薬価も、診療報酬もすべてを決める「中医協」を完全理解する

厚生労働省 SakuraIkkyo/iStock

薬価も、診療報酬もすべてを決める「中医協」とは?

とある会議が開かれていると想像してみてください。

そこにはレストランの経営者の代表やコックの代表、さらには飲食店に食材を納入する業者の代表が集まっていています。

議論のテーマは、全国のお店で出す料理や飲み物の値段について。「今年のGDPの伸びは●●%だから、ビールの値段は●●円にしよう」とか、「今年はフレンチレストランが儲かっていたから、来年は日本料理屋の利益が出やすいようにしよう」「いやいや、それだと和食ファンが困る…」など、喧々諤々話し合っているわけです。

不思議な会ですよね。だって、料理や出す飲み物の値段はお店が自由に決められるものであり、基本的に、どこかの会議で決まったものを守らなければならない決まりはないからです。

ところが、それが行われている業界があります。医療の世界です。

医療は「医療保険」という、市民がそれぞれお金を負担して運営する保険制度のもとでサービスや医薬品が提供されています(自由診療は除く)。

このとき、日本全国どこにいても、サービスや医薬品はできるだけ同じように受けられなければ、平等性・公平性が失われてしまいます。ですので、医療者や保険者の代表が集まって会議を行い、提供される医療サービスや医薬品に、全国一律の値段を決めているのです。

その値段を決める会議体が「中央社会保険医療協議会」です。長い名前なので、「中医協」という略称で呼ばれることが多いです。

メンバーは、医療保険者(皆さんの給料から保険料を天引きしたものを預かっている人たちの代表)や医師、薬剤師、歯科医師の代表、さらには医療機関が作る団体の代表や公益代表(学者など)です。

この会議体で決まる価格設定は、患者に提供される医療内容に影響することはもちろんですが、医療提供者側やビジネスサイドの動きにも大きな影響を与えます。

せっかく革新的な医療サービスを開発したのに、すごく安いお値段をつけられたら、提供すればするほど赤字、ということにもなりかねません。

逆に、あまり高い値段をつけられると、世論から「儲けすぎ」と批判が高まったり、サービスを受ける人がすごく限られたりしてしまうこともありえます。

その意味で、ここで決まる価格設定は、日本でどのような医療が提供されるかのトレンドに大きな影響を与えるわけです。

医療の分野でビジネスを行ったり、これから参入を考えたりしている人にとってはもちろんのこと、医療保険領域で政策を提言しようと考える人にとって、この会議体に関する理解は非常に重要になります。

そこで今回は、「中医協」の年間の動き、意思決定のタイミング、それに影響を与える人々について徹底解説し、意思決定に影響を与えるためにどのようなルートがありうるかを紹介します。医療業界、製薬業界の方は必読の内容です。

(この続きはこちらのnoteから)

(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。