協会けんぽはマイナンバー誕生の経緯を忘れたの?

全国健康保険協会(協会けんぽ)でマイナンバーと医療保険情報の紐づけができていない、とメディアに取り上げられている。その数は約40万人と協会けんぽ加入者の約1%にあたる。

そもそも、マイナンバーは民主党政権誕生のきっかけとなった2007年の「失われた年金問題」が発端である。それまで年金制度ごとに異なる番号で管理していた年金記録を基礎年金番号に統合した際に、統合されないで宙に浮いた記録が5,095万件もあるとわかった。2013年までに2961万件は統合されたが、残り2134万件は解決できなかった。毎月保険料を払ってきたのに年金額に反映されないから「失われた」と呼ばれた。

年金問題で学んだのは、氏名・住所・生年月日・性別の四情報では、記録の完全な統合はできないということである。そこで、一人ひとりに唯一無二の番号、つまりマイナンバーを与えようということになった。そして、民主党政権の提案を丸呑みして、自民党政権で2015年にマイナンバー制度がスタートしたのである。

協会けんぽが直面しているのは、加入者のマイナンバーがわからないので、必死に四情報で紐づけを進めているが40万人分残っているという問題だ。四情報では完全な紐づけできないのだから、解決するには加入者がマイナンバーを提供するしかない。

個人情報保護法ではマイナンバーは保護すべき個人識別符号の一種として扱われている。マイナンバーを秘密扱いする、この制度自体に問題があるのかもしれない。

先進国水準のデジタル行政・生活を達成するために、マイナンバーを積極的に、かつ、正しく利用する社会に変革していく必要がある。

情報通信政策フォーラム(ICPF)ではこの問題について、8月24日にセミナーを開催する。ご参加ください。