人はなぜ誹謗中傷をやめられないのか?悪口は悪魔の呪文

最近、目にすることが増えた誹謗中傷の文字。著名人に対する誹謗中傷が起因となりに議論が深まりました。

しかし、被害に遭うのは著名人ばかりではありません。今では、一般人が嫌がらせを受けるケースも増えています。問題は深刻化するばかりです。

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妬みは身近な対象に燃え上がる

自分にないものを他人が持っているとき、または取り残されてしまうとき。欲しいと思っていたものが手に入らなかったとき、猛烈に「怒り」「悲しみ」「不安」を感じることがあります。これらの感情のことを「妬み」と言います。

人の行動は情動(EQ/Emotional Intelligence Quotient)による影響を受けます。高EQは望ましい行動を導き出しますが、低EQは望ましくない行動を引き起こします。

EQ理論の提唱者でもあるピーターサロベイ博士(第23代イエール大学学長)らが中心となって発表した「The psychology of jealousy and envy.」によれば、「妬み」は主に「怒り」「悲しみ」「不安」の3つの感情から成立することが明らかにされています。

「妬み」を分かりやすいケースに置き換えてみます。ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ウォーレン・バフェットらは世界有数の大富豪ですが、彼らを妬む人は少ないと思います。あまりにも自分からかけ離れた存在だと「妬み」の感情は湧きません。じつは、「妬み」の感情は身近な存在に対してスイッチが入るのです。

社内の人事が発表されると、文句を言う人がいるものです。昇進・昇格は「妬み」の対象になります。

「無能なゴマすり野郎のくせに!」
「たまたまおいしい案件にありついただけ!」
「あんなヤツが役員になったら会社がダメになる!」

妬みはとどまることを知りません。

容姿や経歴も「妬み」の対象です。旧帝大卒でイケメンの「拓哉さん」が入社してきました。女性社員は羨望のまなざしです。男性社員は面白くありません。「Aさん、カッコいいか?」「あいつ調子にのってないか?」と同調を求める人が増えてきます。ところが、同調する人も「妬む人」ですから、人間関係は最悪になります。

「妬み」の愚かさに気付いた人は、そのような場から離れていくでしょう。妬みで悪口を言っていることが広まり、いずれ、そのような人たちは悪口を言われる存在に成り下がり、スポイルされていきます。人の成功を妬んでばかりいると、自分に力を注げなくなります。これは当然の結果といえるでしょう。

人の不幸を願う感情とは

妬む感情が増大すると、人の不幸を強く願うようになっていきます。不幸が降りかかるように、失敗するように願うようになるのです。これは破壊的な感情であることを理解しなければなりません。妬みを抱いたところで状況が改善することがないからです。嫉妬心を増長させることにメリットなどありません。

あなたは充実した日々を送っています。家庭も満ち足りた状態です。おそらく、他人を妬み、誹謗中傷をすることなど考えもしないはずです。あなたが他人を妬み、誹謗中傷をやめられないとしたら、自らの人生が満ち足りていないことを認めているようなものです。

妬みや誹謗中傷は次第に「快楽」へと変化し、「幸福感」を感じるようになります。おいしいものを食べると「満足感」を得るのと同じ仕組みです。ところが、より強い「満足感」を得るように、刺激の強いものを求めて、「誹謗中傷の量」が増えていきます。この連鎖に気付かないとエスカレートして、頭の中は「ネガティブ思考」に染まります。

この連鎖の仕組みを理解しない限り、行動を改めることはできません。誹謗中傷は不幸になる悪魔の呪文であることを頭の片隅に入れておきたいものです。