ビジョンを共有する

ITmedia ビジネスオンラインに、嘗て『部下がどんどん「指示待ち人間」に──絶対にしてはいけないマネジメント法:マネジャーのお悩み相談室』と題された記事がありました。筆者に拠れば、『メンバーが自発的に動くためには(中略)指示は具体的すぎても抽象的すぎてもダメで、「程よい抽象度」で設定することがポイント』だということです。

此の私のブログの先月14日、『リーダーの醍醐味』という中で次のように述べました――人集め・組織作りにはリーダーが、「この集団はここの領域でこういう仕事をして、このように社会に貢献して進んで行くんだ」という明確なビジョン、更には組織としての使命を明示して行くことが極めて重要になります。

組織というのは、ある種の同志的結合とか一定の倫理的価値観といった共通意識を持っている必要があります。そこが十分伴わなければ、組織としての体を成さなくなります。ばらばらの個人が自発的に動いたとしても、組織として目的遂行に向かい自発的に動くということにはならないのです。

上司と部下がベクトルを共有し同じ方向に向かって動く一体感ある組織というのは、活気があって成長スピードも速いものです。会社における一体感とは、コーポレートビジョンをきちっと共有しながら、それが例えば各部の戦略的な対応という形になり、それを成し遂げるメンバーが同志になって行くところから生まれてきます。そのため同志的結合のある組織が最も強くなるのです。

「偉大とは人々に方向を与えることだ」とフリードリヒ・ニーチェも言うように、上司は部下に対し常に方向を与えねばなりません。様々な事柄を考え抜き、より良い状況を作り出して行く方向の選択を私利私欲を離れたところで為して行くのです。そして上司自身が自分の言葉で、その方向を与える理由をロジカルに分かり易く部下に説明できなければ、組織というのは自発的に動いて行くものではないのでしょう。

メンバー全員の納得を得て共通意識を導くことは、リーダーの大変重要な役割です。会社であれば、コーポレートミッションを全社員間に定着させ、それに基づいたコーポレートビジョンを明示して、彼等彼女等のベクトルが同じ方向を向くようする中で同志的結合が生まれてき、皆一丸となって頑張ろうという形が出来上がって行くのです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2023年8月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。