アメリカでは、映画「オッペンハイマー」と同日公開された映画「バービー」に絡めて「バーベンハイマー」という日本への原爆投下を賞賛する投稿がSNSで多数見られましたが、映画「バービー」の公式ツイッターアカウントがそれらのツイートに「忘れられない夏になりそうだ」などと返信し、批判の声が広がっています。
映画バービー米公式が原爆投下に無配慮反応 国内配給元は「遺憾」https://t.co/6xmaGmnUNl
バービーと原爆投下を結び付けた画像も多くSNSに投稿されている。
— 産経ニュース (@Sankei_news) July 31, 2023
映画「オッペンハイマー」は「原爆の父」として知られる、原子爆弾の開発に携わった物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描いた作品です。
日本の配給元のワーナーブラザースジャパン合同会社は「極めて遺憾」と謝罪する声明を出しました。
「バービー」日本の配給元謝罪 米公式SNSの原爆画像反応(日経)https://t.co/wEHkQB5g2q
①日本の配給元のワーナーブラザースジャパン合同会社は「極めて遺憾」と謝罪する声明を出した。
②ワーナー米本社に「しかるべき対応」を求めるという。
――どんな「対応」なのか。米本社は本当に動くのか。 pic.twitter.com/3huFdi9hrU— 滝田洋一(日本経済新聞) (@yoichitakita) July 31, 2023
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一般のSNSユーザーだけでなくあろうことか映画バービー公式まで原爆ネタに乗っかってしまい炎上してしまいました。
一般人はともかく映画の公式が乗っかったのはいただけないという意見も。
アメリカでは原爆開発者の生涯を描いた『オッペンハイマー』と『バービー』の同時公開に合わせて「バーベンハイマー」がネットミームに。日本人を屁とも思ってない一般人はともかく、日本公開予定の映画の公式が乗っかるのは全然許せないな。ワーナーてめえだよ。@warnerbros #NoBarbenheimer https://t.co/lVku6i0wb3
— 藤悟 (@fujisator) July 30, 2023
アメリカは公式の場で9・11やナチスを笑いのネタにすることはないのですが・・・。
◻️原爆の合成画像にハート絵文字 映画「バービー」公式SNSに批判
<公式が原爆ミームに便乗、米国はオフィシャルで9・11やナチスをネタにすることは絶対にない。でも原爆のことはネタにできるんだな。やっぱり根底にアジア軽視があるように思う。悲しすぎて言葉にならない>https://t.co/M3oCXhxsSf— フィフィ (@FIFI_Egypt) August 1, 2023
日本人からすると心無い行為ですが、投稿している人たちや公式の中の人たちはあまり深くは考えてはいないのかもしれません。
同日上映された映画をかけ合わせ「バーベンハイマー」というミームが米国で流行。劇中ではオ博士が原爆の加害に言及しているらしいが、キノコ雲をポップにあしらうコラージュが作成され、「バービー」公式も同調。米国人にとり東洋人の命はそんなに軽いのか。#NoBarbenheimerhttps://t.co/iAC0kw7TUI
— 一水会 (@issuikai_jp) July 31, 2023
アメリカではこれらは『政治的な正しさ』の象徴として支持されてバズっているという悲しくも鋭い指摘もあります。
バービーとオッペンハイマーと原爆と表現の自由について、そして『キャプテン・マーベル』脚本がアメリカに対して取った距離について書きました
それは『不謹慎な悪ふざけ』ではなく『アメリカSNSの正義』であるという話、原爆の父の肩に乗るフェミニズムと表現の自由についてhttps://t.co/nOfVAXLqIz— CDB@初書籍発売中! (@C4Dbeginner) July 31, 2023
もしかしたら、アメリカの多くの人たちは、この映画に対して日本人とちがう感想を持つのかもしれません。
『オッペンハイマー』で最も恐ろしいのは、アメリカはナチスに対抗して原爆を開発するが、ナチスが滅んだのに、今度はソ連に対抗するために日本に落とそうと会議する場面。役人たちが「どこに落とそうか」「京都はダメだ」などと話し合う。そこに住む人々のことなど微塵も想像せずに。
— 町山智浩 (@TomoMachi) July 26, 2023
もちろん、アメリカ人の中にも原爆投下への疑問を持つ人もいます。教育に地域差があるようです。
原爆が話題になってて、アメリカ人は皆投下は正しいことだったと思ってる、という風潮なので夫の場合を書きます。
夫はアメリカ公立の歴史の授業で、2つの原爆は完全に不必要なものだった、と習ったそう。すでにほぼ負けている国に1つならず2つも原爆を落としたのはやってはいけないことだったと。— Yuki (@CADesignLab) July 31, 2023
ニューヨークタイムズも「被爆国の日本ではバーベンハイマーは笑い事でない」と指摘しています。
NYT「被爆国の日本ではバーベンハイマーは笑い事でない」
論理的に言えば、「原爆投下の他に方法がなかった」とする米国による原爆投下の正当性の主張においても、論証過程で原爆被災者は明確な犠牲者であり、この存在に鞭打つ行為は米国でも笑い事ではないはずですhttps://t.co/AEj5KHb45I
— 藤原かずえ (@kazue_fgeewara) August 1, 2023
話題のホラー映画『ヴァチカンのエクソシスト』のプロデューサー、ジェフ・カッツ氏も「アメリカの若者は歴史認識がなく、他人の感情に対して失礼」と日本語で遺憾の意を表明。
日本人の中にも思考停止があったのかもしれません。アメリカだけでなく、日本のマスコミも原爆投下を正面から取り上げることはありませんでした。
アメリカが広島と長崎に原爆を落としたことは明らかに国際法違反の戦争犯罪なのに、朝日を初めとする日本のマスコミはその戦争責任を問わないで「原爆の悲惨」だけを報道してきた。…
— 池田信夫 (@ikedanob) May 21, 2023
「バーベンハイマー騒動」は、単なる炎上劇ではなく、とても深くて暗いものに光を当てることとなりました。