心の中を読む技術?

7月24日のNature Newsに「Mind-reading machines are coming-how can we keep them in check?」というタイトルの記事が掲載されていた。

いつどこで読んだのか忘れたが、言葉を発することができない病気、たとえば、脳卒中やALSの患者さんの脳の刺激を捉えて、人工知能が言葉に変える技術も開発されているので、今では、その人の考えていることを読み取ることも難しくないのだろう。

スパイを拷問しなくとも情報を抜き取ることができるはSFの世界だと思っていたが、それが現実になってきていると言うのだ。当然ながら、プライバシーの問題が生ずるので、7月13日にUNESCOで、このような技術開発に対する社会的・倫理的な課題が話し合われたそうだ。

Neurotechnologyを何と訳していいのかわからないのでネットで調べたところニューロ技術と呼んでいるようだ(インターネットの広告と紛らわしく、この訳語でいいのかと悩んでしまった)。

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ニューロ技術はもはや科学的な課題というよりも、法的・社会的・倫理的の課題を議論する段階に来ている。人工知能もどのように開発するのかではなく、どう利用していくのかが議論の的になっているが同じようなものだ。

しかし、頭で考えていることを読み解くことができるのは、医学的応用が広がるとしても、恐ろしいことだ。よからぬことを考えている時に、その考えを読み取られるなど、凡人の私には想像さえしたくない。

しかし、このニューロ技術に関する特許は2020年には2015年の倍になっているそうだ。今日、学会で「AIホスピタルの」講演後に「病院は経営や働き方改革でアップアップしている。AIやデジタルの導入のためのコストはどうなるのでしょうか?」との質問があった。

超高齢社会となり、医療の需要はこれから10年前後にピークを迎えるものと推測される。情報量は加速度的に増え、説明や書類で医療機関は耐えきれなくなるリスクが高い。それに「働き方改革」という医療従事者の勤務制限を強いられると大変だ。医療従事者の奉仕的精神で医療現場が成り立っていることを理解しない施策が打たれているが、医療現場ではきれいごとでは済まない現実が目前に迫っている。

AIホスピタル化やニューロ技術など、国が兆円単位で投資すべきだと思う。医療分野での国の投資がなければ、この国のAI化・デジタル化は絶対に進まない。数兆円の投資が、数年後には回収でき、日本は医療立国の道を歩むことができる。

高齢化社会の直面している医療の課題を解決することが、国の経済的発展にもつながると思うが、永田町も霞が関も目先のことしか考えられなくなっている。医療分野での異次元の投資に期待したい。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年7月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。