日韓関係に改善の兆しはあるのか?

日韓関係に改善の兆しはあるのか、という問いに多くの皆さんは超否定的スタンスにあると思います。私も日韓が日米の様な関係になるとは逆立ちしてもないと思いますが、通商、人流など表層的な交流とビジネス関係の緊密度は姿勢次第であり得るとみています。なぜ、日韓関係が悪かったのか、現在はどうなのか、そのあたりを探ってみたいと思います。

5月大韓民国のソウルを訪問した岸田首相

先日招待された韓国系ビジネス団体のクリスマスパーティー。200名以上参加するこのパーティーは私は2度目の参加ですが、日本人は他にいません。昨年春に韓国系団体としては最大級のこのグループをある韓国系カナダ人から紹介され、接点を持ったところからスタートしています。私のポリシーは好き、嫌いににかかわらず、コミュニケーションを絶やしてはいけないというスタンスです。他に誰もやらない、興味がない、声がかからないなら私がやるしかないわけです。

韓国総領事も出席していましたのでいつものようにご挨拶に行きましたが、ちゃんと私を覚えてくださっていて、民間ベースでの交流をしていることに謝意を頂いています。同席になった韓国の半官半民の貿易調査機関の所長ともいろいろ話が出来たのですが、感覚論として韓国側から見た日韓関係は大きく改善しているとのことでした。また、私が日本のビジネス団体として来ていることが会場で紹介されたこともあるのですが、何人もの参加者が日本語でいろいろ声をかけてくださいました。日本人がポツネンといても違和感はなかったです。返礼として私が会長を務めるNPOのクリスマスパーティーに去年に引き続き、3名ほど自腹でご招待します。こうやって交渉ルートや情報ルートを開拓することでいざという時の対応の幅ができるのだと考えています。

なぜ、お前はそこまでするのか、と言われれば私の韓国側のカウンターパート(交渉相手)が自称「韓国の民間大使」であり、彼とうまく立ち回りをしなくてはいけない役回りだからです。そこにはヒストリーがあります。バンクーバー近郊でかつて慰安婦像建立問題が起きた時、私が日本側の最前線で戦った一方、彼は韓国側の首謀でした。つまり完全なる敵対関係。その時の慰安婦像問題は我々日系の全面勝利でしたが、その後の処理を含め、後味が非常に悪く、どん底に陥った関係改善を図ることが一つの課題でありました。

そんな中、BC州の台湾系議員の仲介を通じて彼との関係改善が急速に展開、結局、その後、個人的付き合いを含め、今ではよく連絡を取り合っています。

私は日韓関係が悪いひとつの理由は「似た者同士」のところがあるだとみています。そして過去のことに固執し、そのイメージを引きずっています。作られたイメージはなかなか修正できないのですが、世代が2つぐらい若い人たちになるとだいぶ変わります。また日本人がもつ韓国のイメージは経済や社会的格差の意識が多少なりとも影響しているのですが、今世紀に入ってからの経済格差は縮まり、一部の指標では日本の上をいくものもでてきています。つまり「似た者同士」の上から目線だったのものが本当の意味での「似たレベル同士」に変わりつつあるのでしょう。

私は冒頭、日韓関係は日米関係のようにならないと申し上げたのは日本とアメリカは戦後の「舎弟関係」的スタートのち、横綱と小学生のような体力差を踏まえ、のび太とジャイアンの様な親密さを築き上げたと思っています。一方、日韓関係も舎弟関係に近いとみています。ところが韓国と北朝鮮も兄弟で北朝鮮が兄役。なので韓国は劣等感からの脱却意識が今に至っているのだと思います。日本にたてつくのも日本が相手だからできるのであって、アメリカや中国にはなかなかできません。

もちろん日韓関係は未だに紆余曲折、3歩前進2歩後退です。例えば元慰安婦による訴訟で11月23日、韓国高裁が日本政府の賠償責任を認めました。国際法上は「主権免除」、つまり被告が国家やそのその下部組織の場合には外国に裁判権は無いという大前提があるにも関わらず、高裁は「主権免除」の例外判断がふえていることを論拠の拠り所としました。こういうのを「結論ありきの論理構成」というのです。この判断は原告も勝つと思っていなかったのでびっくり、日本政府は怒り心頭、上川外務大臣が韓国の外相に厳しく迫りました。今回の高裁の判事の様に公平に物事を判断できない不満分子はたくさんいるということです。

よって日韓関係は簡単ではないし、来年の韓国総選挙の結果次第では尹錫悦大統領の立ち位置にも影響が出るでしょう。ただ、私がカナダで見る限り、韓国の日本に対する国民感情は少なくとも今は順風です。安倍元首相がいみじくも述べたように日韓関係が未来志向あるべきということは重要です。多くの日本人女性が韓国のファンとなっていることは彼女たちこそ、民間外交官であるのです。これは尊重すべきです。

今後も両国間に問題が生じたならばそれは当事者が責任をもって解決し、メディアが必要以上に煽り立てることを避けるのが成熟国としての立ち振る舞いだろうと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月27日の記事より転載させていただきました。