日本はコロナによる死亡を他の国と比較して抑制できたのか?

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現在、コロナの感染者数も減少傾向で、第9波も収束する兆しが見えてきたなかで、新型コロナウイルス感染症対策分科会が廃止となり、尾身会長も退任となった。この機会に、日本のこれまでのコロナ対策に対して様々な意見が聞かれる。なかでも、他の国と比較して、コロナによる死亡数を抑制できたと評価する意見がある。果たして、日本はコロナに対して上手く立ち回ったのだろうか。

Worldometerによれば、10月12日現在、全世界では6,925,329人のコロナによる死亡が報告されている。図1には、各国の累積死亡数を示すが、日本は74,694人で225カ国のなかで20番目である。

図1 世界各国における新型コロナ感染症による累積死亡数
Worldometerより

もちろん、総死亡数は人口によるので、図2には、人口100万人あたりのコロナによる死亡数を示す。欧米や南米諸国と比較して、アジアやアフリカ諸国は、圧倒的にコロナによる死亡数は少ない。日本もアジア諸国の一員として例外ではない。

図2 人口100万人あたりの新型コロナ感染症による死亡数
Worldometerより

日本や韓国において、コロナと診断されずに亡くなっているケースが多いとは思われないが、アフリカの発展途上国ではコロナと診断されていないケースが多く、そのためにコロナ死亡数が少ないことも考えられる。しかし、コロナの流行が始まってから現在までのアフリカ諸国の超過死亡は、欧米と比較して多いわけでもない。

図3は、流行開始時から現在までのコロナによる死亡数の推移を示す。

図3 各国の新型コロナ感染症による死亡数の推移
Worldometerより

米国、英国、イスラエルでは、2020年に大きなピークが見られ、最大の死亡数が記録されている。ベトナムでは、デルタ株が流行した2021年の8月までは死亡者は見られず、8月と12月にピークが見られたが、それ以降は再び死亡数0が続いている。韓国でも、2021年末までは、死亡数は抑えられていた。2022年の3月にオミクロン株によるピークが見られたが、それ以降は比較的抑えられている。

日本もベトナムや韓国と同様に、2021年末までは比較的死亡数は抑えられていた。しかし、2022年に入ると、2月、8月、12月にオミクロン株による死亡数のピークがみられ、しかも、ピークを迎える毎に死亡数は増えている。他の国が、2022年の4月以降は死亡数のピークは見られていないのに、日本のみ死亡数のピークが観察されている。

図4は、上記6カ国の人口100万人あたりのコロナによる死亡数の変遷を同時に図示したものである。

 

アジアの3カ国は、欧米と比較して、流行初期には圧倒的に死亡者数が少なかったのが、コロナワクチンの接種が始まったのにもかかわらず、2021年の中盤以降は、欧米と同様に死亡者が見られるようになった。とりわけ、日本は、2022年の8月以降は世界でも最多のコロナによる死亡数が記録されている。

図4 人口100万人あたりの新型コロナ感染症による死亡数の推移
Our World in Dataより

ワクチン接種が始まる前は、コロナによる死亡数が抑えられていたにもかかわらず、ワクチン接種が普及した2021年以降に死亡数が増加したことから、6カ国のワクチン接種状況を検討した。

図5にはワクチンの接種状況を示す。アジアの3カ国は、開始時期は遅れたものの、1回目、2回目の接種率は最終的には欧米を凌ぎ、国民の80%以上が接種済みである。なかでも、日本の追加接種回数は、ダントツで他の国の2倍以上である。

図5 コロナワクチンの接種状況
Our World in Data

コロナによる累積死亡数が少ない事を理由に、日本のコロナ対策を自画自賛する意見もあるが、累積死亡数が少ないのは、アジア諸国に共通して、流行初期には欧米と比較して死亡数が少なかったことによる。

アジア諸国では、過去に類似のウイルスへの感染者が多く、交差免疫を持っていた可能性が高い。ワクチン接種を含めて、コロナ対策が本格化した2021年の夏以降になると、アジア諸国の優位も揺らいでいる。

ワクチンを頻回接種すると、免疫能が低下することが知られている。日本のコロナ対策はワクチン接種の推進一本槍であるが、その結果、世界で最多のコロナによる死亡が見られるようになったことを考えると、わが国のコロナ対策を自賛することはとてもできないであろう。

9月20日から7回目のXBB対応ワクチンの接種が始まったが、専門家はいまだに“重症化予防のためにワクチンを接種しましょう”とワクチン接種を推奨している。追加ワクチンの接種率がダントツの日本が、世界でもコロナによる死亡数が最も多い現実をどのように説明するのだろうか。