ワーキングホリディ バンザイ

ワーキングホリディ制度という名を聞いたことがある人は多いと思います。海外で特定期間、働きながら海外での生活を体験するというものです。期間は概ね1-2年、年齢制限があり、だいたい30歳が目途になります。職種は資格などを求められる制限職種を除けば原則的には制限なし。時と場合によっては移民への道も開けます。

バンクーバー Oliver Crook/iStock

歴史も長く、1980年のオーストラリアを皮切りに外務省のウェブサイトによれば現在29カ国と提携しています。一応、二国間双方向の関係なので人数的には政府間調整もあり、国により大きく違います。枠が大きいのが韓国と台湾でそれぞれ年間1万人。カナダは6500人ですが、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、デンマーク、スウェーデンのように枠制限なしという国もあります。

1980年は私が大学に入学した年でカナダは86年からワーホリ制度が始まっています。人数枠は結構な頻度で見直されており、多い年には1万人だったこともあります。最近、英国がワーホリの制限枠を1500人から4倍の6000人に増やすと発表しました。英国はワーホリとしては人気の高い国でしたが、希望者が枠に対して10倍ぐらいあり、狭き門でありました。ちなみにアメリカはこの制度はありません。

基本的には英語圏が人気ですが、韓国は「別腹」のようです。私の周りにも韓国語を流ちょうにこなす日本人の方を散見しますが若い日本人女性が韓国に強い興味を持っているのは新大久保の韓国ショップ街を見てもお分かりいただけるでしょう。

私は92年にカナダにきて以降、ワーホリさんとの接点が切れたことがほとんどありません。例えば私の会社の駐車場管理部門や今は無きカフェ部門では一時期ワーホリさんを常時7-8人雇っていましたし、現在支援しているホームケアの会社ではワーホリさんは重要な戦力です。私が会長を務めるNPOの運営においてもワーホリできた方々がボランティアとして参加してくれていますし、日系の様々なイベントに参加すれば必ずといってい良いほどワーホリさんたちがお手伝いしています。

仕事もどこまで選り好みするか次第ですが、1年間の生活という観点からはなにがしか見つかります。ただ、残念なことに男女比で見るとざっくりではありますが、少なくともカナダの場合、2:8前後ぐらいで女性の比率が極端に多いのが特徴です。

ワーホリの方の採用の際に「Youはなぜカナダに?」と聞けば昔からの憧れという典型的理由に加え、人生30歳という節目で一度だけのチャンスを利用したかった、仕事で外国人との接点が増える中でやり取りできない自分がもどかしかったなど前向きな理由の方が大半かと思います。

なぜ、女性の方が多いのか、いろいろ考える限り、基本的には仕事に関しては男性の方がコンサバなのだろうと思います。男は働くものだ、というイメージがあり、外国でワーホリで1年間自分磨きの旅に出るなどというのは再就職の際に絶対に不利になる、と思い込んでいるわけです。男性が転職する際にも今の仕事から違う仕事に転じるにあたりシームレスに近い状態で転職する方も多いわけです。金曜日までは前の会社、月曜日から新しい会社、といった感じです。男性はある意味、せっかちなのかもしれません。

その点からするとワーホリに限りませんが、女性の方が自由奔放、自分探しをしっかりするタイプの方が多く、潜在的には彼女たちの方が案外、広い視野をもった能力を持っているのかもしれません。ただ、30歳前後で再就職となるとどうしても資格を持った方で帰国後も再就職しやすい環境の方が多いのでしょう。看護師さんなどスキルをお持ちの方が当地に来るのも再就職がしやすいことがあるのだと思います。

ワーキングホリディに限らず、日本人が海外の個人旅行を始めたのもその頃。「地球の歩き方」が発刊されたのが79年で私はまさにそれを片手に海外旅行を満喫していました。欧州編は大変役立ち、素晴らしいナビゲーターでありました。その「地球の歩き方」は長らくダイヤモンド社発行でしたが不振となり、装いを新たに学研の子会社として再スタートを切っています。

日本は島国故に海外を見聞するのはとても意味あることです。明治維新の頃、多くの日本人が欧州を目指し、そこで数多くの発見や気づきがあったことから近代日本における開眼となったのは言うまでもありません。西郷隆盛が鎖国を続ける朝鮮に「このままではロシアに取られる」という危機感を持ち、同国に開国を迫るという話は黒船におののいた時から実に短い期間での大転換だったとも言えます。

本心を言えば男性がもっとこの制度を利用できればよいと思います。1年間フラフラしたら再就職は絶対に出来ないと思うのは逆に言えば自分の仕事のスキルに自信がないということです。採用する側も「1年もほっついた洋行帰り」という妬み交じりのネガティブな評点をする狭い心を改善すべきでしょう。

私の周りには80年代にワーホリで来て居ついた男性の仲間が沢山います。そして彼らは一様にしっかりと資産を得、仕事を持ち、ワークライフバランスをエンジョイしています。そして皆、一過言ある人は多いと思います。正直、ウザい人もいますが、それは日本国内でも同じでしょう。

せっかくの制度、利用できる人はぜひ検討されたら良いと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月12日の記事より転載させていただきました。