最近、霞が関に入った若い人たち(転職した人・しようとしている人も含む)のキャリアについて考える機会が色んなところであります。
色々な人たちと話していると、若い人たちが自分の若い頃とは違う環境に置かれていることや、自分が若い頃に悩まなかったことを色々と考えていることが分かり、僕自身も勉強になります。
そういう中で、「官僚(転職者を含む)のキャリア形成」について考えてみたので内容をまとめてみました。目先の5年、10年とかじゃなくて長い意味でもキャリア形成をですね。
では、お読み下さい。
若い頃は事務処理能力の正確性が求められるので、勉強ができる人が重宝される面が大きい。
また、特定の政策分野に詳しい、法令業務のスキルが高いなど、具体的な能力が見えやすい。
ただ、上に行くに従って、仕事の内容や役割が変わっていきます。単純に言うと、ものを作る役割から、意思決定プロセスを回す役割にシフトしていきます。営業、広報、渉外みたいな役割が大きくなります。また、誰かに作業をお願いしないといけなくなります。
したがって、上に行けば行くほど以下のような「抽象的な能力」が必要になります。
- 意思決定プロセスをうまく回すための根回しをうまくやるための営業みたいな能力が必要になる
- 誰かに作業をお願いしないといけなくなるのでマネジメント能力が必要になる
- 人や予算などを組織のリソースを確保するための交渉力も必要になる
- 先を読んでリスクマネジメントしたり、トラブルシューティングをちゃんとやる危機管理能力も必要になる
- 大勢の前で説明する機会が増えるのでプレゼン能力も必要になる
- 声の大きな人、力の強い人に恫喝や罵倒される場面にも出ていくので、コミュニケーション能力が必要になる
- 目的を達成するためには、情報収集や様々人の協力が必要なので組織内外の人脈も必要になる
ついでに言うと、業務遂行能力とちょっと違うけど、偉くなるためには、色んな人から好かれている(嫌われていないこと)も大事です。
キャリアの考え方は、その人の人生の目的によって異なりますが、霞が関に入る人は、労働条件・待遇に魅力を感じているというよりも、何かやりたいことがあってわざわざ試験勉強までして入っている場合が多いです。
やりたいことがある場合に、役所でなかなか実現できなさそうだから転職をするケースも最近は多いですが、結局のところ転職したらしたで、その会社から与えられるのは、会社全体で決めたキャリアラダーの中での職務・役割になるので、仕事の内容も役割も必ずしも希望通りになるわけではありません。
また、働き方やキャリアも選べない場合もあります。
即戦力ですぐに組織をリードするような特殊なケースでない限り、会社はあなたのために、特別扱いして最適なポストや処遇を作ってくれるわけではなく、みんなに当てはまる人事制度を用意しています。
それに乗っかっていく必要があるわけですね。
例えば、UP or OUTが前提の外資コンサルみたいなところに行くと、自分は昇進しなくてよいから今の仕事(ポジション)にとどまりたいと行っても、組織の人事ルール上例外になるのでなかなか許されないので、そこでやっていくには、めちゃくちゃ働いて上に上がるしかありません。
上に上がると、売上の数字に責任を持たされるので、色々な契約を取ってきて、チームを集めてプロジェクトを遂行させるという仕事にだんだん変わっていきます。
もちろん、ビジネスや収入に仕事の価値観を置けば、そのキャリアラダーに違和感なく乗っていけると思いますが、役所に入ろうと思った時の気持ちを持ち続けていると、気持ち的に乗りにくいだろうなとは思います。
本当になにかをやり遂げたいと思えば、役所で働き続けようが、どこかに転職しようが、起業しようが、上に書いた①~⑦みたいな「抽象的な能力」をどう培っていくかということが必要になると思います。
なにかをやり遂げたいと思うのであれば、キャリアの途中段階はともかく(山の上り方は色々だけど)、官僚だろうと民間だろうと最終的に求められる能力に大きな差はないということだと思います。
つまるところ、官僚の上層部を目指そうが、転職して企業でキャリアを積んでいくことを目指そうが、起業しようが、求められる能力というのは、自分の言うことをどれだけ多くの人に聞いてもらえて、動いてもらえるか、あるいはどれだけ多くの人に頼られるか、というところに行き着くと思います。やりたいことがあれば、なおさらそういう能力が必要と思います。
そういう風になっていくためには、役所にいようが企業に転職しようが、組織から与えらえるものをこなしているだけでは、その範囲の成長にとどまるので、組織の指示や評価と関係なく自分で色々な経験をしにいかないといけないのだろうと思います。
(千正康裕)
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年8月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。