男女格差、ノーベル経済学賞受賞者の指摘に関する私見

日本の場合、突発事故が起きれば社員は総出になりますが、女性社員には若干気遣いがあるように感じます。「私も手伝います」「いや、ここから先はどれぐらい時間がかかるかわからないから気持ちだけもらっておくよ」という感じでしょうか?日本の男性が異性としての意識を持ち、優しさの表れと言えるのかもしれません。こちらでは男も女も関係なしです。それが良いか悪いかはまた別議論です。

女性の登用について個人的にはずいぶん増えたなと思います。最近とみに感じるのがJRの社員。車掌も駅員も女性が非常に多くなりました。ホテル業界も女性比率は61%にも及び、着実に女性の労働者が浸透している点においてはゴールディン氏がいう「女性を労働力にするだけでは十分ではない」という発言はやや外しているように見えます。統計上は正社員、役職者、役員、社長それぞれの男女比を提示し、欧米では役員や社長の男女間のバランスよい比率こそジェンダーギャップが解消した証とすら見るのですが、この感覚が私には欧米と日本の間で埋められないパーセプションギャップではないかと思うのです。

また、日本の女性がフルタイムでキャリアを目指す方が本格的に増えてきたのはせいぜいこの20年だとみています。つまりようやく役職者の卵が育ったところで、今後、役職者はどんどん増えてくる過程にあると考えています。毎年男女格差の海外との比較が様々な統計で出てきますが、働き方と社会での活躍というテーマは何十年もかけて育てなくてはいけない訳で毎年、目に見えて変化することではありません。

クラウディア・デイル・ゴールディン氏 Wikipediaより

ゴールディン氏のいうパートタイム的な仕事をする方については「年収の壁問題」を岸田首相が改善しようとしていますので内容次第で働き方は大きく変わるでしょう。

女性の労働力はいくつかにカテゴリー分けできます。①学卒後、結婚ないし出産まで仕事をする ②学卒後、結婚、産休があろうがなかろうが仕事を続ける ③子育て終了後、社会に復帰する が考えられると思います。①の場合、平均的には10年から15年がマックスに対して③のケースはリタイアをいつとするか次第ですが、50歳から70歳と考えれば20年あるのです。日本の場合、歴史的には②が少なく、①と③が主だったため、労働力提供と揶揄されてきたわけです。

なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学

私が思うのはこの③を大きく伸ばすことが日本の将来を支えてくれると考えています。子育てが終わった女性はある意味、社会経験が豊富で労働力としての価値は高く、その人たちを約20年、社会人として成長路線に乗せれば日本版女性社会進出のスタイルとして世界に売り込めるでしょう。大体、結婚しているご家庭において50歳を過ぎれば旦那の給与は下がる一方でしょぼくれ人生の始まりなのです。そこで奥さんが一家の大黒柱になり替わるとなれば旦那さんも家事の手伝いをせざるを得なくなるというものです。

個人的には日本における女性進出は内外が言うほど遅れているわけではなく、統計という後追いの数字がまだキャッチアップしていないだけなのだ、ということ、そして子育てが終わった女性の活用を考えることが重要だと思います。また子育て中の女性も主婦の井戸端会議に明け暮れるのではなく、自分を磨くために勉強やスキルアップをプランし続けることで人生を充実させてもらいたいと思います。

では今日はこのぐらいで。

なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月11日の記事より転載させていただきました。