「借金の性質」をきちんと考えると、中小企業こそ正しく借り入れをすべきですし、資金に余裕のある経営が望まれるもの。しかし、借りたくても借りられない会社があるのも事実です。
「借り入れがうまい会社は潰れにくい。計画的に準備を進め、借りるタイミングをきちんと見極めている」と言うのは経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。
銀行との面談が増え始める
中小企業の経営も、金融機関から上手く借り入れができていて、うまく経営に生かされていれば問題ないのですが、「苦しくて借りる」となると話は別です。
まず、危険なシグナルとしての「銀行との面談が増える」ということは、どういうことでしょうか。
まず、信頼できる優秀な企業であれば、銀行は割と軽くポーンと貸します。1000万円でも2000万円でも。では、簡単に貸せない場合はどういうケースかといえば、そのまんま「貸し先として信用ができない」からです。
例えば、赤字決算だと借りることは難しいといえます。当然、赤字決算ということは利益が出ていない会社ですからね。そんな会社にお金が貸せるわけがない。
でも、会社が傾き始めれば、当然社長は金策を考える必要があります。つまり、なんとかしてお金を金融機関から借りようとするわけですね。しかしながら、赤字決算なので金融機関もそう簡単には貸せない。
会社の現金の過不足などを監理する「資金繰り表」や事業計画、収支計画などを出してもらい、面談に面談を重ねる……というわけで、苦しい借り入れをしている場合に、金融機関との面談が増えるというわけです。
ちなみに、この借り入れのサイクルが早くなり始めたら要注意。借り入れ自体は経営のために必要なものですが、そんなに頻繁に借りるものではありません。ひとつの金融機関につき、一年か二年に一回とか、そんなものです。それ以上の短いスパンで借りる素振りが見えたら、危険な匂いがするってことになりますね。
資金繰り表が存在しない会社は要注意
先程さらっとお伝えしましたが、会社のお金を管理する方法として、「資金繰り表」を 作成するという方法があります。これに類似するものとして「キャッシュフロー計算書」 というものもありますが、基本的にはどちらも会社のお金を管理するものです。
違いとしては、資金繰り表が手元の資金の予測であり、キャッシュフロー計算書は過去の実績を見るもので、まあ、そういうものが会社経営にはあるんだと思ってもらえればOKです。
ちなみにこれらの表なり計算書は、法律的につくらなければならないとかそういう義務があるわけではなく、ない会社もたくさんあります。そんな資金繰り表ですが、これが存在しないからヤバい会社……とも言えるのですが、ある会社は信頼できる……かもしれないくらいの感じです。その性質を解説していきます。
まずは信頼できるパターン。
それは、会社の業績も好調。借り入れも潤沢で返済にも問題ない場合で、資金繰り表がきちんと整備されている場合。これは最高の状態です。会社が順調だからといってお金の管理がいい加減になっているわけではないですし、盤石といえます。
一方で、資金繰り表があっても厳しい場合。
それは、会社の業績が芳しくなく、借り入れをするための説明として資金繰り表をつくっている場合。これは資金繰り表自体が存在することはよいのですが、借り入れするための説明につくっているわけで、会社自体は不安な状態といえるのです。
一方で、資金繰り表がない場合。
それでも経営が順調であれば、特に資金繰り表はなくても経営は成立します。問題なのは、会社の業績がよくないのに、資金繰り表すらないパターン。これはかなり心配です。会社の業績がよくないとき、例えば赤字決算ならばこの資金繰り表は、金融機関から借り入れをするための最後の綱。そういうわけで、状況に合わせて資金繰り表の有無を確認してみるといいでしょう。
帳簿に記録のない「簿外債務」がある
会社の帳簿に載っていない債務を帳簿の外にある債務ということで、これを「簿外債務」と呼びます。
例えば、典型例は「未払い残業代」とかですね。
決算書上はなかなか好成績に見えても、実は支払っていない未払い残業代がたんまりある。証拠を集めて社員全員に未払い残業代請求をされたらアウト、みたいな会社いっぱいあります。
ほかにも、企業がほかの企業や個人の保証人になっている場合。その債務者に何かあれば、会社は支払い義務を負います。こういう簿外債務は企業買収の際などに入念にチェックされるものですが、通常の経営だとなかなか把握しきれません。
言い換えれば、決算書だけ見ても、その会社のことは把握しきれないってことですね。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年10月13日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。