政治家言葉がモヤモヤしてしまう理由

尾藤 克之

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政治家言葉を耳にすることがあります。よく使われるのが「遺憾の意」です。「心残りであること」「残念に思うこと」が本来の意味です。なぜ政治家言葉を使いたがるのでしょうか、また政治家言葉はなぜわかりにくいのでしょうか。

政治状況を端的にあらわす遺憾

「遺憾」は政治家特有の表現として認識している人も多いでしょう。「遺憾」は政治家の決まり文句に近く、誰もが使用しています。「そのように言っていれば間違いない」という趣旨で使われているようにも思います。

「遺憾」の言葉は真意を隠しているように相手に伝わります。そのため一般的には好感をもたれません。わかりやすい言葉に置き換えることも必要ではないかと思われます。

「こうした事態を引き起こしたことは極めて遺憾」「国民の皆様にご迷惑をおかけしたことは甚だ遺憾」という言葉を耳にすることがあります。まるでテンプレートに貼り付けた定型文のようにも聞こえます。

「遺憾」は国民(有権者)に対して「残念に思うこと」を表明していますが、事態を引き起こしたことに対する責任は曖昧になったままです。「遺憾」という言葉は非常に使い勝手のいい便利な言葉で、政治家が責任を放棄しているように見えるのは私だけでしょうか。

「遺憾」以外にも責任を曖昧にする言葉にはある特徴があります。

例:なんらかの疑惑がスクープされ追及を受けている。

  1. 関係各所と検討し見直して参りたいと考えております
  2. 本件につきましては前向きに検討して参ります
  3. ご批判を踏まえ、一旦立ち止まります
  4. ご意見は真摯に受け止めたいと思います
  5. 批判につきましては厳粛に受け止めます

1~5に関しては、国会答弁などでもおなじみです。すべてゼロ回答で結局は何もしない場合に便利です。使用される局面は「ほとぼりが冷めるのを待つ」状況です。

政治の場面では許されるかもしれませんが、取引先や上司に使ったら大変なことになりそうです。勇気のある方は、是非、上司やお客様に使用してみてください。

ほかにもある政治家言葉

政治家言葉で物議を醸した事例も存在します。汚染水受け入れ可能性について「東京電力福島第一原発の処理済みの汚染水対策の所管は環境省でない」との小泉進次郎環境相(当時)の発言が物議を醸したことがありました。

これに対して、日本維新の会の松井一郎代表(当時)は、「将来、総理を期待されている人が『所管外だ』とか、そういうことで難しい問題から批判をそらすようなのは非常に残念だ。真正面から受け止めてもらいたい」と指摘します。

「所管」には「権限をもって管理すること。また、その範囲」とする意味がありますから、「管轄外、担当外」であることを示唆したものと考えます。

その後、小泉氏は「軽々に所管外の者が発言することで、福島のみなさんを傷つけることはあってはならない」との発言もされますが、「所管外の者が発言する」ことと「福島のみなさんを傷つけることはあってはならない」は異なる文脈ですから解釈には無理がありました。

政治家が言葉を使い分けることは大切なスキルであることは言うまでもありません。しかし、有権者にとって裏切られたような印象を残すことは好ましくありません。信頼感が揺らいで政治不信につながる危険性があるからです。言葉の解釈で押し切っても有権者は納得しません。政治家の説明は具体的でなければ説得力がありません。