独2州議会選、連邦与党3党は後退:AfDは得票率を伸ばす

ドイツで8日、バイエルン州(南部)とヘッセン州(中部)両州議会選挙の投開票が行われた。

両州とも現与党、ヘッセン州ではボリス・ライン州首相が率いる「キリスト教民主同盟」(CDU)、バイエルン州ではCDUの姉妹政党、マルクス・ゼーダー首相の「キリスト教社会同盟」(CSU)が第1党を堅持した一方、ショルツ現連邦政権の与党「社会民主党」(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党は両州でいずれも得票率を大きく失った。

それに対して、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は得票率を伸ばし、ヘッセン州ではCDUに次いで第2党に躍進した。

バイエルン州議会選で第1党を堅持した「キリスト教社会同盟」(CSU)のゼーダー党首(州首相CDU/CSU公式動画からのスクリーンショット、2023年10月8日

【バイエルン州議会選】

ゼーダー州首相のCSUは得票率約37%で第1党を堅持、前回選挙(2018年10月)比で0.2%微減したが、他党を大きく引き離して勝利した。それを追って右派の「自由な有権者」FW))が15.2%で前回比で4.2%増だった。FWのフーバート・アイヴァンガ―党首は選挙戦で、若い時代に書いた反ユダヤ主義的な文書がメディアに報道され、辞任要求などの厳しい批判を受けたが、選挙結果を見る限りではマイナスの影響はなく、むしろ支持者を増やした。

FWと2位を争っていたAfDは14.6%で微差で3位に留まったが、前回比で4.4%得票率を伸ばした。一方、ショルツ現連邦政権に参加する「緑の党」は14.4%(前回比で3.2%減)、SPD8.4%(1.3%減)と得票率を減らし、FDPは3.0%で議席獲得のハードル5%をクリアできずに州議会での議席を失うなど、3党連立与党は後退を余儀なくされた。

バイエルン州ではFW、AfDと右派系政党が票を伸ばすなど、「バイエルン州は一層、右に傾斜した」と言われている。ゼーダー州首相はCSUとFWの現連立政権を維持する意向だ。ちなみに、ゼーダー州首相は2025年の次期連邦選挙でCDU/CSUの統一首相候補のポストを狙っているが、州選挙ではもう一つアピールできずに終わった。投票率約73%。

【ヘッセン州議会選】

ボリス・ライン州首相のCDUは得票率約34.6%を獲得し、前回選比で7.6%増と大勝利だった。両州議会選で唯一、選挙で勝利した政党ともいえる。AfDは18.4%で前回比で5.3%得票率を伸ばし第2党に躍進。一方、SPDは15.1%(前回比4.7%減)、緑の党14.8%(5.0%減)と両党とも大きく得票率を失い、FDPは5.1%(2.5%減)で辛うじて5%を超えた。ショルツ連邦政権に参加するSPD,緑の党、FDPの3党はいずれも得票率を失う厳しい結果となった。

SPDは同州ではナンシー・フェーザー連邦内相を党筆頭候補者に迎えて選挙戦を展開してきたが、党史上最悪の結果となった。フェーザー内相は選挙戦で敗北したならば、ベルリンに戻り、内相を継続したいと表明してきたが、選挙後の同内相の立場は不確かだ。投票率は約66%。なお、ライン州首相は「緑の党」との現連立政権を継続する意向が強い。

【ミニ解説】

米国の中間選挙では大統領ポストを有する与党が野党に苦戦するケースが多いが、任期2年目が終わるショルツ連立政権にとって今回の2州議会選は国民の中間評価という性格がある。そして米国と同様、与党の3党は両州で得票率を失った。エネルギー価格、物価の高騰、住居問題などを抱えるドイツの国民経済は目下リセッション(景気後退)だ。ウクライナ支援でも国民に疲れが見える一方、不法な移民・難民の急増に直面して、現政権は対応に苦慮している。その当然の結果として、移民・難民政策では厳格な路線を主張するAfDが両州で飛躍したわけだ。

独週刊誌ツァイト(オンライン版)は「右傾化は東ドイツだけの問題ではない」という見出しで報じている。バイエルン州もヘッセン州も旧西独の州だ。AfDはこれまで旧東独州の有権者を支持基盤としてきたが、旧西独地域でもAfDは着実に支持基盤を広げていることが明らかになった。ただし、ドイツではどの政党もAfDとの連立を拒否しているため、AfDは永遠の野党としての地位に甘んじるか、過半数の支持を獲得して単独政権を目指すかの選択肢しかない。後者は当分、非現実的だ(「極右政党の“政権パートナー探し”」2023年6月14日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。