正論を正面から主張しないのが「商売の基本」

いつも通っている和食のお店に出かけました。お料理が美味しく、何よりスタッフの接客が丁寧なのが気に入っています。

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ところが、この日はいつもと少し印象が変わりました。スタッフのオーダーの聞き違いで、注文していない料理が運ばれてきたのです。

しいたけの肉詰めを注文したつもりが、しいたけの炭火焼が運ばれてきました。「秋のしいたけ事件」とでもいうような事態です。

注文したものと違うとスタッフには伝えたのですが、そのスタッフは「私はその注文で聞いています」と頑として譲りません。

意地を張っても仕方ないので、注文した覚えのない料理を食べることにしました。

しいたけ炭火焼も味は良かったのですが、後味はあまり良くありませんでした。

こちらの勘違いなのか、それともスタッフの聞き違いなのか?どちらの言い分が正しいのかは、録音していないので分かりません。でも、客の言い分を正面から100%否定するのは、接客としては残念な対応だと思いました。

せめて「申し訳ございません。よろしければ、こちらを代わりに召し上がっていただいても良いですか」とでも言えば、角が立つ事はなかったはずです。

これは飲食店に限りません。

ビジネスにおいても、プライベートでも相手の話を正面から全否定する人がいますが、コミニケーション能力が低いなと思ってしまいます。

なぜなら会話のポイントは「正しいか、正しくないか」ではないからです。

ビジネスであれば相手との信頼関係を構築して仕事の成果につなげる。プライベートであれば、楽しく時間を過ごせるように良好な関係を作る。これらが本来の目的であるはずです。

全否定する前に一言「確かにおっしゃる通りです。ただ・・・」と添えるだけで、相手に与える印象はずいぶん変わります。

注文の確認をせずに、客とのミスコミュニケーションが発生したのに、正論を主張して客が望まない料理を無理に食べさせる飲食店。

いつも気持ちよく利用していただけに、「商売の基本」がわかっていないのは意外で残念な出来事でした。

東京も本格的な秋を迎えたせいもあって、帰り道はいつもより心なしか寒く感じた一日でした。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年10月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。