バカになる勇気

黒坂岳央です。

SNSが発達した現代、バカになり切ることは利口に見せるよりもはるかに難しくなった。誰もが「自分は優秀だ」と自分を大きく見せたがる。そうしないと他人からバカにされ、自信をへし折られてしまうのが怖いからだ。つまり、承認欲求がバカになる勇気を奪い取ってしまっているのである。

だが正直なところ、ある種の成功にはバカになる勇気が必要だ。口で言うのは簡単でも、実際にこれをできるだけの勇気を持った人は非常に少ない。本稿ではバカになる勇気を説きたい。

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優秀な人が失敗しない理由

世の中の利口と言われる人たちはシミュレーションが得意である。行動に移す前から、あれこれ先読みと計算をして行動する前にやる価値があるか?ないか?を決める。そうなると必然的に行動量が減る。行動に移す前に考えるから、彼らはほとんど失敗しない。仕事でも学校でも優秀と言われる人たちがミスをしないのは、よく考えているからだ。

しかし同時に「成功か失敗か分からない挑戦」を戦略的に避けてしまっていないだろうか。だから直近、3ヶ月間で記憶に残るような失敗をしていない人は、新しい分野への行動力が足りないと言える。一切失敗しないような簡単なことしかやっていないという裏返しでもあると思うのだ。

バカである強み

バカを受け入れる強みは大変大きい。

世の中には「やってみないと分からないこと」はあまりにも多い。自分は28歳で今の妻と出会ってその後結婚をしたが、当時結婚や子供を持つということは人生で一瞬たりとも考えたことがなかった。周囲からは「子供や結婚はよく考えた方がいい」とアドバイスを受けたが、同棲して少し一緒に住んで見るテストを経て、その後はあまり何も考えずに結婚をし、子を持った。理由は「楽しそうだから」である。

先のことは何も考えていなかった。人から見ればバカな行動と映るかもしれない。しかし結果としてこんなにいいものとは思わなかった。おそらく、あれこれ悩みすぎていたら今得ているチャンスを逃していたかもしれない。(自分はただ運が良かっただけかもしれないが…)。

起業も投資も周囲から「失敗したら地獄が待ってる」みたいに恐怖を吹き込まれてきたが、ビクビクしながらやってみた結果、想像以上にたくさんの失敗をした。だがしっかり命綱を握ってリスクコントロールしていたので、リスクは別に大したことはないと拍子抜けしてしまった。だがやってよかったと思うことは数え切れないほどあった。リスクは極限まで抑えられるのに、リターンが青天井、これならやらないのはもったいないと思えてしまう。

「新しい挑戦はあまり考えずにまずやってみる。やってみてダメならその都度、betterな道を選択し続ければやがて納得の行く道へと至る」、自分はある種、あまり考えすぎずノーテンキとバカにされるような心情でやってきたがこれで良かったと思うことは多かった。失敗や周囲からの嘲笑を受け入れる勇気を持った先にはとてつもないリターンが待っているのだ。

バカになる2つのコツ

バカになるリターンはとてつもなく大きいが、同時に勇気がいる。バカになるということはたくさんの失敗や嘲笑を受け入れて、気にせず前進し続ける生き方である。神経質な人はまず、このたくさんの失敗に耐えられない。時分の心を紙やすりで削られながら前進し続けるのは苦痛を感じるからだ。また、成果を出せず周囲からバカにされてそこで心折れる人もいる。普通はとてもできない。

ではバカになる勇気の持ち主はどういう心境でやっているのか?それは「失敗を失敗と考えない」という思考である。

新しい挑戦をする上では誰がやってもうまくいかないことの連続だ。日本トップの資産を保有するユニクロの柳井氏は「1勝9敗」という書籍を出した。あれほどの大成功者でも「10回戦えば勝てるのは1回」と言っているのだ。凡人はその10倍くらいはやる前から負けることを受け入れるくらいでいいだろう。

うまくいかないことを「失敗」と捉える人はバカになりきれない。自分は「練習」と解釈するようにしている。練習段階でイチイチ落ち込む人はいない。ようは解釈の問題なのだ。

もう1つは「バカにされる人が主人公」という思考である。野球でもサッカーでも、大統領でもアイドルでもスターや主人公は「常にヤジを飛ばされる側」である。主役が観客をバカにすると大炎上間違いないが、その逆は普通の光景である。

新しいことに挑戦したり、うまく行かないことがあるとヤジを飛ばす人間は必ずいる。だが、それは正しく挑戦者こそが主人公で行動しないのに他人の評論をしている側がモブキャラという構図なのだ。たった一回の人生、できるなら主人公を演じたいものであり村人Aではないはずだ。

SNSでみんな他者比較をし、失敗にビクビク怯えている時代だからこそバカになる勇気を持つことは成功者になるための条件だと言える。スマートに一発で大成功、よりも泥臭く年単位で自分の失敗を笑いながら前進するバカにはきっと応援の拍手や声援が数多く届くだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。