高橋洋一氏はなぜ人気があるのか?

このブログをお読みの方は高橋洋一氏の番組などを見たことがある方が相当多いのではないかと思います。氏のYouTubeは先日登録100万人を突破したし、9月の終わりには東京ビッグサイトで青山繁晴氏とトークショーを開催。確か、入場料は6000円以上だったと記憶しています。

一般的YouTuberは登録数を増やすため四苦八苦努力し、旅行や飲食代金など相当のコストをかけて魅力あるYouTube番組作りを目指していますが、高橋氏のそれはどう見ても自宅の居間で撮影したものでコストはほぼゼロだと思います。つまり、頭脳、知識、情報、継続性を売り物にしています。

高橋氏の出身の財務省(元大蔵省) 同省HPより

氏のバックグラウンドはハイレベルすぎて書きようがないのですが、東大時代は数学の専攻、政策研究で博士号を取得し、財務官僚で菅内閣では内閣官房参与でした。氏のキャリア以上に歯にモノを着せぬトークぶりが人気の秘訣なのでしょう。事実、氏は自身のYouTube以外にテレビのレギュラーもあり、他のユーチューバー番組やラジオなどにもちょくちょく出ており、むしろ高橋氏の名前を自分のユーチューブのセールスに利用する感じも見受けられます。

ただ、YouTubeのトークショーなどを見ていると誰の、とは言いませんが、高橋氏が何枚も上手でトークショーの相手がタジタジで押し出されて終わり、というケースがしばしば起きています。つまり経済評論家としては横綱で氏を打ち負かす人が現れない、という状態です。

トークの内容も実に多彩でそれこそガチガチの経済の話や外交からジャニーズやビッグモーターのことまでしっかりカバーしており、その分析力もハイレベルだと思います。何故かといえば情報収集能力が異様に高い、つまり、各方面に精通している人をしっかり押さえており、トピックスが浮かべばその件で詳しい人にしっかり話を聞くラインをお持ちだということでしょう。これはご本人も認めています。

一方で高橋氏が嫌いなメディアが多いのもまた事実。産経は比較的好意的で夕刊フジあたりの記事をたまに産経のオンラインに転載していますが、他のメディア、特に日経は逆立ちしてもリファーすることはありません。つまり100万人もフォロワーがいても敵も極めて多いということです。個人的には敵が高橋氏になかなか勝てないこととあのバッサリ断じてしまう口上が好きではない人がいるということでしょう。

今日、なぜ、唐突に高橋氏の話題を振ったのかといえば横並び主義、出る杭は打たれるという発想も「圧倒的に抜きんでてしまえば杭は打てない」ということを言いたいのです。だいぶ前ですが、ある上場会社の会長さんとさしで話をした時、「競合に追いつかれない絶対的な域に達すればレッドオーシャンはブルーオーシャンに変わる」と言われたのですが、これが今でも人生の教訓のように響いて頭に焼き付いています。

日本人は迎合しやすい雰囲気があります。「これを言うと他人はどう思うか」という自分への評価を大事にするあまり、針を振り切って「そこまでやるのか?」という域に行けないのです。他人の目を気にするということは敵をなるべく作らないということです。しかし、高橋氏に敵は多いと思います。テレビのレギュラーも大阪のキーステーション番組ですが、東京の放送局ではあまり出ていないと思います。

氏は現在、大学の先生でもありますが、東京小平にある嘉悦大学です。知らない人がほとんどでしょう。私も知りません。調べたら経済経営学部の偏差値は36〜49。高橋氏の頭脳と比べると月とすっぽんです。なぜ、高橋氏ほどの方が嘉悦大学なのか、これは私の想像ですが、敵が多いのでこれぐらいの大学が一番居心地よいのではないかと思います。

大学の教授会の「白い巨塔」状態は今でも歴然として存在します。それも医学部の話ではなくほぼ全ての学部で存在し、有名大学になればなるほど激しい内部闘争のようです。特に大学の先生は研究内容についてライバル視もあるし、場合により完全に敵対な関係もあるでしょう。それが人事などの足の引っ張り合いになるのです。大学名は出せませんが、ある日本を代表する超有名大学でもそれが起きているという内部の話を私は直接聞いています。

「ずば抜ける」とは他人の評にいちいち揺れ動かされず、自分の信念を貫くことです。高橋氏はご自身でも認めていましたが、氏の発言に対して批判や非難は多い、と。だけど最近は以前にも増してトークに磨きがかかったのは他人が何と言おうが、注目されているという自負とトークのレベルを落とさずに自己への挑戦をしているからだろうと思います。

氏の生きざまはある意味、強烈で「あの歳になってあそこまで重圧は感じたくない」と思う人もいるのかもしれませんが、人生を最大限エンジョイしているという意味では氏の発言内容は個別問題ですが、見習うべきところは大いにあると思っています。

ただし、このような人気は必ず廃れることになっています。高橋氏の毒舌もピリピリ程度ならいいのですが、毒饅頭に「もういい!」となって人気離散は世の常。そこから推測すると今がピークじゃないかな、という気もします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月22日の記事より転載させていただきました。