「速さ」はあらゆる仕事で最重要スキル

黒坂岳央です。

これまでいろんな仕事をしてきた。若い頃はお弁当屋、スーパー、引っ越し、英会話のチラシ配り、レストラン、和食店、コールセンターである。正社員になってからは通訳、翻訳、経理財務、国際経営企画。起業後も一般的な人より幅広く仕事の経験をしてきたと思う(それが必ずしも良いこととは思わないが)。

肉体労働から単純作業、事務職やクリエイティブな仕事まで経験して思うこと、それはすべての仕事に共通する最重要スキルは「速さ」だと思うのだ。速さはしばしば、質を凌駕する。速さがマイナスに働いた記憶はない。そして今後もそれは変わることはない、というよりますます重要性を高めるだろう。

metamorworks/iStock

速さ=正義

結論として仕事においては「速さ=正義」という図式だと主張したいが、もちろん最低限の質が伴っているということは言うまでもない。

飲食店で働いている時は、カツ丼や揚げ物を担当していたが出すのが遅ければ先輩から怒られる。しかし、作業にも慣れてきて手際がよくなると叱られることがなくなりホッとした。正社員になった後も仕事が速いことは評価につながる。社内資料を翻訳する時は一言一句完璧に作り上げるより、「とにかく次の会議までに仕上げて!後10分!」という状況もあって、急いで仕上げるために昼休みにご飯をモグモグしながら、必死に作業を続けるという場面もあった。質は完璧ではなかったが、とりあえず使える形になったらOKで後は自分もその会議に一緒に参加し、進捗が芳しく無ければそこで自分がフォローに入るという感じで質を補う仕事をしていた。

どんな職種でも「最低限の形にしたらすぐ出す」という仕事は重宝される。完璧主義者にはこうしたスピーディーさは受け入れがたいだろう。まだまだ時間をかけて手直しをして完成度を高めないと居心地の悪さを感じてしまう。「自分のペースで仕事をができる職場へ」といって去っていく人も見てきた。だが厳しいことをいうと「自分が快適な速度で進む」のではなく「周囲が求める速度で進む」のが理想のビジネスマンである。

仕事においては速さは正義であるため、顧客が求める水準を素早く理解しその水準に質が追いついたらすぐに形にして出す。フォローは後から、というケースが多い。

クリエイティブな仕事も速さが最重要

動画制作、記事執筆、デザインなどのクリエイティブセンスが求められる仕事も速さが最重要スキルとなる。全部自己完結するならいいのだが、時には誰かと協業で作品を作ることもある。たとえば書籍を商業出版する時は編集者と一緒に進めるし、動画制作なら素材や構成、編集のやり取りが入ることもある。

そんな時に意識するべきは、とにかく自分のところに来るボールは1秒でも早く投げ返すということだ。「こちらを◯日までにお願いします」と投げられたら、必ず納期より1日、2日早くボールを返す。これは特に取引が始まった初期の頃は極めて重要で「仕事が遅い人」という印象を与えると次から仕事は確実に減ってしまう。「あの人は仕事が遅いので、この急ぎの案件は別の速い人に」となってしまうからだ。

逆に仕事が速ければ急ぎの案件がどんどん集まる。加えて取引の初期の頃はお互い成果物のイメージがズレてしまうことはよくあることなので、全体の10%も進んだら素早く相手に確認をする。「このように作っていますが、方向性はあっていますか?」と尋ねてずれていれば即修正することで傷が浅い内に正しい軌道に戻せる。これが仕事の終盤で作り直しとなると納期に間に合わなくなる上、相手に余計な不安を与えてしまう。

加えてこちらの落ち度で謝罪をしなければいけない場合なども速さは武器になる。完璧に対応が終わってから「申し訳ございません」というより、落ち度が判明した瞬間に謝罪し、その後は後日検討して対応しますと伝える。顧客も素早く対応してくれたことに満足し、それ以上クレームの悪化を防ぐことができる。

高いスキルよりコミュ力が大事

昨今、フリーランスになりたいとか副業をしたい人は増えている。筆者も関連書籍を出版しているということもあり、時々相談を受けることがある。多くの人は「起業したいが自慢できるほど高いスキルがないのが不安」というが、自分で事業をする上ではバカ高いハイスキルよりも仕事が速い方が圧倒的に強い。そして仕事の速さは意識と創意工夫で誰でも作れる。

「それなら他の人はとっくにやっているのでは?」と思うかもしれないが、そんなことはない。自分はフリーランサーに仕事を発注してプログラミングなどをしてもらう立場なのだが、コミュニケーション能力に難がある人は大変多いと感じる。

・まともに返事がない
・納期を過ぎてもお構いなし
・聞かれていることに答えない

こういう当たり前のコミュニケーションができない人は世の中、驚くほど多い。なので、こちらの頼んだ通りにやってくれるだけでも「おお、この人いいな。次もお願いしたい!」と感じてしまうほどである。これに速さが加わればそれだけで大きな差別化になる。自分も今付き合いのある相手は全員が仕事の速い人だけである。

自分が会社員やパート・アルバイトの立場では分からなかったが、個人で勝負する世界ではタレント業や一部の天才でない限り、原則仕事は他人と奪い合いという本質がある。どんな仕事でも大抵自分の代わりなど他にいくらでもいる。だからこそ仕事は速くこなす。それだけで「他の人ではなくぜひあなたに頼みたい」と言われる人材になることは十分可能なのだ。

 

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