トヨタとダイハツの関係:国交省に型式指定を取り消された企業の共通点

国土交通省がダイハツの3車種のクルマについて型式指定を取り消しました。型式指定取り消しはその車を一時的にせよ、製造モデルが登録上、無くなるのです。型式を取り消された車は再度申請できますが、そのプロセスは長く、厳しく、1年以上かかることもあります。また28車種の不正があった中で、国交省が安全性を確認する作業もようやく始まり、ここをクリアすれば出荷が可能になります。ただ、現状、ダイハツは2月の生産予定の部品発注がまだ進んでいないとされ、出荷停止はそう簡単に解除されない可能性が高いとみられます。

これによるダイハツ社の経営的ダメージは大きく、大幅な赤字転落はほぼ確実となっています。

これを受けて親会社のトヨタは1カ月後をめどに新体制と再発防止策を発表するとしました。過剰な業務負担があったのではないかという見方からダイハツを軽専用にするのではないか、と見られています。もちろん会社の判断ですが、軽専用となれば同社に勤める人にとってダイハツの未来は楽しくないかもしれません。日本独自の仕様である軽自動車、人口が減少する国、ライバルもひしめく中、個人的にはどう伸びしろを見出し、夢を与え、成長企業として存続しえるのか、今以上にトヨタの都合主義にならないか心配です。

型式認証を取り消されたのは日野自動車、豊田自動織機、そして今回のダイハツです。共通点はトヨタが深く絡んでいる点です。ここには注目すべきでしょう。「トヨタ方式」が一世を風靡しましたが、今、その管理体制が逆風になっているのではないか、と察しています。

ところで昨日話題に振った富士通の英国郵便局冤罪事件。証言台に立つパターソン氏の動画を見ていたのですが、議長からの極めて厳しく、鋭く、かつ誘導されるような尋問にパターソン氏は相当苦戦し、言わされ感もありましたが、同社がプログラムバグを早い時期から認識していた事実を認めました。当然ながら今後、富士通に矛先が向くわけで会社としての明白な立場を公式に伝えなくてはいけません。

一部メディアからは「時田隆仁社長は何故出ない?」という声が上がり始めています。時田社長は今日まで本件に一切無言を貫いています。時田社長の英語能力や胆力は存じ上げませんが、あの英国の委員会の証言台は極めてシビア。今回はどうだったかともかく、場合により書面の持ち込みも禁止のケースもあり、あのような場に立たされるぐらいなら社長業はやりたくないと思う人も出てくるでしょう。

富士通はマイナンバーカード問題が起きた時も対応が遅れ、時田社長の謝罪も子会社の問題と強調した感がぬぐえませんでした。この会社の体質なのだと思います。いみじくもブルームバーグの記事にトヨタのブレーキ事故の際のトヨタの対応と似ていると指摘がありました。私と同じ直感を持ったのでしょう。あの時もトヨタの責任者、つまり豊田章男氏がすぐに出なかったことがことを面倒にしたのです。

富士通の問題と今回のダイハツの問題は似ているところがあるのです。つまり富士通は英国子会社で会計ソフトをもともとを作ったICL社で現富士通サービシーズに責任を押し付け、親会社の富士通の立場としては出てきていません。ダイハツのケースではトヨタが完全掌握している会社ですが、ダイハツの社長のコメントと共にトヨタの佐藤恒治社長が記者会見しています。ただ佐藤社長は「豊田章男会長がグループガバナンスの見直しに取り組んでいると説明。今後、豊田会長が一連のグループの不正問題の反省を踏まえたガバナンスの考え方を改めて説明する」(産経)と述べ、実質的に責任者の弁というよりスポークスマン的会見に留まり、肝心の豊田章男氏が出てきていないという構図になっているのです。

個人的に感じるのは国際ビジネス社会において買収や合併が頻繁に起き、会社の責任は何処にあるのか、その所在が分かりにくくなってきた中でUltimateな支配会社の絶対的権力と統治体制がある程度明白であるならば支配会社のトップが早めに火消しを行わなければ今や世間は収まらないとも言えないでしょうか?

ダイハツ問題については正直、トヨタにとって経営スタイルの根幹を揺るがす問題になりかねません。グループ内で短期間に3つも型式取り消しが続いたのです。他の会社では起きていないのです。以前も指摘したと思いますが、私にはトヨタがあまりにも「崇高な立場」にあるのではないかと思うのです。子会社からしたら足を向けて寝られず、トヨタの人がくれば大名行列ではないですが、上げ膳据え膳の対応をしているような気がします。

もしもそうだとすれば企業間の相乗効果は生まれません。やらされ感は今の時代、全く機能しないのです。80年代までの質実剛健といった発想ならそれもアリだったのでしょうが、いま、そんな言葉を発すれば「結構です!」と言われるでしょう。

時代の変遷の中で経営の進め方をどう見直すか、そして経営トップが子会社のことまで含め何処まで認識し、責任を負えるのか、企業統治の難しさを改めて感じた今回の一連の騒動でありました。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月17日の記事より転載させていただきました。