岸田首相、解散に踏み切らず!?

注目された衆参補欠選挙は1勝1敗となりました。予想がどうだったのか知らないのですが、個人的には妥当な結果だったと思います。

長崎は前任の死去に伴うものであり、岸田氏の宏池会に所属していたこともあり絶対に外せない一戦。一方の徳島/高知は前任が秘書へ暴行事件を起こした不祥事辞任による補欠選挙であり、自民党の圧倒的不利は事前から囁かれていたことです。

それでも岸田首相は減税案を提示し、「魅力ある自民党」をアピールしたわけですが、徳島/高知の有権者には「そういう問題じゃない」と一蹴したのだと思います。そりゃそうです。悪さをしたけど飴玉配ってご機嫌を取り繕うなんて子供騙しそのものです。

岸田首相 uschools/iStock

さて、ここからは岸田首相が果たして解散に踏み込めるかという点について考えてみたいと思います。

岸田首相の頭には「もしもこの補選が2勝なら解散カードなくもないな」と思っていたと思います。が、1勝1敗ではあまりにニュートラルで解散に踏み込めません。そもそも解散を本当にしたいのか、という疑問もあるのです。岸田氏の敵は誰なのでしょうか?自民党内の身内なのか、野党なのか、であります。

身内についてはようやく安倍派の内部問題がすっきりしはじめ、対抗馬の芽が出てきてもおかしくないのですが、個人的には飛び出す人がいないように見えるのです。つまり皆さん、「お利口な良い子」なのです。河野さんが飛び出そうとして矢が四方八方から飛んできておとなしくせざるを得なくなったことがトラウマのようになっているのではないでしょうか?

誰しも脛に傷の1つや2つあるものです。マスコミは「出る杭」である有力政治家のあら探しをして叩きます。その点ではマスコミが日本の政治をダメにしたと言ってもよいぐらいであり、岸田さんぐらい真面目であまり埃が目立たない方しかトップに立てないわけです(身内の官邸写真事件はかわいいものでしたが、それでも当時は大問題にしようとしたのがマスコミでした)。

つまり自身が長期政権を狙うにおいて今、どうしても解散をする必要がないようにも見えるのです。対野党で考えるともっとその理由が希薄だとみています。物価も上がっていますが、経済が回復過程にあり、賃金も良好な状態である以上、野党が盛り上がる論点が少なく、むしろ、新興政党の乱立でつぶし合いが起きるとみています。百田さんの新党もXのフォロワーが凄いと話題ですが、百田さんのトークを先日見ていたのですが、切れがないのです。つまり政治家を目指した時点で百田節が消え、味がなくなっていました。そのあたりがプロフェッショナルじゃないのです。

では外部環境はどうでしょうか?経済対策の取りまとめが11月。その後、岸田氏は外交日程が詰まっているとされます。注目は1月の台湾総統選、来年春のロシア大統領選、そして11月のアメリカ大統領選であります。自民の党首選が9月頃とされる中で2024年は世界が動く年なのです。

思い出すのが安倍氏が首相の際、G7ではメルケル氏と並び、一番の古株になり、「日本の首相の名前と顔が覚えられない」というジョークが過去のものとなりました。菅氏は短命で、またあの時代に逆戻りかと思ったのですが、岸田氏は2年やっており、名前と顔も一致しており、とりあえずのアピアランスはあります。難局の2024年の世界外交では岸田氏がうまくリードできれば外部環境的には指導者になれるチャンスはあります(個人の素養は別問題)。

私が見る限り、今のイスラエル問題とすっかり影が薄くなったウクライナ問題で直接的かかわりが薄い大国は日本だけなのです。イスラエル問題は案外、尾を引く可能性があり、それを考えると岸田氏にはチャンスが巡ってきているとも言えます。

経済に関しては2024年はやや逆風が吹くかもしれません。金利上昇と金融政策の正常化になる可能性は大いにあり、その場合、株価が低迷します。一方、欧米の金利がピークアウトから欧米の株価が来年あたりから回復基調に入るとみています。為替についてはアメリカが抱える様々な問題が更に露呈すれば円は買われるでしょう。輸入物価はそれでも引き続き高いため、コストプッシュ型に近い一定レベルのインフレは継続するとみています。

今の政権に経済通が少ないこともあり、「聞く耳」をもつ岸田氏はポジション的には悪くはないわけで、解散を無理して狙うより実績を上げる方に傾注したらよいと思います(個人的に岸田首相が好きかどうかも別問題)。

このまま解散せずに党首選になだれ込む可能性は現時点では否定できないとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月23日の記事より転載させていただきました。