見かけ上の低所得の高齢者へ甘すぎる日本の施策
先週に書いたブログです。
日本で言う「貧困世帯」とは数的に言うとほとんどが年金暮らしの高齢者の世帯です。85歳以上の4割がそれに該当しますが、年金の控除額は非常に大きいため、国民年金だけの世帯はどんなに資産があろうがほぼ全員がこれになります(現役で商店などを経営されていて収入がある人を除く)。
そもそも国民年金とは何か。
現行制度は国民皆年金制度の基礎年金部分(1階部分、Basic Pension)に相当。会社勤めではこの上に厚生年金や企業年金が乗ります。
かつてはこんな少額の掛け金でした。
1975年までは月数百円……
労働者を対象とした年金制度(船員保険、厚生年金、共済年金)は昭和20年代以前からあったが、自営業者を対象とする年金制度は無かった。この不公平を是正するため、1959年(昭和34年)、第31回国会に国民年金法案を提出、国民年金法が制定され、適用事務は1960年(昭和35年)10月から、拠出制年金の開始に伴う保険料徴収は1961年(昭和36年)4月から開始された。つまり・・・
国民年金は厚生年金よりあとにでき、商店主など定年がない人たちが孫に小遣いをやる程度の年金制度を作ったわけです。テレビなどで元職人の老人が「年金だけでは生きていけない」というシーンがありますが、そもそも自営業者は国民年金しかなく、掛け金も月数百円から数千円しか払っていなかったわけだから、それで十分な月額がもらえたらその方がおかしいわけです。
いま90歳の人なら60歳までの間に支払った総額はせいぜい数百万円の下の方でそれで月に20万を30年間、総額7200万円くれとか厚かましすぎるでしょう。いまの80代はそれでも払った額の4倍ももらっているのです。
なんと非課税世帯における高齢者の比率は72.5%
関東学院大学経済学部島澤教授作成
このグラフから明らかなように、どんなに現金貯蓄や有価証券、そして不動産があっても現金収入が国民健康保険だけの高齢世帯を「非課税低所得世帯」としているものだから、この人たちへの税金の使う方がヤバいことになっています。典型が給付金だったり医療費だったりするわけですよ。マイナンバーで資産と紐付ければいいのに、野党や左派の反対でここまで来るのに何十年もかかり、さらにまだちゃんと稼働していない。左派の野党支持層がそこだからですね。
一番典型なのが医療費。この人たちは医療負担がたったの10%です。だから肩が凝ると湿布薬をもらうだけで病院に通うし、整形外科など大量の年寄りの寄り合い所で、300円払ってマッサージ受けるだけの人たちで大混雑しています。↓ 厚労省のサイトにありました。
仮に医療負担を3割にしたところで、「3割負担だとサロンパス代が嵩むわあ」と軽症なのに暇つぶしで医者に行く人は減るでしょうが、チリも積もれば山となるとはいえば実はそこのコストはたいして大きくないと思います。
高齢者の医療費で大きいのは高度治療や入院費用です。日本には300〜400万人の寝たきりがいて、この数字は先進諸国ではほかにない異常な事態です。
先進国のアメリカだって平均寿命は日本より10歳短いんですよ。
どうして入院できるのか、それは高額療養費制度があるから
高額療養費(こうがくりょうようひ)とは、健康保険法等に基づき、日本において保険医療機関の窓口で支払う医療費を一定額以下にとどめる、公的医療保険制度における給付のひとつです。
が、これの設定が異様なほど国民年金のみの高齢者に甘くなっている。
まずは70歳未満の現役はというと、年収500万円くらいですと
だいたい月8万円くらいを負担すればそれ以上かかっても戻ってきます。たとえ大手術で2ヶ月入院して300万の総費用で3割負担でも月8万円×2ヶ月で済みます。
ところが70歳を過ぎた上記の国民年金だけの非課税世帯(高齢者の4割)だとどうなるか?
月15000円???!!!
現役が月8万円払うのに、十分な資産もあるかもしれない非課税高齢者は月1万5000円ぽっちで入院し放題なんですよ。
残りは国が払ってくれるので、コロナの時にもあった「完治してるのに引き取り手がなくて延々と入院している」とか北海道で良くある「病気でもないのに冬期は高齢世帯が入院を受け入れて貰ってぬくぬく暮らす」みたいなことが可能になるわけです。70歳以下の住民税非課税者は月3万5400円なんだから、せめて同じレベルにするなら無駄な延命や入院は減るし、さらにマイナンバーと紐付けて貯蓄や不動産がある場合は現役と同じ8万円/月の負担にすれば、医療費はがっちりと減らせます。
これをすると医師会は死活問題なので頑強に抵抗するでしょうが、もうそんなことにはかまっていられないのです、日本。
見かけ上の減税や給付金では踊らなくなって岸田総理の支持率も爆下がりのいま、左系ではない維新や国民民主がこれを言い出さないかと心待ちにしている次第です。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2023年10月30日の記事より転載させていただきました。