SDGsと企業による世界市民社会の建設

国民経済の枠が崩壊し、真にグローバルな経済が成立するとき、国民経済を前提とした国民国家も崩壊して、一つの世界市民社会が成立し、人類に等しく備わる理性による支配が実現するであろう。そう信じることは、歴史の現段階では、妄想にすぎないが、地球上の人間の生活、それが作り出す人の交流、その結果生じる文化的諸現象と経済活動、それら全ての分野におけるグローバル化の進展は、間違いなく、国民国家の枠を徐々に侵食していく。

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情報技術の進化によって、SNSなどの情報基盤を通じて地球上の人間が交流でき、商品や情報を交換できるようになったことは、これまでの人類の歴史を画する全く新しい社会変革のあり方を予想させるものだが、これらの情報基盤は、全て企業の経済活動によって創造されたものである。つまり、グローバル経済の担い手は、国家ではなく、企業なのである。

実際、国連のSDGs(Sustainable Development Goals)、即ち、持続可能な開発目標は、社会的問題の解決における企業の役割を前提にしたものである。その目的には、「人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒やし安全にする」とあるが、まさに理性が支配する世界市民社会の実現へ向けた重要な第一歩として、国家の枠を超えた普遍的なものとされ、故に、各国政府の主体的関与を求めるだけでなく、当然に企業の積極的な関与を期待したものだと考えられていて、事実として、多くの企業が主体的関与を表明しているわけである。

企業が積極的に関与しようとするのは、そこに収益機会を認めるからである。地球上から貧困を撲滅することによって創造される消費需要が巨大なものであること、また、紛争当事者に武器を売ることによる利益に比して、地球上から紛争が一掃されることによって活性化する人間活動が生む利益が圧倒的に大きいこと、地球の生存環境を安定させることによって事業の予測可能性を高めることが利益になることなどは、どの企業にも直ちに理解される。もともと、SDGsは、そのような企業の合理的経営行動を予定したものである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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