コロナワクチン救済認定では政治的認定が多く含まれる

鈴村 泰

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コロナワクチンと有害事象(副反応疑い)との因果関係は、副反応検討部会および疾病・障害認定審査会との2つの審議会で審議されています。 前者は厳密な因果関係が審査されるのに対して、後者では厳密な因果関係まで必要としない審査と説明されています。ただし、後者の「厳密な因果関係まで必要としない審査」とは具体的にはどのようなものなのか明確ではありません。今回は、この問題について考えてみます。

ワクチン副反応救済制度(予防接種健康被害救済制度)の審査について厚労省は次のように説明しています。

本制度による給付を受けるためには、疾病・障害認定審査会の審査を経る必要がある。同分科会においては、申請資料に基づき、個々の事例ごとに
・ 症状の発生が医学的な合理性を有すること
・ 時間的密接性があること
・ 他の原因によるものと考える合理性がないこと
等について、医学的見地等から慎重な検討が行われている。

その上で、認定に当たっては「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とする」という方針で審査が行われている。

因果関係の判断は、被接種者の接種の事実関係のみならず、接種時の健康状態や接種前後の状況を総合的に考慮する。また、予防接種が疾病等を招来した関係にあることにつき、一般人をして疑問を差し挟まない程度の蓋然性があると認められる場合に認められる。

本条の制度は、因果関係を前提にして、公費を原資として迅速な救済を行う制度であり、事実関係等が把握できない場合等因果関係に疑義のあるものを広く救済するものではないことから、このような場合は、因果関係の認定を受けることはできない。

この解説では、「厳密な医学的な因果関係までは必要としない」と記載されている一方で、「因果関係に疑義のあるものを広く救済するものではない」という記載もあり、意味がよく分からない解説になっています。

当論考では、WHO因果関係評価マニュアルを用いて救済認定の基準について考えてみることにします。このマニュアルは因果関係を考察する上で非常に重要な資料です。マスメディアの記事やネット論考で、このマニュアルを用いた考察がほとんど見られないことは大変残念なことです。

このマニュアルによれば、個別の症例報告レベルの評価基準は次の6項目となっています。

A1:時間的関係の妥当性
A2:ワクチンが当該事象を引き起こしたという確実な証明
A3:因果関係の集団ベースのエビデンス(疫学的エビデンス)
A4:生物学的妥当性
A5:ワクチン以外で合理的に当該事象を説明できる原因の考慮
A6:再投与などにより同様の有害事象を引き起こした可能性を示すエビデンス

第1前段階では、審査に必要な医学的情報が十分かどうかがチェックされます。医学的情報が不十分な事例はこの段階で除外されます。つまり、そのような事例は原則的に認定されません。ただし、突然死などのように政治的配慮より認定される場合はあります。

第2段階では、A1、A4、A5の3項目が審査されていると私は考えます。A4は厚労省の解説の「症状の発生が医学的な合理性を有すること」に相当し、A5は「他の原因によるものと考える合理性がないこと」に相当します。

ただし、以前の論考で指摘しましたが、接種後死亡では突然死が多数認定されています。実質的に原因不明の死亡が救済認定されているわけですから、A4は必ずしも考慮されていないことになります。したがって、第2段階では主にA1とA5を審査しており、A4も必要に応じて審査していると考えられます。なお、A4を考慮せずに認定することは科学的とは言えません。政治的認定と言えます。

なお、政治的認定であるから認定に問題があると主張するつもりはありません。科学的に真実を探求する制度ではなく、救済を目的とした制度ですから、政治的認定であることには大きな問題はありません。

一方、厳密な因果関係の審査では、A1、A4、A5の3項目に加えて、A2、A3、A6も審査の対象となり、因果関係ありとするには、それらのうち最低1つの項目を満たす必要があると考えられます。

以上をまとめますと、ワクチン接種後に生じたすべての有害事象を救済認定するわけではなく、時間的関係の妥当性のない有害事象とか、他の明らかな原因のある有害事象とかの非合理的な申請は救済認定しない、そして医学的合理性が欠落している事例の申請は政治的必要性があれば認定するということです。

救済認定の審査の実態は、「非合理的な申請が排除され残った事例が認定される。そして、政治的認定を多数含む」というのが私の結論です。

【補足】
時間的妥当性の評価は有害事象ごとに異なり、実際には決して容易ではありません。アナフィラキシーは接種後4時間以内、熱性けいれんは接種後7日以内、その他の有害事象は接種28日以内が目安となります。ただし、有害事象の種類によっては接種28日以降であっても妥当と判断することが有り得ます。

A5の判断も実際には容易ではありません。溺死の場合は、入浴中に副反応として致死性不整脈が生じたために溺死したという可能性があります。自殺の場合は、脳に副反応として何らかの炎症が生じ、それが引き金となって自殺したという可能性は否定できません。

厚労省が公開している接種後死亡一覧には、溺死や自殺の事例が複数記載されています。今後、それらの事例が認定されるかどうか注視したいと考えています。