台湾の総統選と立法院選挙が行われ、頼清徳総統候補・蕭美琴副総統候補が総統選挙で勝利しました。改めて、私の極めて親しい友人でもある頼清徳総統候補、蕭美琴副総統候補に心からの祝意を表したいと思います。
総統選の選挙結果を見ると、事前の予想よりも善戦したとされる頼清徳陣営は、国民党が強いとされる台北市や新北市、桃園市など北部の直轄市でもトップの得票となり、従来の地盤である南部では圧倒的な支持を得るなど、票差以上に全国で得票を得ていることから、民進党政権への一定の批判や飽きはあるものの、頼清徳新総統の下での政権運営に一定の期待が広く台湾国民から示されたことは注目されるところです。
もっとも、今回三つどもえの選挙戦になったとはいえ、得票率が40%強であったことは、頼清徳新総統が早期に、民進党支持者だけでなく真に台湾国民全体のリーダーとして課題解決に当たり政権運営をしていく必要が高まったことを意味します。このことは同時に、有事を想定すれば国民の統合・一体感が極めて重要なことを考えたとき、かえって前向きな結果となったと捉えることもできます。
そもそも、台湾有事において極めて重要なエリアである、桃園市、台北市、新北市の現在の市長は国民党の市長であり、有事において、また有事以前においても国と直轄市の連携を深めておくことは極めて重要で、その意味において、これらのエリアでも頼清徳陣営の得票が国民党を上回っているという今回の結果は、こうした連携をスムーズに進める上で重要な政治的資産となるともいえます。
また立法委員選挙に関しても、事前の予想と比べ民進党の善戦が目立ったところです。比例代表においては得票率で第一党となり、小選挙区が多くを占める全体の議席数においても113議席中野党第一党の国民党が52議席、与党民進党は一議席差の51議席(民衆党が8議席、その他が2議席)との結果となりました。
国民党と民進党の議席差が1議席であったことで、連立工作がスムーズに進む可能性もあり、台湾有事を防ぐための外交戦略や万一の有事の場合に不可欠な、安定的な政権基盤の構築に向けて、事前に懸念されていたよりも前向きな結果となったと言えます。
特に中国による様々な工作が指摘された中で、一方で前回総統選の時のような香港情勢のようなわかりやすい出来事があったわけでなく、かつ野党陣営が中国との関係を争点とした中でのこの結果は、台湾における民主主義の成熟と、中国による台湾の統合に対する台湾人の根強い抵抗と現状維持への強い支持が浮き彫りとなったともいえます。
そしてこの状況を受け、我が国の政治の最大のテーマである、抑止力を実質的に機能させることで、習近平総書記による台湾侵略への野心を封じ込め、台湾有事・戦争を起こさせないとの点について言えば、「強い相手とのみ交渉し、弱い相手には徹底的に強く出る」との中国の最近の傾向を踏まえれば、対中姿勢が弱腰となる可能性が高かった国民党や民衆党の総統となっていれば一気に攻勢に出られる可能性がありました。
今回の総統選挙の結果として、バランス感覚や実務的判断力を有しつつ蔡英文総統以上に安全保障に関する知見が明確な頼清徳氏が次期総統に台湾国民の支持を得て選出されたことで、日米や同志国との連携を引き続き深化させていく環境は台湾においては整ったと言えます。あとは安定的な政権基盤の構築と、台湾軍自身の実質的な安全保障能力の強化、経済やエネルギーも含めた有事対応の準備を着実に進めていくことが新総統には期待されますし、まさにその手腕を期待されての就任ということにもなろうと思います。
今後は、国際政治的には、2027年の習近平総書記が4期目を目指す中国共産党全国代表大会をにらみ、今年の秋のアメリカ大統領選挙、そして日本において解散・総選挙も含めた安定的な政治基盤構築ができるか否か、等が注目材料となります。また、最近インド・太平洋に回帰しつつあるイギリスでも総選挙が行われる見込みであり、オーストラリアやベトナム、フィリピン、韓国などの政治状況にも留意が必要です。
私自身、先週8日から10日にかけて、ニューヨークとワシントンに出張し、アメリカの台湾への見方、大統領選やそれに絡むアメリカの景気経済情勢、米大統領有力陣営のインド太平洋戦略に関し、連邦議員や政府・軍関係者、有識者、機関投資家と20ほどの面会を行ってきました。様々な意見交換を行いましたが、様々な意味で2024年が極めて重要な一年であり、日米の対応が極めて注視されていることを痛感しました。
与党議員として、日本の国益を守るべく日台関係のさらなる強化、中国に台湾有事や東アジアでの戦争を起こさせない状況の構築に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。
編集部より:この記事は、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区、自由民主党)のブログ2024年1月13日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。