官僚が会社経営したらこうなった

株式会社千正組を立ち上げてから、3年8か月が経ちました。

一生懸命、ビジネスパーソンの考え方をしないととか、経営をできるようにならないとと、色々な方に教えてもらいながらやってきました。

Jirapong Manustrong/iStock

官僚時代からの最大のギャップは、売り上げとか、利益とか、単価とか、そういう数字をしっかりあげ続けていかないといけないということでした。

官僚時代は、そんなこと1ミリも考えたことがなかったので。

右も左も分からないところから、色々な方に助けてもらいながら、だんだんできるようになっていって、おかげさまで立ち上げ以来ずっと右肩上がりなのですが、自分の心はなかなか穏やかになりませんでした。

どんなに、営業成績が上がり続けても、「いつか落ちるんじゃないか」と不安になったりしました。また、ちょっと難しそうな案件が来ると「できるだろうか」と不安になるようになりました。

実際には、全部一定水準以上でできていたと思うのですが、それでも不安が頭から離れませんでした。本来の自分だったら、ちょっと難しい仕事が来たら、「よし!俺がやってやる!」みたいな気持ちになるにもかかわらず。

「公務員時代だったら、こんな不安は全くなかったのにな。」

そう思ったこともありました。

今の立場になってから、3年半経って、最近ようやく少し広い視野、長いスパンで、会社経営を考えられるようになってきました。

そういう中で、自分の中にある「うまくいってるのに不安にとらわれる」という変な現象の理由が分かりました。

それは「性に合わない」ことを、やっていたということです。

売り上げとか目標を決めて、それを達成するために、計画みたいなことを考えて、なるべく多くの方に大きいサービスを買っていただく、そんなことを考えるのが、全く性に合わないのです。

思えば、官僚時代も、偉くなりたいとか、組織や上司に評価されたいという気持ちはさらさらなくて、また、特にやりたい分野とかやりたいことがあったわけでもありません。専門性をつけようと思ったこともありません。結果的に、必死にやってきたことが特技として積みあがってはいますが、専門性を獲得しようとしたわけではありません。

単に、困っている人とか、いいことをやろうとしている人がいたら(注)、僕になにができるだろうと考えて、組織内外の仲間にも助けてもらいながら、できる限りのことをするというだけです。僕がずっと考えてきたのは。

(注)なんでも相談に乗るわけじゃなくて、だいたい以下の3つを満たす場合です。

① 困っている人、いいことやろうとしている人
② いい人
③ 真剣であること

組織に指示されている仕事も、もちろんそうですが、誰にもやれと指示されていないことも、そういう自然な気持ちに任せてやってきました。

その結果、色々なことができるようになっていったり、一緒にやってくれる人や助けてくれる仲間がどんどん増えていって、幸せな職業人生を送っていました。

独立してからは、こういう考え方というのは、無駄なこと、お金にならないことばかりしてしまいかねないので、一見すると経営のセオリーから外れているようにも感じていました。

心の真ん中にそういう気持ちを持ち続けながらも、売り上げのことを、(大して慣れていないから)必死に考える日々を過ごしてきました。

この、自分の本当の心と、必死に考えることの間のギャップが、自分を苦しめてしまったり、現実的でない不安にとらわれてしまったりということの正体だったと思います。

3年半経って気づいたのは、そうやってあまりお金にならないことでも、必死にやっていると、色んな人の助けを借りながらなのですが、できることがちゃんと蓄積していきます。

そして、このごろは、過去に少しやったのと似たような大きな仕事が来たり、別の大きなプロジェクトでその経験が活かされたりといったことが、どんどん増えてきました。

「そうか、ああやって目先で大したお金にならないことをやるというのは、お金をもらいながら訓練を受けたり、実証事業をやったりしているのと同じなんだな」と気づきました。

それが、ある程度分かってからは先が読めるようになり、自分の小さな成功事例と、クライアントやパートナーのやりたい抽象的なことを結びつけるアイディアもどんどん浮かぶようになりました。

そして、大事なことは、自分で目標や計画を決めないこと、やる内容も特に決めないことという結論に至りました。

なぜって?

先のことや自分の本当の価値なんて、自分では全部分からないからです。僕を理解してくれている周りの人の方がきっとよくわかっているんだと思います。

お金になろうがなるまいが、誰かが僕に頼んでくることというのは、大きさはともかく、少なくとも世の中にニーズがあることの証明であり、また大企業では売ってないし、その辺にも売ってないから千正組に相談が来るわけです。

それをやっていれば、自分たちしかできないようなことで実績が積めて、それが仕事になっていきます。

もしかしたら、これが一番近道のマーケティングなんじゃないかと思うようになりました。

そして、色々な依頼が来る中で、新しいタイプの仕事が増えていくので、自然と新規事業開発ができてしまいます(事業化するには、ちょっと知恵と仲間が必要ですが)。

そもそも、目標を決めてそれを達成するためにがんばるみたいな生き方をしたことがありません。何者になりたいわけでもないし、たくさん稼ぎたいわけでもないですし、人生を振り返っても受験も経験してないし、役所でも出世競争とか全く興味なかったです。

みんなのためになることなら、なんでもやりたい。

そんな風に思っていただけです。

「みんな」というのは、国民の皆さんはもちろんのこと、厚労省の仲間や他省庁や様々な団体、有識者、メディアの方など、自分を取り巻くスタークホルダー「みんな」です。

そして、それが経営として、とても良いことなんじゃないかと、最近思うに至りました。

自分の本当の心と会社を経営していくという実際にやってることが、ピタっと合ったんです。

そしたら、不安も何もなくなったし、とても幸せだし、楽しくてどんどん新しいことが広がるようになりました。

厚労省の頃の本来の自分に戻った感じがします。

これからも、みんなのために働いていこうと思います。

官僚の気持ちで会社経営したら、こうなったというお話なんですが、今後も会社経営の中でも気づいたことがあれば、書き留めておこうと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。