スペイン亡命中のベネズエラ諜報局元局長がアメリカに送還された裏事情

スペイン政府にとって不都合な裏事情

ベネズエラの元軍人でスペインに亡命していたウーゴ(通称エル・ポーリョ)・カルバハル将軍が7月23日に予定されているスペインの総選挙を前に米国に送還された。この送還の背後にはスペイン政権にとって隠された不利な裏事情がある。

エル・ポーリョ・カルバハル氏はベネズエラのチャベス前大統領とマドゥロ現大統領の政権時に国軍諜報局(DGCIM)の局長を務めていた人物だ。フアン・グアイドー氏が暫定大統領としてマドゥロ大統領の打倒への動きを見せた時に彼はグアイドー氏の味方に付いた人物だ。

マドゥロ政権から裏切り者として拘束されるのを避けて身を隠し、スペインの諜報機関スペイン中央情報局(CNI)が背後から動いて、彼の息子がスペインに在住しているという理由でスペインに亡命した。

ところが、スペインの治安警察は2019年4月に彼を逮捕した。逮捕した理由は米国のDEA(麻薬取締局)が指名手配しているというのが理由だった。DEAが彼を指名手配した理由はベネズエラの国家麻薬組織カルテル・デ・ロス・ソレスが以前米国に6.5キロのコカインを密輸した際に彼もそれに参画していたというのが理由だ。しかし、それを裏付ける確たる証拠はない。にも拘らず、スペイン治安警察は彼を逮捕したのであった。

スペインでテロと麻薬犯罪を専門とする法廷アウディエンシア・ナシオナルは米国からの彼の身柄の送還の要請は政治的動機が強いとしてその要請を当初却下した。ところが、検察はその判決を不服として上訴。その結果、再審で米国への送還が言い渡された。

その判決を不服として彼は行方をくらました。スペインから一歩も出ることなく、3か月ごとに住む場所を変えていたのである。しかし、遂に彼の居場所が見つかり逮捕された。

再度法廷に上がった彼はスペインのサパテロ元首相がマドゥロ大統領から賄賂を受け取っていることやポピュリズム政党ポデーモスが誕生したのはチャベス元大統領から資金が提供によるものだということを明らかにしたのである。

この情報を更に詳しく提供する代わりに、米国への送還を見送るという交換条件を出した。チャベス政権時にポデーモスには日本円にして9億円余りが提供された。その後マドゥロ大統領も彼に政治資金を提供していた。ヨーロッパにボリバル革命を実現させるべくポデーモスに資金を提供したというのである。

サパテロ元首相は現在もマドゥロ大統領の代理人のような形で国際的に動いている。それに対して彼の所属政党内でさえも彼に味方する者は誰もいない。またイタリアで政党五つ星運動が誕生した時もマドゥロ氏が資金を提供した。

サンチェス政権は総選挙で敗北する前にエル・ポーリョの送還を邪魔しなかった

この交換条件はスペインの現政権社会労働党には都合の良い内容ではない。なぜなら、サパテロ元首相は社会労働党出身であり、またポデーモスについても現在のスペイン政府はポデーモスとの連立政権である。だからこの二つの点を暴かれるとサンチェス首相の政府には都合が良くないのである。

ということから、彼の情報提供をスペインの法廷は暗黙裡に拒否した。そこで彼の弁護団はヨーロッパ人権裁判所にスペインで実施された裁判は人権を損害するものであるとして訴えた。

しかし、今月ヨーロッパ人権裁判所はその不服を却下した。そこでスペインのアウディエンシア・ナシオナルは彼を米国に送還するための指令を早速出した。そして、彼の弁護団がそれに不服申し立てるのを待たずに彼は米国に送還されたのである。

この時、その送還を一時的にでも阻止できるのがスペイン政府であった。ところが、スペイン政府は裁判所の独立を尊重するとして沈黙を守った。その背後には今月23日の総選挙で社会労働党とポデーモスの連立政権は敗北するのが確実だからである。

野党の保守党が政権に復帰すると、この二つの案件の調査を開始する可能性があり、そうなると敗北者となるサンチェス首相にとっても都合が悪くなるからである。だから、エル・ポーリョ・カルバハル氏が選挙に敗北する前にスペインから去ってくれるのが都合が良いというわけである。だから、サンチェス政権も彼の米国への送還に何もしなかったのである。(7月19日の「OKディアリオ」から引用)。