なぜ大麻を求めるのか?

日本大学アメフト部の大麻問題は捕まった学生が他の仲間の関与をほのめかせたことで数名になる可能性があり、再度大学執行部への厳しい視線が注がれそうです。この問題は8月9日に本件について取り上げたブログの中で(海外では)「学生が法を犯せば学校が警察にお願いするという単純な流れです。お情けはありません」と述べさせていただきました。

日本大学の大学旗 日本大学HPより

つまり、一定の年齢の学生は法のルールに基づく自己行動の判断ができる大人という発想であるわけです。ところが同大学の副学長がスポーツ部を担当していたこともあり、問題を穏便に済ませようとする意識が働き、むしろ自身のキャリアの背景から法治国家に対峙し隠蔽しようとした点において最も厳しい処置で臨むべきでしょう。

ところで日本の大麻検挙者数は昭和の時代から増減はあるものの微増トレンドでした。これが2013年を境に急増します。そしてコロナ禍の2020年からは3年連続で検挙者数5000件を超えます。1日に15人ずつ捕まっている計算です。一方、麻薬取締法違反者は微増ではあるものの昭和の時代から大きく変わらず、また、検挙者数も700人/年程度です。むしろ、注目すべきは覚せい剤使用で捕まった人が2014年の11148件から減少傾向を辿り、22年で6289件とほぼ半減しています。

グラフ化するとよくわかるのですが覚せい剤+大麻の検挙者数の総数は年間13000人程度でほぼ一定ですが、その割合が大きく変わっているというのが正解です。よって報道は大麻だけに焦点を合わせた形になっていますが、ここはきちんと報じるべきでしょう。

では大麻が合法化されているカナダはどうなっているのでしょうか?確実に言えることは2つ。1つは大麻販売店はコンビニと同じぐらいどこでもあり、バンクーバー目抜き通りから住宅街そばの商店までくまなく販売網は完備されています。もう一つは大麻の製造会社は大手数社が上場していますが、株価はピークの1/100ぐらいまで下落し、回復の見込みはなく、各社資産の切り売り状態で四苦八苦であります。

フォーブスによると合法化後も消費量は安定し、若年層の大麻使用率は合法化前の水準とあります。入手経路は販売店が61%、違法ウェブサイトが2%で違法売人からの入手が1%などとなっており、カナダ政府が当初目指したアングラマネーの根絶については成功しています。また、大麻もタバコと同じで一般人にとって吸う癖がなければいくら合法化されても手を出さないこと、また、取り締まりも厳しく、大麻吸引はアルコールと同じ扱いとなり、クルマの運転が出来ないなど厳しいルールが設定されています。つまり解禁してもすそ野は広がらなかったということです。

ではもう一つの麻薬であるオピオイドはどうでしょうか?こちらはアメリカでの問題が深刻です。オピオイドとはオキシコドンやフェンタニルなどを含む医療用の麻薬であり、これらを不正入手し、overdose、つまり過剰摂取することで2017年には170万人が心身に異常をきたし、47000人が死亡しています。なぜ、オピオイドかといえば麻薬の中でも2種類ある気分の「アッパー系」と「ダウン系」のうち、オピオイドはダウン系であり、気持ちを落ち着かせる効果があるとされるわけです。

この過剰摂取の背景は社会事情にあることはほぼ確実でストレスフルな社会でメンタルを維持できないわけです。私どもが現在営業免許申請をしている老人のグループホームの運営に関しても州政府からオピオイドやタバコの管理と過剰摂取の対策についての処遇策提示が必須の条件となっています。日本ではそこまでは無いと思います。

医療用麻薬の服用は当たり前で私の知り合いも骨盤に問題があり激痛で歩きにくい状態になり医者にモルヒネをくれ、もっと強い薬をくれといつも要求しています。こう見ると若者のし好、中年層のストレス制御、高齢者の痛み止めなど麻薬はごく普通にありふれているとも言えるのです。

カナダでは医学的にタバコ吸うなら大麻がまだまし、とされます。なぜかといえばタバコは肺がんなど身体的に負担が大きいものの大麻はそれが比較論として軽微であるからとされます。ある意味、欧米の論理思考に基づく説得力であり、近々ドイツも解禁されるでしょうし、アメリカも州ベースでは多くが合法化しており、連邦ベースで禁じているのは形骸化とも言えます。

ところがアジアでは非常に厳しく取り締まられます。個人的に思う理由の一つは中国のアヘン戦争が歴史の汚点としてまだ鮮明に記憶にあることが上げられます。アヘン問題は1840年の英国と中国の問題だけだと思っている人が多いと思いますが、実は戦前、日本は満州で大量のアヘンを栽培し、それを売りつけることで日本軍の莫大な機密費を作ったとされ、その一人が岸信介氏だったことは公然の秘密であります。

欧米とはそのあたりの発想の違いが背景にあるのでしょう。結局、最大の問題は生きづらい社会が形成されていることではないかと思います。極度のプレッシャーなどに耐えきれない人たちが手を伸ばす点において「大麻の禁止」は分かるけれどではその対策に何ができるのか、代替案を出さなければ問題の本質解決にはつながらないと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年8月27日の記事より転載させていただきました。