アメリカ人がフレンドリーな真の理由を日本人は何も知らない

谷本 真由美

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日本人はアメリカ人はフレンドリーだと思い込んでおり、 日本の英語の教科書にもやたらとフレンドリーなアメリカ人が登場します。

以下は私の著書である「世界のニュースを日本人は何も知らない4」の抜粋ですが、海外の人々の言葉を真に受けてはなりません。

英会話を習いに行く日本人は、英語を喋れるようになるためにはアメリカ人のように毎日明るく楽しくフレンドにしなければならないと思い込み、一生懸命アメリカ人風のジェスチャーを身につけたり、見るからに根暗でオタクの人がアメリカ人風に「は~いあなたは先週の週末は何をしてたのかしら?」などという白々しい会話を実に熱心に学ぶのですが、元々がねっとりと暗い日本人なので思いっきり浮いています。

さて、皆さんに教えておきたいのは、実はアメリカ人がそんなにフレンドリーではないということです。

もちろんアメリカ人は初対面の人にも非常に気軽にあいさつをして、まるで長年の友人のように生活の話をどんどんしまくり、「あなたの髪型は素敵よね」などと、日本人だと20年来の友人でもなかなか口に出せないことを言ったりします。

矯正しまくった白い歯をちらりと見せて、スーパーのレジでも、子供の送り迎えでも、みんな常にニコニコしています。

ところが色々喋っているように見えても、実はアメリカ人の会話というのは非常に表面的です。間違ってもむきになって政治問題を語ったり、食材の調理方法について真剣に検討したことを話したり、家の遺産相続の揉め事とか、姑との諍いを話しては絶対にいけません。

また週末は「ジョギングしていた」「家族とBBQしていたよ」とリア充生活を送ったということを答えるのが「前提」になっているので、正直に「一日中アニメを見ていました」「離婚訴訟の話をしていた」などと答えてはいけません。

アメリカ人がべらべらと雑談している内容というのは、あくまで差し障りのない内容で、しゃべっている内容自体は本当にどうでも良いのです。そしてニコニコしているからといって相手が自分に対して好意的というわけではないのも要注意です。

雑談も笑顔もあくまで社交辞令にすぎません。裏ではボロクソに言っているということがよくあります。

つまり、アメリカというのは社交辞令として、常に明るく楽しく延々と喋って、他人に対してはフレンドリーに振る舞わなければいけない、という非常に同調圧力が強くきついところなのです。

なぜかと言うとアメリカというのは開拓地ですから、欧州から様々な人が渡ってきて、元々住んでいたネイティブ・アメリカンを殴りつけて作った国ですので、周囲は敵だらけです。アメリカに流れてくる人間というのは、自国で食い詰めた貧民や犯罪者、宗教的過激派、船乗りや海賊など、胡散臭い人間だらけだったので、周りの人間が一体どういう人かわからないのです。

ですからなるべくフレンドリーに振る舞って、「自分は隠し事をしていない」という感じで当たり障りのない内容を「自己開示」という意味でどんどん話すことで、「 私は危ない人間ではありません」 とアピールすることがサバイバルのスキルになったわけです。

つまりこの「フレンドリー」というのはアメリカ独自のものなので、アメリカでアメリカ方式を身につけた人が欧州に行って同じようにコミュニケーションをすると、「こいつは頭がおかしい」「胡散臭い」と疑いの目を向けられてしまいます。

欧州の人々はアメリカの歴史というのを知っていますし、アメリカ人がいくらフレンドリーになってもそれは本当の意味ではないということをよく知っていますから、最初から彼らを全く信用していません。

ですからアメリカ人に「あなたはビューティフル」「あら素敵なネクタイね」「素晴らしい仕事をしたね!」と言われても、それはあくまで社交辞令で、マイナス150点ぐらいにして丁度良くなるということは覚えておきましょう。

日本人はいくら頑張ってもアメリカ人にはなれませんので、寡黙でミステリアスな東洋人というイメージをつき通して、コミュ障として生きた方が面倒くさくなくよいでしょう。