20代はコロナワクチンを打つべきか?コロナ死亡者数とワクチン接種後死亡者数との比較

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全年齢層を対象にしたXBB対応ワクチンの接種開始が迫っている。日本医師会の釜萢常任理事は「全ての人に積極的に接種を呼びかける必要はない」との認識を示す一方、「全年齢層において、有効性は直近のエビデンスでもしっかり積み上がっている」と、矛盾する発言を行っている。

コロナによる致死率やワクチンの有効率は、人種差や医療体制が反映されることから、日本人を対象にした研究によるエビデンスが求められる。しかし、日本では、ワクチンの接種回数別の有効率や死亡リスクは、昨年の秋から公開されていない。

そこで、現在でも入手可能な、コロナによる死亡者数とワクチン接種後の死亡数を比較することで、ワクチン接種の是非について論じることとした。

コロナによる死亡者数は、厚労省が発表する人口動態調査に報告された数字を用いた。死亡診断書に基づく数字であることから最も信用できると思われる。ワクチン接種後の死亡者数は、厚生科学審議会・予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に提出された資料に記載された数字である。

ワクチン接種後の死亡報告事例は、ワクチン接種後の一定期間に観察された有害事象で、死亡との因果関係が実証されているわけではない。実際、2022年7月28日の時点で、ワクチン接種後の死亡報告事例は2,180件に達するが、このうち、検討部会で、ワクチン接種と因果関係がありとされたのは2例に過ぎない。99.4%を占める2,167件は情報不足により因果関係は評価できないとされている。

ワクチン接種と死亡との因果関係を立証するにあたっては、以下の3つの条件を満たすことが必要である。

  1. ワクチン接種と死亡とが、時間的、空間的に密接している。
  2. 他に原因となるものが考えられない。
  3. 死亡の発生メカニズムが。科学的に実証性や妥当性がある。

また、「ワクチン接種後の死亡報告は漏れなく報告されているか」についても考慮しなければならない。

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医療機関や製造販売業者は、ワクチン接種後の死亡例は医薬品・医療機器総合機構(PMDA)に報告することが義務付けられているが、実際には報告されていない場合も多い。報告事例のなかには、医療機関や製造販売業者からの報告ではなく、論文に報告されことによって追加された症例も少なからず見られる。

これらの制約を考慮した上で、コロナによる死亡者数とワクチン接種後の死亡者数との比較を行った。

20歳代のコロナによる死亡者数は、2021年が15人(男性:13人、女性:2人)、2022年が35人(男性:22人、女性:13人)であった。一方、ワクチン接種後死亡報告数は2021年が、30人(男性:22人、女性:7人、不明:1人)2022年が10人(男:8人、女:2人)であった。

驚いたことに、2021年では、ワクチン接種後の死亡者数は、コロナによる死亡者数の2倍に達した。(図1)

図1 20歳代におけるコロナ死亡者数とワクチン接種後死亡者数との比較

ワクチン接種後の死亡者数が、2022年には2021年の1/3に減少したのはなぜだろうか。20歳代に限ったワクチンの接種回数は不明であるが、全年齢層では、2021年のワクチンの全接種回数は2億回であり、2022年の1.7億回と比較して大きく変わらない。

コロナワクチンは、ロットによって致死率が異なる。ファイザーワクチンで検討すると、2021年の5月、6月に供給された20ロットの致死率は、0〜0.0024%に分布し、その中央値は0.0011%であった。12ロットの致死率は0.001%以上であった。

最も致死率が高いのは2021年4月16日に納入されたEI9096で、納入数は462,150回分であった。その翌週に納入されたEW1811の納入数が、5,183,100回分であることと比較して1/10以下であるのは、ファイザー社が危険なロットであることを察知して出荷を止めたのかもしれない。

2022年に供給された22ロットの致死率は0〜0.0004%に分布し、その中央値は0.0001%と、2021年の5、6月に供給されたロットの1/10以下であった。2022年のワクチン接種後死亡報告が減少したのは、ワクチンの毒性が減少したことが考えられる。

表1はファイザーワクチン、表2はモデルナワクチン、表3はノババックスワクチンの死亡報告を示す。7人の死因が心筋炎であり、致死性不整脈、心不全を加えると死因の半数が循環器系疾患であった。突然死を含めるとさらに頻度が高くなる。

また、接種当日に発症した3人を含め、22人が接種後3日以内、30人が7日以内に発症し、直後に死亡している。ワクチン接種後死亡した44人は、副反応検討部会では全例が情報不足で評価できないとされ、ワクチン接種と死亡との因果関係は認められていない。

表1 ファイザーワクチン接種後の死亡例
出典:2023年7月28日開催第94回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会

表2 モデルナワクチン接種後の死亡例(左)
表3 ノババックスワクチン接種後の死亡例(右)
2023年7月28日開催第94回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会

ワクチン接種後の心筋炎は、10代、20代の男性に多いとされているが、今回心筋炎と診断された7人のうち6人が男性で、全例が接種後2週間以内の発症であった。

死因として、致死性不整脈や心不全と報告された14人についても、12人が男性であり、13人が接種後2週間以内に発症しており、心筋炎と同じ傾向を示した。突然死した8人についても、1人を除いて男性であり、全例が1週間後以内に発症した。

致死性不整脈や心不全さらに突然死も、心筋炎が引き金になった可能性も考えられる。副反応検討部会では、たとえ、病理診断で心筋炎の診断がついていても、心筋炎の原因としてのウイルス感染を否定できないとして全ての症例において因果関係は認められていない。

最近、米国から心筋炎とワクチン接種との直接的な関係を示唆するバイオマーカーが報告された。ワクチン接種後19日以内に心筋炎を発症した若年者16人のうち、13人(81%)において、血中から遊離スパイクタンパクが検出された。一方、ワクチンを接種するも心筋炎の症状が見られない場合には、遊離スパイクタンパクは検出されなかった。

ワクチン接種によりスパイクタンパクが産生されるが、スパイクタンパクが心臓周皮細胞の機能不全や内皮細胞の炎症を起こすことが知られており、スパイクタンパクが心筋炎の原因になることは十分考えられる。上記のワクチン接種と死亡との因果関係を立証するに必要な3条件を満たすことになる。

今回、報告された心筋炎は、全例が接種後12日以内に発症した若年成人例であり、米国からの報告に従えば、少なくとも80%は、ワクチン接種に起因すると考えられる。

厚労省は、図2を使ってワクチンを接種した場合は、心筋炎の発症リスクがコロナに罹患した場合と比較して低下することを理由にワクチン接種を推奨していた。

図2 コロナに感染した場合とワクチン接種を受けた場合の心筋炎の発症リスク

しかし、ワクチン接種後者は健康人であるのに対して、コロナに罹患した場合のリスクは、コロナ感染による入院患者を対象としており、比較の対象が不適切であることを指摘され、この図をホームページから削除した経緯がある。最近の、北欧からの研究では、この図とは逆に、ワクチン接種後の心筋炎の発症リスクはコロナ感染後と比較して4.9倍あると報告されている

日本医師会の釜萢常任理事は、今秋からのXBBワクチン接種を推奨する理由として、「全年齢層において、有効性は直近のエビデンスでもしっかり積み上がっている」と述べている。

しかし、今回の検討で、2021年における20歳代日本人若年成人については、ワクチン接種後の死亡者数は、コロナ感染後の死亡者数の2倍に達することが明らかになった。

そもそも、ワクチン接種のリスクとベネフィットを考えるにあったって、接種群と非接種群の死亡者数を比較することなどはあり得ない。健康人を対象とするワクチン接種においては、ワクチン接種による死亡を許容することはできない。

過去を振り返れば、ワクチン接種後の死亡事例の発生を機に、全国のワクチン接種が中断されたことが幾度かある。1975年には3種混合ワクチン接種後に2人の乳児が死亡したことから、ワクチン接種が中断された。筆者は死亡した乳児の治療にあたった病院の小児科に勤務したことがあったので、関係者からこの件について聞く機会があった。

死亡した乳児は、基礎疾患があり、ワクチン接種と死亡との因果関係が立証されたわけでもない。過去の日本では、2人の接種後死亡事例が発生したことで、全国のワクチン接種は中断されたが、ワクチン接種後の死亡数が、コロナ感染による死亡者数を超えても立ち止まることがない現在とどちらが望ましい対応であろうか。