Fラン大への進学は1000万円の損

黒坂岳央です。

東洋経済に掲載された記事がSNSで大きな反響を呼んでいる。

賛否両論多くの意見が飛び交う状況となっており、「その通り。4年間のモラトリアムになっているなら学生も親も無駄金を支払うことになっている」という意見や「大学のランクに関係なく、大卒を足切りにする企業がある以上新卒カードそのものに価値がある」という意見も見られた。

Fラン大への進学は1000万円の損失というのは正しいのか?

1001nights/iStock

1000万の損失の内訳

まずは1000万という金額の内訳を考えていく。この数字は大学4年間の間に労働機会を失うことの金額となっている。

大学無償化制度を利用して学力の高くない大学へ進学することで、結局高卒で働くのと変わらない収入、企業への就職となる。仮に年収250万円とすると、大学生の間の4年間で1000万の損失という計算だ。

だが厳密にはこの金額だけでは収まらない。これとは別に大学の学費も必要になるからだ。文部科学省の出している平成30年時点のデータによると、国立大が約250万円程度、私立大学だと文科系で約400万円 理科系で約550万円ほどである。加えて一人暮らしで仕送りを受けるとこの金額はさらに大きくなる。

人によっては1000万円ではなく「2000万円規模のオーダー」になり得る。

それから「海外移住時に学歴は重要で、ランクに限らず大卒の資格を持つことに価値がある」という意見があるが、それは数千万円規模の巨費を投じるリターンがあるのか?本人が将来海外移住する可能性は?何より海外移住で幸せを掴む力があるか?海外移住は日本人なら無条件で幸せになれる裏技的チケットではなく、相応の「実力」が必要だ。諸々の投資リターンを考慮するとどうだろうか。

やる気がないなら大学に行かない方がいい

筆者は日米両方の複数の大学、大学生を見てきた。これをいうと確実に反発が来るだろうが、正直いって向上意欲のない学生は大学にいってもムダに終わる可能性は否定できないと考えている。

自分は工業高校の出身なのだが、クラスメイトは9割が就職して電気工事や塗装、土木系の仕事についた。残りの1割は短大、大学、専門学校へ進学した。一度、進学組と再会したことがある。大学時代にアルバイトで働いた工場に新卒で入り、正社員で同じ仕事をしていたり、無職だったりフリーターバイトだった。これを初めて聞いた時「せっかく高い学費を払ったのにペイできていないのでは?」と当時高卒で働いていた自分は強くそう感じたことを覚えている。

自分が見てきた世間的に「Fラン(便宜上の表現、主観的ではなくあくまで世間的に受けている評価)」とされる大学生の中には、勉強のやる気はまったくなく授業をサボることばかりで派遣で働いたり、地元の中小零細に就職する人も多かった。大学進学における学費やその期間の就労機会損失をペイできる高給を得た人はそれほど多くを見たことがなかった。もちろん、ゼロではない。Fラン大学生の中にもものすごく頑張って奨学金を得て留学したり、良い企業に就職して活躍する人もいるが、そういう人は全体からみればとても少ない。

取り上げた記事の主張の通り、最初から勉強のやる気がないなら無理に大学にはいかない方がいいだろう。新卒カードが武器になる大学は一定水準以上のFランク以上の学校であり、ボーダーフリーな大学へモラトリアム目的で入学しても、結局学費をペイできない可能性は高い。そうなれば自己投資ではなく、単なる浪費になる。それなら1000万をかけて世界一周旅行へでかけたり、それを元手に起業した方が実り多き経験になる可能性は否定できない。

イギリスのことわざに、

You can lead a horse to water but you can’t make it drink.

(馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない)

という言葉がある。本人にやる気がなければ周囲がお膳立てしても意味がないという意味だ。

自分は米国大学留学時期は死にものぐるいで勉強をした。強い向上心があったし、そうしなければ生き残れない熾烈な競争環境だったからだ。一方、工業高校の生徒だった時期はやる気がまったくなく、電気科に入学したが結局電気のことは何も知らないまま卒業した。高校3年間で学力は何も伸びなかった。大学は知力、学力を授けてくれる魔法などではなく、向上意欲のある学生を伸ばす場所に過ぎない。やる気がない人を連れて行っても徒労に終わるだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。