな違いとは?」で、「タイに来る外国人観光客の数は急増したが、あまりお金を落とさない国の人ばかりで、ちょっと期待外れになっている」と書いた。

しかし、今は欧米人もたくさん入ってくるようになり、タイの観光産業は確実に回復し始めているのであるが、TAT(タイ政府観光局)によれば、そんな中でも日本人観光客の少なさには期待外れでがっかりしているということだ。

理由はやはり「円安貧乏」?

TATはこの原因を円安タイバーツ高、2019年の頃に比べて日タイ間の航空便が3~4割しか飛んでおらず、しかも航空運賃がまだ高いこと、そして日本政府が国内の観光産業を支援するために旅行支援として補助金を出していることを挙げている。

しかし、筆者は来月のお盆の帰省のために数日前、スワナプーム空港と関空の往復便をピーチ航空で取ったところ、わずか3万円強であった。少なくともLCCの航空運賃の場合はもう高くないと思うし、1週間ほど前に日本からバンコクに戻ってきた便も、LCCなのに約3分の1が空席だったので、むしろ乗客がいないから航空各社は増便できないのかもしれない。

そして、日本政府の旅行支援などは金額的にたかが知れているので、これがタイにいく観光客を減らしているということはないと思う。

従って、日本人の海外旅行を妨げている諸悪の根源は、やはり今の「円安貧乏」だと思うのである。

円高転換までじっと我慢

ところで、筆者はつい先週まで日本にいたのだが、日本もインフレで商品の値上げが激しいとはいうものの、それでもスーパーなどで売っている食品や衣料品などは日本の方がタイより安く、今の日本は本当におかしなことになっていると感じた。

そのうち日銀が利上げを始めればこの円安も是正されるだろうとは思っているが、それまで海外旅行好きの日本人は、「円安貧乏」を恨みながら日本国内でじっと我慢の時なのかもしれない。