BYDと恒大集団に見る光と影

岸田首相がアメリカのキャンプデービッドで日米韓の会談を行っていますが、その中身よりも木原誠二副官房長官が岸田氏に同行しているという報道が目立ちます。これは岸田氏の気遣いで最後のご奉公、卒業旅行なのだと理解しています。今なぜわざわざワシントン郊外で会談という気もしますが、岸田氏が帰国後直ちに福島を訪れることから原発処理水の海洋放出の最終的な確認をすることもあるのでしょう。またアメリカの日韓関係への気遣いも感じます。夏休み時期だからできる会談のような気がします。

では今週のつぶやきをお送りします。

どう読む、秋の金融市場と株式市場

日経平均がダブルトップだとか三尊天井をつけたとここにきて指摘する声が増えており、チャート上の重要なポイントを次々と下にブレイクしています。もう一つの見方は31800円程度と33700円程度のレンジバンドから今週、下抜けしました。円相場も145円と近年の最安値をつける中で市場が盛り上がらないということは厳しい先行きと見た方がよいのでしょう。一方、北米も散々でこちらは指標以上に個別銘柄の動きが極めて悪くなっています。

個人的には手持ちの2/3はこの1年以上かけて売ってきており、とりあえずポートフォリオ上ではこれ以上減らすこともないかな、というところにあります。その間、買いは過去2年ぐらい極めて絞ってきたのは株価が踊り過ぎていたことに対する反動がどれぐらい来るのか読めなかったこととポストコロナの最終局面の絵図の判断が出来なかったのです。「手が伸びなかった」、それが正しい表現かもしれません。

現在の地合いは軟弱地盤。よって悪いニュースがでれば即座に反応します。8月25日に予定されるジャクソンホールでのパウエル議長の発言が着目されますが、インフレ率は今後はさほど下がらず、現在の水準前後でこびりつくことへの警戒感を示す気がします。先週お伝えしたように原油価格が高くなっていることもあり、日米ともにインフレ率は上に振れやすい状況です。当地の飲食店の価格を見る限り材料費ではなく、人件費の上昇でレストランのハンバーガーはチップ税金込みで3000円近くになり、手が伸びなくなってきています。一方の日本ではまだ食品の値上げが続きます。消費の観点からも秋の相場はやはり構えた方がよいかもしれません。

BYDと恒大集団に見る光と影

1-6月の自動車輸出台数は中国が日本を上回ったというニュースは関係者には衝撃だったのですが、なぜか日本ではあまり報道されませんでした。スポンサーである自動車企業に対する配慮なのでしょうか?中国から海外輸出を伸ばしているのはBYDとテスラで中国国内のEVを中心とした自動車産業は各社成長しながらも血まみれのレッドオーシャン状態にあり、テスラが再三中国で値下げしているのは雑魚潰しなのでしょう。BYDのPHVとEVだけの販売台数は22年は世界一、時価総額はトヨタを25年頃には抜く可能性があります。日本メーカーの中国での内燃機関の車販売台数は目も当てられない状態です。

一方、中国不動産の代名詞、恒大集団が17日、アメリカで破産法15条を申請しました。日本では「すわ、大事だ」との記事が並び、産経は今更「終わりの始まり」などと報じていますが、ちょっと違うと思います。これは外債の整理をする手続き上の問題で中国政府は恒大集団本体を破産したとみなしていないと思います。市場もそのあたりはよくわかっていて金曜日の上海市場も香港市場もほぼスルー、香港市場の碧桂園の株価も安値引けですがパニック売りではありません。

中国経済の行方が今一つつかめないのはポテンシャルがある業種はそれなりに粘っている一方、不動産が火を噴いており、今後、中央政府が地方政府の不動産開発の下地であった融資平台をどう守るかに視点が移ります。日本のバブル崩壊時と非常に似ていますが、その時も日本の全ての企業がダメになったわけではありません。産業の転換点の中に於いて中国企業には侮れない分野も大いにあるわけでそのあたりを区別して見ないと一緒くたに「中国もうだめ」理論は危険です。こんな時期だからこそ丁寧に見るほうが良いと思います。

ASKA/iStock

中小企業だって手持ち現金は必要

日経の「守りの中小、膨らむ現預金 資産の2割強に大企業比3倍、成長投資に回りにくく」という記事は違和感ありでした。中小企業の総資産に対する手持ち現金比率が大手に比べて増えているということを指摘しているのですが、企業の資産規模と手持ち現金の比率をそのまま比べてもほとんど無意味なのは企業経営者ならすぐに気がつきます。そして銀行は前例のある事業にしか金を貸さず、新規事業はリスクが大きいと融資をなかなかしません。

以前、お伝えしたようにカナダではラーメン屋一軒開けるのに億近い資金が必要なこともあります。が、カナダの銀行ですら貸さないのです。飲食はリスクが大きいと。ちなみに会計事務所も飲食店の新規のお客さんは前払いという話すらあります。事業に対しての融資がもらえなければ自己資金や知り合いに頼んで勝負するしかないのです。だから貯める、そして投資をするわけです。私も自社の年間売り上げと同じぐらいの新規投資を続けてきていますが全部自己資金です。銀行がすり寄ってきても「いりません」と断るのは彼らは大企業で上から目線、我々は零細で押し込まれるギャップ感が嫌なのです。

くだんの日経の記事は中小企業の総資産に対する現金比率が21%と報じています。総資産10億円で2億円です。業種と経営姿勢にもよりますが、私のように不動産事業を手持ち資金で廻すには論外に足りません。基本総資産に対して100-200%ぐらいあってポンと買って建物完成まで我慢して現金回収が始まったらまた買う、の繰り返しをパイの生地のように積み重ねるとそのうち総資産に対する現金比率が100%が70%になり、50%に下がってくるというのが企業の成長というものです。零細や中小企業がどこまで成長したいか次第ですが、既存資産の陳腐化もあるわけで手元現金は厚めでいつでも出動可能にしたいところです。

後記
夏休み時期は私は昔から繁忙期なのですが、今年は過去5週間の週末のうち4週間でイベントに参加していて、今日、金曜日から最後の大物、バンクーバー最大のアニメコンベンションでの即売会に3日間出ます。これを書き終えたらすぐに参戦、私の頭の中が「Love Live」状態になります。さて、私は雄たけびを上げることができるか、頑張ってまいりまーす!

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月19日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。