中・高校生におけるコロナワクチン後遺症:副腎機能低下症

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新型コロナワクチン後遺症患者の会のアンケート調査によると、ワクチン接種後に副腎機能低下症と診断された患者が、診断名が記載されている246人のうち7人みられた。

副腎機能低下症は国の難病に指定されており、全国における推定患者数も約1,000人と稀な病気である。副腎皮質ホルモンの欠乏により、易疲労感、全身倦怠感、脱力感、筋力低下、食欲不振、体重減少、精神症状(無気力、不安、うつ)などのコロナワクチン後遺症とよく似た症状がみられる。

以前は、結核などの感染が原因である場合が多かったが、最近は、抗副腎皮質抗体が陽性で、自己免疫機序が原因であることが多い。病気を疑いさえすれば、副腎皮質ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンを測定することで診断は比較的容易である。治療としては、不足する副腎皮質ホルモン(ステロイド)を補充することが必要である。

コロナワクチン接種後に副腎機能低下症を発症した17歳女性の母親の手記を紹介する。なお、手記の公開は、ご家族の同意が得られている。

C美さん(仮名)17歳女性(ワクチン接種時は16歳)

私は、コロナワクチン接種後に病気になった高校3年生の母親です。私が皆さんに伝えたいのは、新型コロナワクチン後遺症で接種から1年弱の間、いまだ体調不良が続いて困っている高校生がいるという事実です。

私の子供は、高校2年生の夏休みにコロナワクチンの3回目を打ちました。学校の友達や先生、おじいちゃんおばあちゃんにコロナを感染させないためです。ワクチン接種後から倦怠感が少しずつ増していくなかで、2週間後に手足に異常が出ました。ペットボトルの蓋が開けられない、勉強しないといけないのにペンが持てない、学校に行かないといけないのに足が動かない…。そのうち、全身にひどい倦怠感が出て起き上がれない状態にまでなりました。

お医者さんに行っても、検査は異常なしで精神的なものでしょうと言われました。ですが私は、どうしても精神的なものが原因で動けなくなったとは思えませんでした。お願いをして大学病院を紹介してもらい、ホルモン検査をしてやっと副腎機能低下症という病気だとわかりました。

子供はコロナワクチンを打つ前は、とても元気で、体育祭の応援団に入ってダンスを踊ったりしているような活発な子でした。やりたいこともたくさんあって、学校では友達にも恵まれて、部活でも部長になり、高校生活を楽しんでいました。そんな子供が、突然手足が動かない、起き上がれなくなるほどの病気になる理由が、コロナワクチン以外に全く思い当たりません。

ワクチンを接種して病気になり学校に行けない日が1ヶ月ほど続いたころ、担任の先生から「このままだと出席日数が足りなくなって留年になる」と言われました。慌てて色々な資料を探したところ、ワクチンを打った後の体調不良は出席停止扱いにできると知り、それを学校の先生に相談しました。それまで私は、学校の先生は味方だと思っていました。子供のために何か良い方法がないか一緒に考えてくれると思っていました。でも、「医者がワクチン後遺症を認めた診断書がないと、普通の欠席と同じ扱いにする」と言い、全く取り合ってくれませんでした。お医者さんに相談すると「ワクチン後遺症を認める診断書は書けない、学校のことは教育委員会に言いなさい」と言われ、教育委員会に相談すると「学校の問題なので学校に言いなさい」と言われました。互いが互いに責任を丸投げして何も解決しませんでした。そして、そのしわ寄せは全部、私の子供にのしかかりました。

「留年はしたくない、でもお医者さんは診断書を書いてくれない。学校の先生は無理してでも学校に来いと言う、出来ないなら他の学校を探せばいいと言う。子供は今の高校を皆と一緒に卒業したいと言う。もう無理して学校に行くしかない」。そして、子供は起き上がるのがやっとの状態なのに、無理やり学校に行かざるを得ませんでした。

家は決して裕福ではないのですが、留年を避けるにはもうどうしようもなかったので、タクシーを使いました。朝、子供をタクシーで学校まで送り、お金を節約するために私は片道50分くらいの道を歩いて家に帰り、子供が帰る時間になったらまた学校へ歩いて行き、タクシーを呼んで一緒に家へ帰る、という生活を1ヶ月ほど続けました。私の足腰はボロボロになり、お金もなくなり、私は限界でした。

そんな私を見ていた子供は、副作用の強い薬を飲んでようやく歩けるようになった身体なのに、「お母ちゃん、一人で行ってみるから休んでいて」と、おぼつかない足で重いリュックを背負い、玄関を出て行きました。私はその後ろ姿を見ながら、動けなくなった自分を責めて泣きました。この手記を書いている今も、その当時のことを思い出すと手が震えるくらい悔しいです。

しかも子供はその時の無理がたたって体調が戻らず、最初のお医者さんの説明では数ヶ月で治療が終わるはずだったのに、9ヶ月経った今もいまだに副作用の強い薬を飲み続けています。せめて、学校がワクチン後遺症を認めて出席停止扱いにしてくれていたら、せめて、お医者さんがワクチン後遺症を認めて診断書を書いてくれていたら、せめて、教育委員会が学校に適切な指導をしてくれていたら、子供も私もあんな無理なことをせず、治療に専念出来て、今頃は薬を飲まなくても普通の生活に戻れていたのではないかと考えてしまいます。

今は患者の会の力添えで、ワクチン後遺症の診断書を書いてもらえることになり、学校も、欠席は出席停止扱いにしてくれました。新しい校長先生の理解もあり、卒業も望めるようになりました。長期欠席でのオンライン授業などによる補習についてはまだ相談中ですが、卒業出来ないのでは?という強い不安感はなくなりました。新しい主治医の先生は、子供にきちんと寄り添った診察をしてくれて感謝しています。

でも、以前の私たちと同じように苦しんでいる生徒さんや保護者が他にもいるのではないかと思います。それまで元気だった生徒さんがワクチン接種後に体調不良で学校を休み、そのまま出席日数が足りなくなり、留年や転校を余儀なくされているのではないか?

ワクチン後遺症を理解されなくて、病院や学校の先生から心無い言葉を投げられたりしているのではないか?実際に、私たちはそれらを経験しました。きつい薬を飲んで無理して学校に登校して、毎日限界に近い力を振り絞って授業を受けているのに、娘が傷つけられる必要がどこにあったのでしょうか。

ワクチン後遺症に理解のないお医者さんからは、検査に異常がないのに手が動かないのはふざけているから、全身倦怠感は心のせい、足が痺れるのは気のせい、何度も心療内科の受診を勧められて、その度に、なぜワクチン後遺症から目をそらして心の問題にするのか、目の前の子供が苦しんでいるのに、なぜその苦しみに寄り添ってくれないのか、なぜ原因を探ろうとしてくれないのか、胸が痛くなりました。何も出来ない自分が悔しくて何度も泣きました。子供はその度に、「お母ちゃん、ありがとう」と、苦しいのは自分なのに私を気遣ってくれていました。

どうして周りの皆のためにワクチンを打った優しい子が、保健室の先生に「病気なら転校したら?」と言われたり、すがる思いで受診した病院の先生から「心療内科へどうぞ」と冷たく突き放されたり、信頼していた学校の先生にすら「保健室にサボリに行くのか?」と、心ない言葉を言われないといけなかったのか。当時の学校の先生も、お医者さんも、教育委員会も、ワクチン後遺症をよく知らないという、それだけのことで、子供がその全てのしわ寄せを受けて苦しんだのは、本当に、言葉で言い表せないくらい今でも辛いです。悲しいです。悔しいです。このようなひどい状況にいる子供が他にもいるかもしれない、誰にも理解されないまま1人で苦しんでいるかもしれない、ということで、私はさらに苦しいのです。

ワクチン後遺症の子供たちが学業に不安なく安心して治療に専念できるように、ワクチン後遺症と気づかれないまま苦しんでいる子供が1人でも減るように、子供の症状を理解されずに悩んでいる保護者が1人でも減ることを願っています。

 

厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の資料によると、これまでに医療機関あるいは製造販売業者から39例の副腎機能低下症が報告されている。決して、少ない数ではない。

国内外から、コロナワクチン接種後に副腎機能低下症を発症した症例が少数報告されている。接種後数日以内に発症しており、また治療に反応する場合が多く、原因も、脳下垂体からの副腎皮質刺激ホルモンの分泌不全によることが多い。なかには、C美さんのように、症状が持続して長期の治療を必要とする症例も報告されている。

ワクチン接種と副腎機能低下症とに因果関係はないのだろうか。ワクチン接種後に、種々の自己免疫様疾患を発症することは稀なことではない。多くは、ワクチン接種で産生された抗体が、自己の抗原と交差反応するためと考えられている。

厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)からは、各種ワクチンにおける副反応の発症数が報告されている。代表的なワクチン接種後自己免疫様疾患として、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、血小板減少性紫斑病の患者数を新型コロナワクチン接種後とインフルエンザワクチン接種後とで比較した(表1)。

表1 新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン接種後にみられた自己免疫様疾患

新型コロナワクチンと接種回数をそろえるために、インフルエンザワクチンは2016年10月1日から2023年3月31日までの接種者を対象にした。

インフルエンザワクチン接種後のギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、血小板減少性紫斑病の発症数は新型コロナワクチンの接種後の発症数と比較して、それぞれ、24%、67%、30%であった。一方、副腎機能低下症、自己免疫性肝炎は、新型コロナワクチン接種後には、39人、6人あるのに、インフルエンザワクチン接種後には1人もいなかった。これらの疾患は、異なる発症機序によるのかもしれない。

mRNAワクチン接種後に見られる自己免疫疾患の増加:新規発症機序の可能性
ファイザーやモデルナ製のコロナワクチンは、人類初のmRNAワクチンということでその安全性が懸念されるが、mRNAは短期間で分解されるので安全性についての問題はないと説明されている。最近、この説明に疑問を投げかける研究結果が報告されて...

ワクチン由来のmRNAは注射された筋肉の他にも全身の臓器から検出される。なかでも、肝臓、副腎の組織濃度が高い(表2)。

接種48時間後における副腎の濃度は、脳の濃度の実に268倍である。各臓器の細胞に取り込まれたmRNAはリボゾームでスパイクタンパクを産生し、産生されたスパイクタンパクは細胞の表面に運ばれて、抗体やT細胞に認識される。

コロナワクチンが投与されると、免疫を担当するB細胞からはスパイクタンパクを認識する抗体が産生される。同時に、表面にスパイクタンパクが存在する細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞も誘導される。このような抗体依存性あるいはT細胞依存性自己攻撃によって自己免疫疾患が発症する可能性が考えられる(図1)。

図1 mRNAワクチンによる自己免疫反応のメカニズム
筆者作成

実際に、新型コロナワクチン接種後に、スパイクタンパクを認識するT細胞によって自己免疫性肝炎が発症することが報告されている。MHCテトラマーを用いて、末梢血と肝臓からスパイクタンパク特異的細胞障害性T細胞が検出されたことから、スパイクタンパクを認識する自己のT細胞による攻撃で肝炎が発症したと考えられた(図2)。同様の方法で、コロナワクチン接種後の副腎機能低下症の発症機序を解明することが可能であろう。

図2 自己免疫性肝炎の発症に関与するスパイクタンパク特異的CD8-T細胞
J Hepatol.2022 Sep;77(3):653-659

mRNAワクチン技術は、新型コロナウイルスのみならず、今後、インフルエンザを初め他の病原体に対するワクチン、更にはがん領域への適用も考えられている。すでに、日本にmRNAワクチンの製造を目指した工場が完成している。

上記のメカニズムによる自己免疫様疾患の発症は、コロナワクチンに限らず、mRNA技術を用いたすべてのワクチンに起こりうることである。

厚労省は、現時点ではワクチン後遺症の存在を認めないという立場なので、C美さん、C美さんのご家族も周囲の無理解に2重の苦しみを味わっている。とりわけ、ワクチン後遺症として国外の文献にも少数の報告しかない病名では尚更であろう。

テトラマー法による抗原特異的T細胞の検出は、筆者も大学時代は日常に用いていた検査法であり、決して難しいわけでもない。ぜひ、この方面の研究の進展を願っている。