仕事は一気に片付けるより、毎日少しずつやるほうが早い(滝川 徹)

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30分〜数時間かかる「一つの仕事」は一気にまとめて1日で終わらせるほうが効率的。そう考える人は多いのではないでしょうか。

しかし実は、一つの仕事を30分に小さく区切り、毎日30分ずつ、数日に分けて取り組む方が圧倒的に早く終わる。そう語るのは現役会社員・時短コンサルタントの滝川徹氏です。

今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より、その理由と解説を、再構成してお届けします。

時間を制限すると仕事が圧倒的に早く終わる

たとえば数ページに及ぶレポートを書くことになったとする。30分かけて1ページ書ければ、1時間で2ページ、2時間で4ページ書けると思うかもしれない。しかし現実はそう単純には進まない。

ニューヨークタイムズベストセラー作家のグレッグ・マキューンは、原稿を2時間で2ページ仕上げることができるが、4時間さらにがんばっても3ページしか書けないと語る。せっかくなので、彼の例を使って簡単な頭の体操をしてみよう。

グレッグの執筆量は2時間で2ページ、4時間で3ページだという。彼が毎日4時間原稿を書くとしたら、12ページ書きあげるのに4日間・16時間かかる計算になる。一方、毎日2時間だけ取り組んだ場合はどうだろう。同じ12ページを書きあげるのに6日かかるものの、執筆時間は12時間ですむ。1日に取り組む時間を制限しただけで、4時間も節約できたことになる(この効果を以後「圧縮効果」と呼ぶ)。

圧縮効果は原稿の量が多ければさらに大きくなる。たとえばグレッグが120ページ執筆するとしよう。1日4時間・3ページ取り組む場合、書きあげるのにかかる時間は40日・160時間の計算になる。一方、毎日2時間・2ページだけ取り組んだ場合は(60日かかるものの)120時間。その差、つまり圧縮効果はなんと40時間だ!

このように圧縮効果は原稿量・作業量が多くなるほど大きくなる。ということは時間や労力がかかる仕事ほど、1日に取り組む時間を制限したほうが結果的に所要時間が短くすむということになる。子供の頃の夏休みの宿題はやはりまとめて終わらそうとすべきではなかったのだ。

1回に取り組む作業時間は30分に制限しよう。科学的には個人差はあるものの、人が「ダレ」や「飽き」を起こさずに集中力を維持できるのは一般的に30分が限界だからだ。原稿の例で言えば、毎日2時間の執筆より30分の執筆のほうが1冊の本を仕上げる総時間は短く済む。

ただ、ここで思うだろう。「時間は減っても、その分費やす日数は増えるじゃないか」と。毎日2時間書けば4か月で仕上げられる原稿でも、毎日30分となれば半年かかる計算になる。そうなると締め切りまでに書き上げることができなくなる、と。

結論から言えば全く問題ない。考えてみてほしい。毎日たった30分と思うかもしれない。でも月に20営業日働くとしたら、総時間は10時間に及ぶ。しかもこの10時間はただの10時間じゃない。高い集中力が維持された、質の高い10時間だ。

圧縮効果を思い出してほしい。今君が15時間かかっている仕事も、質が高いこの10時間なら終わらせられる可能性は高い。作業時間15時間を見すえた仕事の場合、締め切りが1か月先なら毎日30分だけ取り組んでも問題なく期限までに仕事は終えられるというわけだ。

「あえて1日30分しかやらない」

締め切りの心配をしなくてもいい理由は、もうひとつある。それは毎日30分だけ取り組むことで生まれる圧縮効果により、君が今抱えている仕事を終わらせるための総時間は圧倒的に減るからだ。今まで10時間かかっていた仕事も7時間で、3時間かかっていた仕事も2時間で終わり、どんどん仕事が片付いていく。

そのうち君は、私のように毎日鼻歌を歌いながら仕事をこなせるようになるだろう。時間的にも精神的にも余裕が生まれ、どんな事態にも対処できるようになる。毎日30分ずつ仕事に取り組んでいて、万が一締め切りに間に合いそうもない事態になったとしても。それこそ余裕をフル活用して一気に仕上げてしまえばいいのだ。

私は7年以上この「30分仕事術」を実践してきているが、締め切りに間に合わなくなり泣きそうになった経験は一度もない。それは私が無理な締め切りは基本的に引き受けないことと、圧縮効果により圧倒的なスピードで仕事をこなせていることが大きい。

「お前の会社がヌルいから、できることだろ」と考える人もいるかもしれない。その気持ちはよくわかる。ただ少なくとも私の同僚は毎日かなりストイックに働いている。彼・彼女らは少なくとも私のようには感じていないはずだ。それだけは言っておこう。

滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。 

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年12月27日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。