逃亡者プッチェモン氏の恩赦反対で約6万人がマドリードに集結
9月24日、マドリードにおよそ6万人近くが集まって恩赦に反対する抗議デモがあった。スペインの暫定政府が恩赦を与える対象になっている人物とは、プッチェモン・カタルーニャ元州知事である。
2017年10月にカタルーニャの独立宣言をしたあと、同州政府の閣僚が反逆罪と横領罪などに問われた際に、法廷での裁きを受けることを拒否してベルギーのブルッセルに逃亡したのがプッチェモン氏と一部閣僚である。彼の政党ジュンツは7議席を持っている。
なぜサンチェス暫定首相が彼らを恩赦にする意向を示しているのか?彼が首班指名でこの7議席を加えて過半数の票を獲得してこれからも政権を維持したいからである。
首相指名に足りない4議席を巡って
7月23日に実施されたスペインの総選挙のあと、現在に至るまで政権が誕生していない。理由は次のような事情からである。
国民党(PP)が最高の議席数を獲得したのであるが、党首フェイホー氏の首班指名に必要な過半数の議席が他政党の議席を加えても4議席足らない。それに対して、選挙前まで首相の地位にあったサンチェス氏の社会労働党(PSOE)も他党を集めても同じく4議席の不足で過半数に届かない。
そこでサンチェス暫定首相が交渉の対象にしているのが、プッチェモン氏が率いる政党ジュンツのこの7議席である。それに対してプッチェモン氏はスペインに帰国できるように恩赦を要求している。彼にはスペインの法廷からもちろん逮捕状が出されている。サンチェス暫定首相は自らの首相としてのポストを維持すべくスペインの法廷で判決された罪状を無効にしようとしているのである。
問われるスペインの法治国家としての信頼
スペイン政府によって恩赦が実施されれば、スペインの法廷での判決が今後も覆される前例を作ることになり、法治国家としての信頼を失うことになる。それゆえ、冒頭に取り上げたように国民党が主軸になって抗議を行ったのである。その呼びかけに各地から呼応して6万人が余りが集結した。
サンチェス氏はこの恩赦を与えるべく、プッチェモン氏が住んでいるベルギーの邸宅に副首相を送り込んで交渉もさせている。副首相を逃亡者に会いに行かせるという、サンチェス氏の国家リーダーとしての資質が疑われている。
サンチェス暫定首相はこれまでも発言した内容が時の経過とともに180度転換するというのは良くあったことで、今回の副首相を逃亡者に会いに行かせるという行為も人格に欠けるサンチェス氏であれば別に不思議でもない。
しかし、恩赦を与えるようになれば、それは外国からのスペインへの法治国家としての信頼性を欠く行為に繋がることになり、それが強いてはスペインへの企業投資にも間接的に影響を与えるようになると言われている。