あけましておめでとうございます。
と新年を祝う間もなく、元旦に令和6年能登半島地震が起こった。そして、2日は羽田空港で日航機と海上保安庁機の事故が起こり、飛行機が炎上している衝撃的な画面を目にした。まさに、波乱の幕開けとなった2024年だ。羽田空港では、不幸にも海上保安庁の5名の命が失われたが、日航機側は乗客・乗員が無事脱出したとのことで、最悪の事態は免れた。
地震報道を見ていると、被害状況の把握今ひとつ遅いような気がしている。朝になって状況が明らかになるにつれて、その惨状に心が痛むばかりだ。珠洲市の海岸沿いのショッピングモールが津波被害を受けた。予想よりも低い1.5メートルの津波だったが、その威力は恐ろしい。
人員確保が最も難しいこの時期に起こってしまったので、救助活動が大変に難しいようだ。余震が収まってきて、早く復興に結びつくことを心より願っている。
いざという場合の人員確保は簡単ではないが、「働き方改革」が始まる医療分野では日常的に人員確保が難しくなるであろう。
神戸の若い医師の自殺が、過労死と結びつくと認定された。働きすぎがあった事実は消せない。しかし、病院運営法人や病院長が労働基準法違反で書類送検されたことで、医療現場・医学研究は大変なことになる。このブログでも触れたことがあるが、医療現場は医師・看護師などの犠牲的精神によって成り立っていると言っても過言ではない。大学病院や地域基幹病院では、臨床だけでなく、教育・研究といった活動も必要となる。
この研究部分には、学会活動なども含まれる。学会などの準備が、自主研修か、勤務の一環かの議論が活発になると思うが、議論を待たずに、これから起こると予測されることは、救急医療の崩壊だ。病院の管理者は、医師の他病院でのアルバイト時間を含め、医師の勤務時間の管理に対して責任を負うことになる。労働基準法違反に問われることを回避するためには、厳格な勤務時間管理を行う必要がある。そうなれば、犠牲の上に成り立っている救急医療の人員確保はかなり厳しくなる。
かつて、出産中に起こった不測の事態で産婦人科医が不当に逮捕された事件が起こった。これを契機に、産科医療が崩壊した。地方から産科医が去り、産科を目指す医師が減った。逮捕そのものが異常であったのは言うまでもないが、それがどのような影響かを全く考えなかった司法の大失策だった。
今回、働き方改革を推進するならば、医療供給体制をシミュレーションし、それに十分な対策を練るべきであったはずだが、それができているとは思えない。正月に餅を詰まらせて亡くなる高齢者が100人以上いるという。高齢者が増えている今、当然ながら救急医療の需要は増える。医療機関が労働基準法に抵触しないことを優先すれば、救急医療の需要と供給の比は大きく崩れる。
司令塔のいない日本の医療は危機的だ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年1月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。