なぜ欧州で極右政党が大人気になっているのかを日本人は何も知らない

2023年11月22日に開票されたオランダ下院総選挙において、反移民、反イスラム、反欧州連合(EU)を掲げる「自由党(PVV)」が事前の予想を覆し第一党となりました。多くのメディアはこの政党を「極右」と呼んでいます。

オランダ自由党(PVV)党首・ヘルト・ウィルダース氏 同氏Xより

2023年12月8日に発売になった私の新作書籍『世界のニュースを日本人は何も知らない5』 でも解説していますが、オランダ国民がこの様な過激な反イスラムを掲げる政党を支援しているのは難民問題が背景にあります。

EU加盟国が結ぶ国際条約「ダブリン規約では難民は到着した最初の加盟国で審査を受けることになっています。

ところが難民の数が多いためEU諸国は難民を押し付けあっているのです。難民は鉄道やバス、徒歩などで勝手に移動してしまいますが、ベルギーやドイツはそれをスルーでオランダに難民を送りつけます。無賃乗車に目をつぶる場合すらもあります。

欧州は言うこととやることが違う国が多いのです。

オランダ政府によれば2023年の難民申請者は7万人を超える見込みです。九州ほどの面積で人口が日本の8分の1の小国には大変な負担です。

日本なら年56万人が来る計算になります。

収容センターは満杯なため政府は豪華クルーズ船を用意したほどです。路上で寝ている人までいました。

上陸した難民には政府が宿舎や生活費を保証しなければなりません。審査は一年以上かかる場合もあります。

その間の滞在費は皆政府が負担します。

難民認定が下りれば家族を呼び寄せることになるので住居や医療、教育、生活費を保証しなければなりません。

言葉がわからないので多くの人が働けません。出身国の公用語すら分からず、方言や部族語しかわからない人がいます。オランダ語や欧州言語は彼らの母語とかけ離れているので、語学学習も簡単ではありません。

オランダの教育も受けていないので資格もありません。そもそも学校に通ったことがなかったりします。

本屋がひとつもない地域から来る人、水洗トイレを見たことがない地域から来る人もいます。女性を殴るのが当たり前、子供は労働させて当たり前という国から来る人には、オランダのみならず先進国の常識や法令を一から教えなければなりません。言葉がわからない人にどうやって教えるか。これはとても大変なことです。

出身地のギャングや宗教の抗争をオランダに持ってくる人もいます。婚前交渉した娘に火をつけたり硫酸をかたりする親がいます。女子割礼のために自宅で女児の性器を切り取ってしまう親がいます。

やってはいけないといっても、言葉がわかないので大変なのです。

彼らが納税者になるまでは大変な時間がかかります。働けるようになるのは次世代ということもあります。

ずっと生活保護という人もいます。それも一人ではなく、高齢の家族や子供もいるのです。

紛争地や途上国出身の人には精神疾患、病気の人、障害がある人もいます。その治療費も国が負担します。

オランダは欧州で最も税金と物価が高い国の一つです。建ぺい率や日照権、景観維持に日本よりも遥かに厳しいので、新築の建設許可がなかなかおりず、元々狭くて人口密度の高い国ですから、住居も不足気味。家賃が高額なオランダの有権者の少なからずが難民支援の負担を快く思っていません。

地元の人でも賃貸を探すのは大変で、家賃は東京よりもずっと高いのです。例えば54平米の1DLKの家賃は30万円です。これは決して超高額な物件ではありません。

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でもいきなりやってきた難民は、政府が負担する宿舎に無料で滞在できて、5つ星レベルの高級クルーズ船に滞在する人もいるのです。

オランダ連立政権は2023年夏には移民政策を巡り合意がまとまらず崩壊しました。

有権者は、自由党の過激な反イスラムの主張に賛成しない人も多いですが、難民の受け入れ数などを制限する提案には賛成しました。自由党の社会政策や経済政策は極右とは言えないという有識者も少なくありません。

欧州はどこも財政難で福祉政策の費用はカットされています。インフレ率が高い一方で給料は上がらず、光熱費は数年前の倍以上になっています。一般家庭だと光熱費に10万円近く払う場合もあります。

欧州の有権者は密かにオランダの自由党のような党を支援したいと考えている人もいるのです。

日本に50万人を超える難民が押し寄せたら、日本人は難民の数を制限しようという「極右政党」を支援しないと言えるでしょうか?

そしてこの様な政党は、従来型の極右と同じなのかどうか?極右とは一体何を指すのか?

日本の方々に議論していただきたい点です。