黒坂岳央です。
グローバル、日本でのスマホの出荷台数が落ち込んでいる。
Counterpoint Researchによると、2023年のスマホ出荷台数は「過去10年間で最低」と発表。また、日本ではMM総研の2023年度上期の国内携帯電話端末の出荷台数の調査結果で、2000年度以降の統計で最小となったという。
SNSでは「日本が貧しくなったから。円安になったから。アメリカなど海外は通貨高で買いやすいのに」などと悲観的な反応が見られたが、スマホの出荷台数の低迷は日本に限った話ではない。中東、欧州、アジア太平洋地域などでも大きく低下していることが統計からわかっている。成長著しいインドも例外ではない。
なぜスマホは売れなくなったのか?
理由1.高インフレ
モルガン・スタンレーのエコノミストは世界的なインフレが売上不振の理由の一つだとあげている。
物価インフレが起きると、生活必需品や食品も高騰するので生活が苦しくなる。インフレに連動する資産運用をしている人はダメージどころか資産が増えている一方で、paycheck to paycheckでギリギリ食いつなぐ人にとっては強烈な打撃になる。
インフレの影響はスマホにも及ぶ。スマホは数多くのパーツとテクノロジー、生産者の人件費が結集したデバイスであり、そのすべてがインフレの影響を受ける。結果、スマホの販売代金も高くなってしまう。また、ハイテク化の影響も受ける。
初代iPhoneは499ドルだった。最新のiPhone15は799ドルからと高騰している。特に日本では円安が進行したことでiPhoneは高値の花になってしまった。買えるのは12万円からで、高いモデルは20万円を大きく超える。これでは高校生や大学生のバイトどころか、月給を稼いでいる社会人でも気軽に買える人は少ない。
理由2.テクノロジーの頭打ち
同氏の分析によると、グローバルでのスマホの平均所有期間が延びており、「3年以上スマホを使い続ける人の割合」は増加しているという。
これはインフレで買い替える余裕のある人が減ったという事情もあるかもしれないが、同時にテクノロジーの頭打ちも原因としてあるだろう。現代はまだまだ5Gの黎明期で、カメラ性能以外に強烈に買い替えを促す目を引くイノベーションが見られないという。細かいことをいえば、折りたたみスマホが出たり、Google Pixel8では音声消しゴムなどのAIが充実しているものの「今手元にある十分使い続けられるスマホから乗り換えてでもほしい」という引力にはなっていないだろう。
筆者はテクノロジー好きで、仕事に欠かせず、そして「仕事道具は先端に触れ続ける」という信条があるので高頻度で様々なデバイスを買い替える質だ。しかし、それでも「処理速度向上」というだけではぜひ買い替えたい!とまでは感じないこともある。特にスマホは性能と熱問題はトレードオフの関係もあり、省電力高性能を実現するようなチップの革新的イノベーションがない限りは高性能は熱問題につながり、サーマルスロットリングが起きてしまう。
理由3.クラウドサービスの充実
この理由3は同氏ではなく、筆者の独断と偏見による見解だが、理由の1つにはクラウドサービスが充実しているというのもあると思う。
スマホはセキュリティアップデートを受け、とりあえず使える状態ならクラウドアプリの先端テクノロジーを活用できる。YouTubeやChatGPT、Google検索などはスマホ本体内でアプリを駆動しているわけではなく、オンラインで展開するサービスであるため、スマホはあくまでクライアント機という位置づけである。
「今すぐ買い替えたい!」と強く感じてしまうような低スペックマシンでなければ、特段困ることはないだろう。スマホ本体性能に由来する要素はバッテリーとかカメラ、処理速度くらいで多くの場合はクラウドサービスでニーズを満たせてしまう。
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以上の理由からグローバルでスマホが売れない時代になってきた。世界的インフレ懸念が後退しても大きな買い替え需要が起こるとは限らない。今後、再び強い購買意欲が生まれるスマホは登場するか?もしくはスマホではないウェアラブルデバイスの登場なのか?今後も目が離せない展開になりそうだ。
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